町田あっさん

翻訳家、ときどき映画ライターです。サッカー観戦も大好き。 noteには時事や私事、翻訳…

町田あっさん

翻訳家、ときどき映画ライターです。サッカー観戦も大好き。 noteには時事や私事、翻訳のこと、映画やサッカーのことを綴ってまいります。

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ぼんくら翻訳家はサイバーなnoteに独り言を綴る

翻訳業界の隅っこで細々と食いつなぐ翻訳家です。映像、書籍、雑誌と、ジャンルを選ばず仕事を請け負っております。 プロの映画ライターとしての活動実績もあり。 <翻訳業での主な実績> 「ナイトメア・アリー」(吹替翻訳) 「エジソンズ・ゲーム」(吹替翻訳) 「名探偵モンク」(字幕翻訳) 「西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム」(東洋経済新報社) 「背番号10のファンタジスタ」(ベースボール・マガジン社) 「ナショナル ジオグラフィック日本版」 ホームページ:http://

    • 『エイリアン:ロムルス』に新たなリプリーの到来を見る

      『エイリアン』シリーズといえばFOXの製作・配給のイメージが強かったけど、つい先日、デッドプールがさんざん言っていたように、ディズニーが金に物を言わせてFOXを買収。結果、ウルバリンが墓から掘り出されたのと同様、エイリアンもまた、ディズニーお得意の金権主義に乗って、宇宙の片隅から召還されることに。  シリーズで言えば(AVPは除いて)通算3つめになるだけに、普通なら名の知れた俳優を起用して独自色を出したいなどと考えるはず。ところが登場したのは、意外や、無名に近い若手6人組。こ

      • 夕木春央の「方舟」を転覆させてみる

        <まずは夏休みの読書感想文を>  2022年のハードカバー刊行時に話題になっていた「方舟」を、文庫化されたタイミングで読んでみた。ふむふむ、宣伝によるミスリードがあって一層効果が増すというタイプのミステリー作品ですね、これは。  論より証拠、版元からはこんなあらすじが提供されている。  さて、この一文を読んで素直に納得する読者がどれほどいるだろうか。  第1に、そもそも「悪いことをした奴なのだから、罪滅ぼしにみんなの犠牲になるべきだ」という論がそれほど自明なのかどうか疑わし

        ¥456
        • 火葬と粉骨をセットで販売したらどうだろう

           パリ五輪の関係だろうか、8月のWOWOWではフランス映画が数多くオンエアされた。なので別にトリュフォーやヌーベルバーグに目覚めたわけでもないのだけれど、私が生まれた年に公開された古典『突然炎のごとく』を鑑賞してみた次第。  さほど期待もしていなかったけれど、奔放に男をとっかえひっかえするジャンヌ・モローは、ファム・ファタールというより、ただのイカレたわがまま女で、どうにも物語に入りこめなかったな。  わざわざカネ払って観る映画じゃありません。  ただ、最終盤のある一場面で

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          トランプ、銃撃事件を振り返る

          『大統領選スキャンダル/野望の銃弾』は、1980年代にTV放送された米国ドラマのミニシリーズ。ある若手政治家が、狙撃を受けながらも一命を取り止めて脚光を浴びるものの、FBIの地道な捜査によって、故意に急所を外した「狂言狙撃」だったことが判明し・・・という陰謀物だ。  なぜこの話を持ち出したかというと――まあ、説明の必要もないだろうが――1週間前に遊説中のドラルド・トランプが狙撃され、単に大事には至らなかったばかりではなく、その場で拳を突き上げるポーズを見せてタフネスぶりをア

          トランプ、銃撃事件を振り返る

          『クワイエット・プレイス』の生態学

           今夏に第3作が公開された映画『クワイエット・プレイス』シリーズ。第1作から一貫して謎なのは、鋭敏な聴覚を持つあのエイリアンどもが、何を目的に人間を殺すのかだ。 ・奴らが死体を食っている様子は見られない。 ・『宇宙戦争』のように連れ去るわけでもない。 ・本家『エイリアン』シリーズのように幼体の宿主にもしていない。  そうであれば街じゅうが“利用価値”のない死体で埋まってしまいそうなものだが、実際にはいつの間にか死体は消えている。  となると最も蓋然性の高い説明は、「作り手が

          『クワイエット・プレイス』の生態学

          『クワイエット・プレイス:DAY1』に見る新旧監督の違い

           ユーロ2024が閉幕したので、上映終了前になんとか観にいく時間が取れました。 (以下、ネタバレが含まれます) 『クワイエット・プレイス』シリーズの第3作にして前日譚。時間軸としては第2作の冒頭部分とおそらく同じで、あの日常から非日常への急転を描いた数分間は水際だった鮮やかさだったから、製作サイドがあれを長尺1本に仕立て直したくなるのも納得できる。  ただし1~2作目のクリエイターのジョン・クラシンスキーが、支え合う家族の物語としてこれを構築したのに対し、今作でメガホンを引

          『クワイエット・プレイス:DAY1』に見る新旧監督の違い

          ユーロ2024:総評とベストイレブン

          <出会い頭の事故が多発>  グループリーグの2巡目が終わったDAY9に、私が今大会の傾向として挙げたのは次の3点。 (1)スコアレスドローがわずか1試合しかないこと。 (2)番狂わせがほとんどないこと。 (3)オウンゴールが多いこと。  決勝トーナメントに入ってからも、この3点セットはほぼ踏襲された。 (1)’ 一部のチームが引き分けも視野に入れるGL第3戦こそ12試合で3つのスコアレスドローが出たが、えてしてガチガチの守り合いになりがちな決勝Tでは15試合で2つしか出ず。

