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静 霧一/小説
2020年9月24日 20:09
今日も私のデスクにはカフェオレが置いてあった。 緑色のボトルには、金色の文字で"エスプレッソ"と書かれている。 私はそれを手に取ると、申し訳なさでいっぱいになった。 だけど、そんなことでいちいち謝っていたら私の身が持たないし、何より彼の気持ちを踏みにじることになる。 私はデスクのパソコンを開く前に、自身のスマホを開き、『カフェオレありがとう!』と塩浦くんにメッセージを送った。 気
2020年10月8日 18:50
「上井さん、この伝票のことなんですけど……」「あぁ、これですね、これは……」 いつもと変わらない忙しい平日が私のもとへと戻ってきた。 変わったといえば、私と東条さんとの距離感だろうか 空気感というか、雰囲気というか、青色だったものがオレンジ色に変わったと言えばわかりやすいと思う。 笑いあって談笑なんてする仲じゃなかったのに、東条さんはふいに冗談なんていうものだから、私はそれにつられて
2020年10月17日 18:37
「お嬢さん、私はあなたを出さないでという命令はされているが、ここで起こることいついては何も言われていない。だから、今お嬢さんが出来ることをしなさい。ちなみに今このタクシーが向かっている先は"ベレガントホテル"っていう渋谷にあるホテルさ。これが住所だ。」 運転手は流れるようにしてノートに住所を書き、それを粗く破った。 不格好なメモ用紙が私に手渡され、私はようやく自分の現在位置が把握できた。
2020年10月18日 18:32
「くそ、あの野郎どうやって」 東条は彼を見るなり舌打ちし、額に血管を浮かべた。 私の肩を握る右手に力が入り、洋服越しに爪が食い込む。「おい、少し抱きかかえるぞ」 そういうと、東条は私の膝裏に手を伸ばし、お姫様抱っこをする形で抱きかかえ、そのままエレベーターへと走っていった。 私は何が起こっているのか分からずに動転する。 エレベーターへと乗り込み10階のボタンを押すと、東条は閉まる
2020年10月19日 18:48
「東条おおお!!!」 そこには塩浦くんが鬼のような形相で立っており、そのまま東条のもとまで一気に駆け出した。 その勢いのまま、彼は右手を振りかぶり、東条の横っ面に拳を叩きこむ。 ドゴンという鈍い音がしたかと思うと、東条は窓の壁に激突した。「上井さん、いくよ!」 塩浦くんは私を抱きかかえ、そのまま勢いよく部屋を出る。 先ほどのエレベーターへと乗り込み、1階を押すと、閉まるボタンを連打
2020年10月22日 18:35
「昨日……上井さんと別れた後、加藤さんに2軒目を誘われたんだ」 彼はゆっくりと口を開いた。 私はそれに耳を傾ける。「俺もむしゃくしゃしてたし、どこか失恋したみたいなショックがあったから、適当なお店に入って終電近くまで飲んでたんだよね。飲んでた……っていってもきちんと家には帰りたかったからほどほどに抑えていたけど、加藤さんがすごく飲んじゃってね」「どこで飲んでたの……?」「池袋だよ」