火葬と粉骨をセットで販売したらどうだろう
パリ五輪の関係だろうか、8月のWOWOWではフランス映画が数多くオンエアされた。なので別にトリュフォーやヌーベルバーグに目覚めたわけでもないのだけれど、私が生まれた年に公開された古典『突然炎のごとく』を鑑賞してみた次第。
さほど期待もしていなかったけれど、奔放に男をとっかえひっかえするジャンヌ・モローは、ファム・ファタールというより、ただのイカレたわがまま女で、どうにも物語に入りこめなかったな。
わざわざカネ払って観る映画じゃありません。
ただ、最終盤のある一場面で、私の積年の謎が解けたのはうれしい驚きだった。
というのも、かねて私は外国映画の散骨シーンで、必ず文字どおりの「遺灰」(粉状)がまかれるのが不思議でならなかったんですよ。火葬したら塊状の骨が残るはずなのに、なぜ彼らの死骸はみんな粉状なのか?
1つの可能性として考えたのは、日本の一般的な火葬では、遺族に拾骨させるために、あえて骨を焼き残しているのではないかということ。ゆえにもっと時間をかけるか、あるいは強火で焼くかすれば、粉状になるまで焼けるのではないかとにらんでいた。
間違っていた。
『突然炎のごとく』の件の場面では、火葬されたジャンヌ・モローの遺骨が金属製の壺に移し替えられ、ほんの短いカットではあったが、すりこぎのような棒で潰されているんですよ。
言われてみれば、この日本で散骨する場合には、事前に粉骨する「面倒な」作業が必要だと聞いたことがあったんだった。外国映画でまかれる遺骨がみんな粉状であることに鑑みると、海外では火葬後にその場で粉骨するのが、むしろ「標準的な」手順なのかもしれませんね。
で、そこから一歩先を考えてみたんだけど、これって別に日本で事業化したっていいんだよね。
人が死んだ後で、遺骨ほど処理に困るものはない。標準的には墓に納めることになるから、常識人であろうとすれば、それだけで数十万~数百万円の費用がかかる。それをケチって家に置いておいても邪魔なだけだし、墓地埋葬法の規定により、ゴミ収集に出したり、勝手に自宅の庭や公園に埋めたりするわけにもいかない。
しかし初めの段階で遺骨を粉骨してしまえば、手続きを踏んで散骨するにせよ、内緒で可燃ゴミに出すにせよ、話はずっと簡単になるんですよ。
火葬場を営む業者さんが、なぜこれを正規のサービスに組みこまないのか、『突然炎のごとく』を観た今となっては、私は不思議でならない。
標準サービスとは言わずとも、1~3万円程度の割増料金で粉骨込みも選べるようにしておけば――すぐにはパラダイムの転換が追いつかないかもしれないが――遠からず半数以上の喪主さんがそれを希望するようになるのではあるまいか。
火葬場が直営するのが難しいなら、大病院の門前薬局よろしく、葬儀用品店などが火葬場の周辺に粉骨所を開けばよい。要は大型のすり鉢とすりこぎさえあれば用は足りるのだから、初期費用はかなり低く抑えられるはずだ。参入障壁は非常に低くなるだろう。
もちろん悲しみにうちひしがれた葬儀の渦中に、必ずしも粉骨まで済ませる必要はなく、落ち着いてから遺骨の処理法を考えたい人もいるだろう。それを思えば、必ずしも火葬場の周辺に粉骨所を設ける必要もないのかもしれない。
しかし普通の街中に単独で粉骨所を開こうとすれば、それなりに反対運動も起こりそうだ。やはり火葬場にコバンザメ化するのが得策じゃないかな。
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