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【日記】通行人AまたはB

私は西原理恵子さんの漫画が好きで

彼女のモノローグを真似して、自分の視野をコマ代わりに、そこへ当てはめて遊ぶ

学校帰りの電車内

今日は花火大会だったから すっごく混んでて

だから座れたのはラッキーだったけど

ずっと立ちっぱなしの人たちの方が楽しそうにしてるのがよく見えてしまう

コマ(視野、想像)には、

浴衣を着た女の子たちや恋人同士、

洋服のイケてるカップル、

はしゃぐ小さな子供を連れた家族、

おしゃれな老婦人たち、

(コマの端の端にその光景を眺める横顔が影をかけられて添えられる)

(目の前の人の足元にコマ(視線)を移して)

パステルカラーの布が足の甲をふんわり包んだようなサンダルにターコイズ色の爪が覗いてた

イケてるカップルの女が男の腰に回してた手に持ってたカメラが

デジタルじゃなくて使い捨てだったことから、

私は何を感じ取れば褒められるんだろうか

座っている人は、

本を読んで、

イヤホンつけて、

寝て、

自分の世界に入ってたのに、

(コマは席一列にその人たちが並んで座っている画)

私は目の前の人の香水がきつくて頭が痛かった

こんな電車で帰らなくてはいけない日に いつも思い出す

まだ大学一年生だった時 米軍基地のある町を通る路線の電車の中で

黒人の女の人が床に胡座をかいた

私の隣に座っていた人たちはひそひそ話していたけど

私は有り難かった

嫌いな花火大会の日の電車を いつか洋画で観た地下鉄に変える魔法がかかった気がしたから

私はそのコマ(回想)を思い浮かべたまま、屋台に寄って帆立を食べた

(帆立を石階段に座って食べる)

むちゃくちゃ旨くて夢中で食べた

私が帆立にがっついている間にも

往来には一緒の電車に乗って来たような他人たちで賑わっているから

帆立が旨いっていう魔法が解けないように がつがつ食べた

帰りに駐輪場のおじさんに、

「お疲れ様です」

と、挨拶したら

「しばらくだの」

と、言われた

お久しぶりです、より、しばらくです、の方が私も好きだ

お久しぶりです、は口の開閉が忙しくて

しばらくです、は舌先を滑らせるようにするっと言いやすいから

方言が話せない私でも 好んで使う訛りがある

「今日は混んでいてたいへんですね。お疲れ様です」

(と、おじさんに言って自転車に乗るコマ)

帰り道 うっかり浴衣を着た人たちに出会すとせっかくの魔法が解けるから

「あの柄いいじゃん」

とか呟いて防御しながら自転車をこいだ


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