Jリーグを愛する皆さまに、今こそ知っていただきたい”Jクラブの経営の話”
コロナウイルスの影響で、Jリーグの試合は2月末から中断・延期となっており、もうすぐ2か月が経とうとしています。そしてJリーグクラブで勤務する人間として、今だからこそ多くの方にJリーグクラブの経営について、少しでも知っていただきたいと思い、このnoteを書いてみました。
私が実名でTwitterやnoteをはじめた理由の一つが、「クラブの中の人間が発信することによって、日ごろ皆さまが目にすることのない各クラブの経営状況について知っていただきたかったため」です。
Jリーグクラブの順位に関しては新聞、ニュース、ネットなどで目にする機会があると思いますが、順位と比べるとクラブの経営状況に触れる機会は少ないかもしれません。
こちらのファイル内に、2018シーズンのJ1~J3全クラブの売上、支出(どちらも細かいところまで)が纏められています。こちらはJリーグのサイトでダウンロードできる、一般的にオープンになっている資料です。この資料を参考にしながら、簡単に5つにまとめてみました!(※以下個人の見解です)
1.Jリーグクラブの経営の評価軸は、「増収増益」でなく「順位」
一般的な企業の評価軸は、「売上、利益、配当金額(上場企業の場合)」のあたりになってくると思います。一方で、Jリーグクラブの場合。経営の評価軸は、「順位」になってきます。
例えば応援されるクラブ(J2の場合)の株主総会に出席していた場合、
①「前年より増収増益で1億円の黒字。しかし順位が5つ下がりました」
②「前年より増収減益で1億円の赤字。しかし2位に入りJ1に昇格しました」
と発表されると、どちらを評価されるでしょうか?おそらく大多数の方が評価されるのは、②になってくるのではないかと思います。(債務超過になって無い場合を想定しています)
とすると、経営として順位を上げるにはどうすればいいのか?
2.支出の約50%がチーム人件費(選手、監督コーチなどのお給料)
答えは簡単で誤解を恐れず言いますと「有力な選手を多数獲得する」です。
長くなるので割愛しますが、「報酬を多く支払うことのできるクラブに選手は移籍する傾向が高い」ので、支出の「チーム人件費を1円でも多くする」ということが順位を上げることに繋がります。どのクラブも支出の約50%がチーム人件費になっています。
3.売上は、スポンサー、チケット、物販の3つが主な柱
それではその原資はどこからくるか?
サッカークラブの収入は主に①スポンサー、②チケット、③物販(グッズ)の3つとなります。(ここにはDAZN放映に伴うJリーグからの分配金、選手の移籍金等も入ってきますが、これはコントロールしにくい部類に入るので割愛します。あとはスクールやアカデミーの収入もありますね。)
なので、「①~③の売上を増やし、その売上の1円でも多くチーム人件費に回して、1つでも順位を上げる」というのがJリーグクラブの経営になってきます。(なので利益を残すことは順位を上げることに繋がりません)
4.Jクラブは貯金をしにくい経営体質
1円でも多くチーム人件費に回すと、どうなるか。利益が残りません。内部留保(貯金)が出来ません。
こちらは私が所属するファジアーノ岡山の経営状況です。2018年こそ1,300万円の最終利益が出ていますが、その前は数百万円程の黒字です。
Jリーグクラブとして、「売上を増やす→それをチーム人件費に回す→なので利益が残らない状況が多くなる→するとざっくりと言うと内部留保(貯金)できない→他業種に比べ有事に備えにくい経営状況となる」と、なります。
5.なので、試合が無いと現金が入ってこずに経営が揺らぐ!
とすると、この約3か月間試合がない場合はどうなるか!収入である、②チケット、③物販(グッズ)収入が入ってこない!そして内部留保が少ないため、キャッシュフローが回らない!という事態に陥ります。Jリーグクラブ、売上も大きくないですし、現金商売です。試合がないと苦しい・・。
不安を煽るわけではないですが、世界2位のブンデスリーガでも、1部2部の13クラブが破産の危機に陥っているようです。
6.最後に・・
私は、「スポーツは日常に必ずしも必要ではない。しかし、日常に彩りを加えてくれる存在」だと思っています。そしてプロスポーツ運営は、インフラ(衣食住、医療、物流等)の上に成り立ち、成熟した社会でないと存在できないと考えています。
いずれ訪れる、withコロナ、アフターコロナの時代に、「社会にスポーツは必要か?Jリーグクラブは必要か?」と問われているような気がしてなりません。
以上、乱筆乱文で大変失礼しました。そして最後までお読みいただき、ありがとうございます!Jリーグクラブの中にいる人間として、何とかこの苦境を乗り切っていきたいと思います!
※以上、個人としての見解でした。
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