SS【奏でる】♯毎週ショートショートnote
お題「スナイパーの意外な使い方」
【奏でる】(410文字)
引退後、私はリコーダーを始めた。
リコーダーは子どもたちも親しんでいる楽器だから、喜ばせることができるだろうと思ったのだ。
意外にも上達は早く、私は公園でリコーダーを吹いてみた。
「おじさん、上手だねぇ」
子どもたちが近づいてきて、私の音色を褒めてくれる。私は嬉しかった。それからは毎日のように公園でリコーダーを吹き、子どもたちに聴かせた。
いつからか、私のリコーダーの音が形をとるようになった。それは空中を漂い、蝶々や小鳥がとまる。子どもたちが拍手する。私は蝶や小鳥を見かけると彼らを狙って音を吹くようになった。百発百中。
子どもたちは大喜びして小鳥たちと戯れた。
しかしある日、昔の知人が訪れ、私の様子を見て嘲るように言った。
「スナイパーの意外な使い方だな」と。
私は現役時代、狙撃手として戦場で多くのいのちを奪った。
しかし私はそれを悔いている。今はその償いをしているのだ。
嘲りたければ嘲るがいい。
私は魂のために奏でているのだから。
おわり
(2023/7/3 作)
『たらはかに』様の7/2~7/8のイベントに参加させていただきました☆
スナイパーかぁ…… 微かに胸がちくりとして、今回はパスしようかなとも思ったのですが、平和な方に向けてみました。
「意外な使い方」ってことで、他の方の作品にもそういうものが多くてホッとしています(*´ω`*)
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