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ゼアイズアライト

高校に入ったばかりの頃
両親が離婚した

母親はある時
心の調子を
崩してしまい
睡眠薬を飲むようになった
薬の量は増えていき
薬を飲みすぎて
家の中で
動けなくなる姿が
よく見られる様になった

父親は
一階で母親が
動けなくなっているのを
二階の布団へ運んだ
僕はと言えば
自分の部屋で
布団に入り
どうすれば良いのか
わからず
天井を見上げ
布団から
出られないでいた

音楽をやっていた僕は
部屋に籠もって
ギターばかり
弾くようになった
そしてしばらくして
両親が離婚した

母親と二人暮し
母子家庭
世の中は
バカばっかりだ
高校生もバカばっかりだ
そんな事ばかり考えていて
友達なんか
出来るはずも無く
家では
相変わらず
一人で
ギターを弾き
音楽ばかり聴き
人に聴かせない
自分の為だけの曲を
沢山作った

高校2年になった
母親は
男を連れてきた
男と仲良くしろと
言われた
何故知らない男と
仲良くしなければならない
家に居るのは
居心地が
悪くなってしまった
僕は家にはなるべく
帰らない様にした

行く所も無いので
自転車で
街を走る事にした
ウォークマンを
聴きながら
街を何時間も走った

ストーンローゼズ
ザスミス
ハウスオブラブ
エコーアンドザハニーメン

街中を自転車で走りながら
音楽を聴くのは
本当に気持ちよかった
誰も僕の世界を
邪魔させない
街の何処に居ても
街の何処を巡っても
その何からも
僕からは遠かった

ある時
高校の体育の授業中に
不良の同級生と
喧嘩になった
皆でバレーボールボールを
やる事になり
パス回しの
練習をしていたが
不良の子は
よくイジメられていた
オタクの子に
ボールをわざとぶつけたり
パスを回さなかったりした
オタクの子は笑っていた
僕は無性に
腹が立ってきたので
不良の子から
ボールを奪い
不良の子の顔面にボールを
思い切りぶつけてやった
喧嘩になりかけたが
先生が割って入り
その場はおさまった

帰りに顔をかせと
不良の子と
そのグループに言われ
駅のトイレに
連れて行かれて
喧嘩になった
鼻を殴られて
血だらけになった
バレーボールからは
時間が立ち
僕はバカバカしく
なってしまっていたので
殴られるままだった

制服は夏服で
シャツだった
シャツは血だらけに
なったので
脱いでTシャツになった
Tシャツは
ザスミスだった
下に着てた
ザスミスにも
血が付いていた

家に帰って母親に
どうしたのか聞かれたが
駅の階段から落ちたと
嘘をついた

その夜は眠れず
朝方暗い時間に
自転車に乗って家を出た
いつものコースの
大きな公園を走り
空が白んで来た頃に
遠くで
大砲の様な音が聞こえた

家に帰ると
テレビのニュースでは
近くの工場が
爆発したと流れていた

学校に行くと
不良の子は休みだった

僕はギターを弾いて
相変わらず
誰にも聴かせない
曲を沢山作った

自転車に乗り
街を走ると
ヘッドフォンから
聴こえてくる

決して消えることの無い光がある
決して消えることの無い光がある

何からも遠いけど
僕は力強くペダルを踏む
高校卒業まであと

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