【短編小説】お題「親子愛」で小説書いてみた。
お久しぶりです。kirinboshi(きりんぼし)です。
創作能力アップの一環として、お題をもらって2000字~3000字の小説を書いてみました。即興で書いてみた小説「タゴスタニアはよいドラゴン」です。
本編後には覚えている限り、頂いた講評を備忘録的に載せています。
良かったら、読んでみてください。
「タゴスタニアはよいドラゴン」
『いい?タゴスタニア。貴方はこの場所で私の帰りを待つのよ』
『うん、ママ、いってらっしゃい』
朝日が優しくタゴスタニアの瞳を開く。
青い宝石のような目から、すうっと頬に伝うものがある。
『ああ、またママの夢を見てしまった』
胸のなかでそう思いながらタゴスタニアは嘆息する。
流れ落ちた涙は落ちる瞬間に青い宝石となってカツンと音を立て、寝床の外へ転がっていった。
竜のナミダ。
そう呼んで冒険者が欲しがる。ママから教わった。
青い宝石は寝床の周りにあふれんばかりにたまっていた。
『ママ、いつ帰ってくるの?』
そのむなしい問いは、解決されないことだ。
タゴスタニアは青い翼を広げる。大きな翼にこの穴ぐらは少々窮屈になって来た。
ママは帰ってこない。
その事実がタゴスタニアの涙を止める。
1週間前、おしゃべりな鳥たちが残酷にさえずっていた。
「勇者が悪しきドラゴンを倒したぞ!
国は平和!国は安泰!」
悪しきドラゴン……。
タゴスタニアの青い瞳に炎が宿る。
『いい?タゴスタニア、貴方の母である私は誇り高きドラゴン。
貴方もそうよ。忘れてはダメ』
ママ、だったらなぜ殺されたの?
私は許せない。ママを殺した勇者。
小さくなった穴ぐらから抜けないのは、溜まりにたまった竜のナミダをきっとあの勇者が嗅ぎつけてやってくるだろうから。
悪しきドラゴンになってもいい。それで復讐が出来るなら。
タゴスタニアは瞳を閉じた。
『ママ、また夢に出てきて。お話の続きを聞かせて』
「そうやって眠ってばかりいるのかい?」
タゴスタニアは寝床から飛び起きた。目の前に老女がいた。
ほっとタゴスタニアは警戒を解く。
最北の魔女、スカラバ。
魔女を人間と言うなら唯一、ドラゴンと交流のある人物だ。
「こんなに、竜のナミダをため込みおって……」
スカラバは呆れたようにタゴスタニアの頬を撫でる。
勇者や並の人間と違い、スカラバにとっては竜のナミダに価値は無い。偏屈なこの魔女はこの辺境な土地で薬草を採りにくる内にタゴスタニアの母竜である、マラインと遭遇し、仲良くなった。
『スカラバは私を怖がらなかったの』
母竜、マラインはそう楽しそうにタゴスタニアに語った。マラインの死を魔女スカラバは知っていただろう。しかし、あえてタゴスタニアには言わなかったのだ。
「おしゃべりな鳥たちの話を信じるかい……?」
スカラバの問いかけにタゴスタニアは戸惑いを隠せない。
「だって、ママは帰ってこないよ……?」
「お前、ママの帰りを待っているだけのヨチヨチドラゴンだったのかい」
そう発破をかけるスカラバにタゴスタニアはムキになった。
「悪しきドラゴンは倒された!ママは悪しきドラゴンだったんだ!」
「落ち着きな、お前、外へ飛び立ったこともなかったろう。
ずっとマラインに守ってもらってばっかりで」
「私だって闘える!この場所で勇者を待って打ち倒す!」
タゴスタニアは羽を振り上げて飛び上がった。
魔女スカラバは大きく息を吐いて、ブツブツと何かを唱えた。
すると赤い光がほとばしり、タゴスタニアの頬をパンッとはじいた。
したたかに打たれたタゴスタニアは、尻餅をついて着地した。
「こんな辺鄙なところにいても勇者なんて来やせんよ!」
タゴスタニアはハッと青い瞳を開く。
わかっていた。
