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静 霧一/小説
2020年11月8日 18:39
開け放たれた部屋に四月の風が舞い込む。 見慣れた部屋だというのに、物が何も置いていないと、なんだか寂しさを感じる。 私は今日、彼の部屋の引っ越しの準備に彼の自宅に訪れていた。「少し、外歩かない?」 私は彼からの提案を受け入れた。 彼の住んでいるアパートを出て、歩きながら住宅街を抜けていく。 ほどなく歩くと、突然桜の木が立ち並ぶ道の前に出た。 私たちは桜がひらひらと降る歩道の中