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2022年1月の記事一覧

【掌編小説】老作家の顛末

【掌編小説】老作家の顛末

「うーむ」

 老作家は原稿用紙を前にして、かれこれ数時間は唸っていた。隣には若い担当編集者が老作家の原稿が出来上がるのをひたすら座って待っていたのだが、既に根負けしてしまったのか正座をしたまま居眠りを始めている。がくん、と大きく首が下がると編集者はハッと目を覚まし、老作家に聞いてくる。

「出来ましたか」

「いいや、まだだ」

「そうですか」

 老作家の返事を聞いて編集者はがっくりと肩を落と

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