ここでママ、マラインを待っていても何も変わらない。マラインは最も安全な場所でタゴスタニアを育てたのだ。信頼のおける魔女スカラバ。人里離れた安全な穴ぐらでママは私を育てた。
「……わかった、スカラバ。私、この巣から外へ出るよ」
タゴスタニアの言葉にスカラバは何も言わず、静かに頷いた。
そして、床に落ちた竜のナミダのカケラを一つとって、タゴスタニアの鱗の手に握らせた。
「これをママに。……わかったね?」
タゴスタニアは頷くと、あとは振り返らず、思いっきり外へと飛び立った。
遥か彼方、ママと飛んだ空へ。
青い竜より薄いブルーの大きな空へ。
吹き抜ける風のごとき飛翔は、おしゃべりな鳥たちを驚かし、気まぐれな雲を霧散させ、
そして、人間の住む王国へたどり着いた。
昔、勇者が住むと、母竜マラインに教えられた王国。その地にタゴスタニアは降り立った。城の門番は慌てふためき、街中の人は驚きに悲鳴を上げる。
タゴスタニアは門を突き破った。勇者は王となって玉座に座っている。
ママの敵を許してなるものか。
竜のナミダをちらつかせ、闘いを挑もう。その先がどうなろうとも。
再び羽を広げたタゴスタニアは城の最上部、王座の間のガラス戸から青い炎を吐いて侵入した。
玉座には、見計らっていたかのように王であり、勇者であったエレイン王が座っていた。
今は、剣をかまえ、突然、闖入してきたタゴスタニアを警戒している。
「勇者はお前か?私の母を殺したのは……」
タゴスタニアの問いかけにエレイン王は頷いた。逃げるつもりはないらしい。
「私はお前が殺したマラインの娘、タゴスタニアだ!悪しきドラゴンのナミダが欲しいだろう!!」
タゴスタニアは自分の竜のナミダを取り出した。そのドラゴンとしての手は震えている。涙もいくつもタゴスタニアの頬を伝った。ナミダを持ってこなくてもいいほどにあふれる竜のナミダ。
「お前は私の仇だ!殺して……殺してやる!」
「タゴスタニア……。待ってくれ。マライン……悪しきドラゴン……」
エレイン王はそう呟くと、一言短い呪文を唱えた。
すると空中に青いモヤが現れ、収束するに従って一匹のドラゴンが現れた。
「……ママ……」
モヤから現れたのは、まさしくタゴスタニアの母、マラインだった。
「タゴスタニア……貴方、ちゃんと待ってなさいって言ったでしょう?」
「……でも、遅いから。ママ、遅いんだもの」
タゴスタニアはボロボロと涙をこぼしてマラインの胸に飛び込んだ。
「私はエレイン王の使い竜として、悪しきドラゴンを倒すために奔走していたのよ?」
「そんな……でも、私、待てなかったよ」
ボロボロと落ちる竜のナミダをマラインは止めるようにタゴスタニアの頬をなでた。
「タゴスタニア、竜のナミダは貴重なんだから、そんな泣き虫ではだめよ。
誇り高くありなさい。良いドラゴンは……」
「「誇り高い」」
母娘の竜の声が重なって、王室のホールにこだました。
エレイン王は破られたガラス扉を指して、「竜のナミダで弁償出来るね」と笑った。
タゴスタニアは母、マラインと共にその後、王室の良き戦力であり、良きドラゴンとして長きに渡り国を助けた。
これが、この国の幸せな親子竜の話である。
おしまい
以下、講評としてまず、
「親子愛」=「何であるか」のテーマが抜けているとの指摘がありました。
さらに「遥か彼方、ママと飛んだ空へ。青い竜より薄いブルーの大きな空へ。」のところで終わらせて、前半部分にママ竜の設定を盛り、「親子愛」の描写をした方が良かったのではないかというご指摘も。
後半は自分でも少しやっつけ感は否めず……。
小説向いてないのかなぁと思いながらあがく日々です。
また記録的に第二弾も載せます。
次は、現代劇になると思います。
良かったら読んでやってください。
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