          ユーロ2024:総評とベストイレブン

          ユーロ2024(サッカー欧州選手権)戦評準決勝 スペインvsフランス

          スペイン 2-1 フランス (2024.7.9.ミュンヘン)  ともに前戦から中3日。スペインはル・ノルマンとカルバハルという4バックの右半分(言い換えるならエムバペ側の半分)を出場停止で欠き、ナチョとヘスス・ナバスでその穴を埋める。ペドリは準々決勝での故障が癒えず、そのドイツ戦で大活躍したダニ・オルモが先発を引き継いだ。  フランスはラビオが出場停止から復帰。一方、グリーズマンをベンチスタートにして、デンベレを右に張らせた3トップを組む。この日も先発から外れたテュラムは、デ

          ユーロ2024(サッカー欧州選手権)戦評準決勝 スペインvsフランス

          『ホールドオーバーズ:置いてけぼりのホリディ』は観客を置いてけぼりにはしない

           まずは人間の(というか、少なくとも私の)記憶力がいかにいい加減かというお話。  冒頭から悪ガキどもがポール・ジアマッティの演じる教師を指して、「斜視だ、斜視だ」と陰口を叩く。実際、そのハナム先生は斜視なので、「おやおや、脚本のデビッド・ヘミングソンは斜視のジアマッティに当て書きしたのかしら?」などと考えながら鑑賞していたのだが、あとから他の方の評を読んで、椅子から転げ落ちそうになった。あの斜視って、コンタクトレンズによるメイクだったんか!? これまで私はジアマッティの出演し

          『ホールドオーバーズ:置いてけぼりのホリディ』は観客を置いてけぼりにはしない

          ユーロ2024(サッカー欧州選手権)戦評準々決勝 ポルトガルvsフランス

          ポルトガル 0-0(PK3-5) フランス (2024.7.5.ハンブルク)  ともに中3日での消耗戦だが、ポルトガルはラウンド16と同じスタメン。  フランスはラビオを出場停止で欠いたが、開幕時の2ボランチには戻さず、カマビンガで穴埋めして3センターを維持した。トップにはテュラムではなく、コロムアニが初先発。ただし前戦でグリーズマンを右ウイングに使って拙攻になったためだろう、彼をトップ下に回し、エムバペとコロムアニを操らせる態勢を取った。  前半はテオ・エルナンデスのミド

          ユーロ2024(サッカー欧州選手権)戦評準々決勝 ポルトガルvsフランス

          ユーロ2024(サッカー欧州選手権)戦評準々決勝 スペインvsドイツ

          スペイン 2-1(延長) ドイツ (2024.7.5.シュトゥットガルト)  今大会で最も好調な2チームの直接対決。全勝で勝ち上がってきたスペインは、決勝T1回戦とまったく同じ先発イレブンを起用。  対する地元ドイツはラウンド16に続いてザネとラウムに2試合目の先発を任せる一方、出場停止の明けたターが最終ラインに復帰。さらにアンドリッヒではなくエムレ・ジャンが、今大会初めてスタートからピッチに立つ。  立ち上がりからドイツは半ばイエロー覚悟(?)の肉弾戦を敢行。おかげでキッ

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          欧州CL決勝:白い巨人が通算15回目の戴冠

          レアル・マドリード 2-0 ドルトムント (2024.6.1.ウェンブリー)  ドルトムントは健闘した。その点は間違いない。スコアレスでゲームが進んだ74分までは、むしろ優勢だったと言ってもいい。だが、サッカーは90分間で勝負をつけるスポーツだった。  望外に決勝の舞台に立ったドルトムントは、スタメン中の6人がドイツ国籍。基本システムは4-1-4-1だが、ビルドアップの局面では、しばしばアンカーのエムレ・ジャンが両センターバックの間にまで位置を下げる。  対するレアルは、ス

          欧州CL決勝:白い巨人が通算15回目の戴冠

          欧州EL決勝:女神が魔法を解いた夜

          アタランタ 3-0 レバークーゼン (2024.5.22.ダブリン)  アジアで初めてとなるワールドカップ日韓大会の開幕をひと月後に控えた2002年5月、レアル・マドリードがジネディーヌ・ジダンのスーパーボレーによって欧州CL優勝を遂げたことは、多くのサッカーファンの記憶に鮮明に残っていることだろう。  一方、その対戦相手となったミヒャエル・バラック擁するレバークーゼンが、シーズンの最終盤まで国内カップ、国内リーグ、CLの三冠を狙える位置につけていながら、その3つのトロフィー

          欧州EL決勝:女神が魔法を解いた夜

          『マリウポリの20日間』から垣間見るウクライナの800日間

           アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した一作。「本当はこのような映画は作りたくなかった。ロシアの侵略をなかったことにしたい。私に歴史は変えられないが、映画は記憶となり、記憶は歴史を作る」というミスティスラフ・チェルノフ監督の崇高なオスカー受賞スピーチは忘れがたい。  これはAP通信のウクライナ人記者であるチェルノフが、2022年2月のロシアの侵攻開始から20日間、国境の町マリウポリに踏みとどまり、危険を承知で現地の惨状を国際社会に発信しようと奮闘した記録である。  戦

          『マリウポリの20日間』から垣間見るウクライナの800日間

          『オッペンハイマー』の編集から読み解くノーランの構想

           近年のクリストファー・ノーラン作品って、『インセプション』『インターステラー』『テネット』のようなオリジナルSFは独りよがりで退屈するけど、『ダンケルク』や『オッペンハイマー』のような史実を脚色した映画は長くても見飽きない。今後とも後者の路線で行ってくれるといいんだがな。  さて、上映時間180分の本作は、明確な章立てこそなかったものの、事実上は(1)前半生(2)マンハッタン計画(3)原爆投下後の3部構成になっていた感じ。「原爆の開発者の伝記映画」だとばかり思って観始めた

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