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検査の順番を待つ、ベンチで(11.16)

とある検査をするため、病院へ。
朝一番の予約をしてはいるものの、同じ枠には何十人もいるので、一番乗りで受付を済ませたい…と、とても早い時間から並んでいた。

わたしの前には、初老のおじさまが一人、静かに本を読みながら待っておられる。
そしてわたしの後ろには、スマホゲームに勤しむサラリーマンが2人くらい座っていた。
わたしも、最近読み始めた電子書籍をウキウキしながら読んでいた。


そんな中、「おばあちゃん」という感じの、背が丸まった女性に「順番はこの列に並ぶの?」と声をかけられた。
「そうですよ」と答えると、わたしの隣に座ってしまった。
そう。ソーシャルディスタンスを保つ名目で、皆、ベンチに、1人ずつ腰をかけているので、わたしの隣の席は空いていたのだ。
おずおずと、「皆さん順番に並んでいるので…」と声をかけると、2人のサラリーマンがそれぞれ「お気になさらないでください」といってくださった。
おばあちゃまは、いいんですかと言いながら、どっしりの座り直していた。

優しいサラリーマンのお二人に、待ちたくないからと急いで朝きた自分を少し恥ずかしく思った。


おばあちゃまは、手持ち無沙汰だったらしく、それから30分ほどの間なんども、わたしに声をかけてきた。
インフルエンザの注射は打ったのか とか
最近はコロナの人数が増えてきて、若い人も大変でしょ? とか
息子さんに、コロナが心配だからインフルエンザの予防注射に早く行けと怒られた話 とか
たくさんしてくださった。

本を読みたいわたしもいたけど、優しさに触れたあとだったし、
少し優しい気持ちを持ちたかったのか、おばあちゃまとたくさん会話をした。

扉が開き、受付を開始した時、おばあちゃまから、「こんなくだらない話に付き合ってくれてありがとう。あなたもやりたいことがあっただろうに申し訳なかったわ」と言われた。なんて素敵なおばあちゃまなんだろう。

後ろに並んでいたサラリーマン共、きっと通じ合っているだろう会釈もできた。

なんだか、いい一日が始まる予感がした。


未来のわたしとの交換日記
11月16日のわたしより

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