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ユーロ2024(サッカー欧州選手権)戦評準決勝 スペインvsフランス

スペイン 2-1 フランス (2024.7.9.ミュンヘン)
 ともに前戦から中3日。スペインはル・ノルマンとカルバハルという4バックの右半分(言い換えるならエムバペ側の半分)を出場停止で欠き、ナチョとヘスス・ナバスでその穴を埋める。ペドリは準々決勝での故障が癒えず、そのドイツ戦で大活躍したダニ・オルモが先発を引き継いだ。
 フランスはラビオが出場停止から復帰。一方、グリーズマンをベンチスタートにして、デンベレを右に張らせた3トップを組む。この日も先発から外れたテュラムは、デシャン監督の信頼をやや失った感じか。

 ここまで攻撃好調のスペインと、拙攻に悩むフランス。こんな2チームがビッグトーナメントの終盤にぶつかると、えてして意外に皮肉な結果が出たりするのがサッカー界の常だ。
 実際、前半9分に、レ・ブルーは今大会初めて(PKでもオウンゴールでもない)まともなゴールを奪って先行する。まずは右サイドのデンベレから左サイドのエムバペへと、測ったようなサイドチェンジのパス。エムバペがDFヘスス・ナバスに応対されながらもクロスを上げると、ワントップを務めるコロムアニがバックステップしながらのヘディングで沈めた。パリSGの3トップの最後の共演だ。

 ラ・ロハはしかし、「えてして」がここでも起こるのかという予感を、4分間で否定してみせる。前半21分、ペナルティエリアの外でこぼれ球を収めたラミン・ヤマルが、右に抜く振りをしてマークに出てきたラビオをだまし、左に切り返して巻いたミドル。これがファーサイドのポストに当たってゴール内に飛びこむ同点弾となった。16歳のヤマルは、これでユーロの最年少ゴール記録を大幅に書き換えることに。
 直後の25分には、ダニ・オルモが右サイドのヘスス・ナバスに展開。ナバスのクロスが跳ね返されたところを回収し、右に持ち出してクロスショットを打ちこむ。最後はDFクンデに触れたため、公式記録で一度はOGと判定されたが、前半のうちにダニ・オルモの3試合連続弾と訂正された。

 このレベルの、この大舞台では非常に珍しいことだが、後半も試合の流れは大きくは変わらず。スペインはそのまま2対1のスコアで、慎重に勝ちきった。
 前後半のシュート数を比較すると、スペインの試合運びのうまさと、フランスの手をこまねいていた様子が際立つ。前半5本(枠内2本)だったラ・ロハは、90分を終えても6本(2本)。無駄にリスクを冒さず、上手に相手をいなしながら時計の針を進めようという発想ですね。

 一方、前半3本(1本)だったレ・ブルーは、後半を終えても9本(3本)にとどまった。デシャンが切った4枚の交代カードも、戦況を大きく動かすには至らず。
 頼みのエムバペは56分に弱めの枠内シュートを放つもGKウナイ・シモンに取られ、86分のカットインからのシュートは枠外への空砲となった。1年半前のカタールW杯でその名を不同のものにしたスーパースターも、今大会ではPKの1点のみ。今夏の移籍が決まっているレアル・マドリードへの手土産は、残念ながら手に入れ損ねた。

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