ロクデナシオヤジ
さて。金欠で死んでしまいそうです……死なないけど。
どれくらい金欠なのかと言うと、厳密に言えば160円くらいしか手元にありません。
朝(昼過ぎでしたが)起きてまず何を考えるかって、だいたい毎日思う事は、「作文作らなきゃなぁ」と思うのですが、今日は違いました。
「お金が無いなぁ」
起きてすぐです。
情けないなぁ。笑えません。ちょっとそこのひと、笑わないでください。ほんとに金欠なんですから。
昼過ぎまでぐうたらと寝ていて、お金が無いなんて思っているのは、ドラマとか安っぽい映画の中のぐうたらなお父さんだけかと思っていましたが、まさか自分がそうなってしまうなんて思ってもなかったです。
(ここからは空想の寸劇)
ガチャガチャ…(ドアノブをひねる音)
「あれ、開いてるな。オヤジまーた酔って帰ってカギすんの忘れてんのかよ。ったく情けねぇなぁ。」
玄関を開けると、ビニール袋に包まれたゴミとビールの空き缶が所狭しと転がっている。出かける時にはたぶんこの汚いスニーカーをゴミの山から探し出さなきゃいけないんだろうなと想像するのは容易なほど。その靴は玄関にひとつ転がっていて、もう片方は…どこだろ?まぁいいか。
ビールの空き缶でボウリングでもしたのか?ってようなくらいにどこのメーカーなのかわからない安いビールとチューハイの空き缶が転がっている。それにゴミ捨て場とも駅のトイレとも違う異様なにおいがしていてかなり臭い。何日前のものなんだ?
ガサガサガサ
「オヤジぃ、いるかぁ?…もう、ゴミくらい捨てろよな! わあ、きったねぇな、ご飯カチカチになってんぞ。」
薄暗い部屋の奥で、小さくレーザービームのような外の光が入り込んできている。今日は少し雨が降っていて外も暗いのだけど、それが眩しいくらいに感じる暗い部屋だ。このにおいとゴミさえなければ、そのレーザービームが照らすこの部屋はまるでどこかのクラブのような光景……でもないか。まったくもって違う。どっちかっていうと洞窟かほとんど使われていない倉庫だな。いや、倉庫よりも埃っぽいし洞窟よりも酷いにおいだ。洞窟なんて入った事無いんだけど。
窓もしばらく開けてないんだろうな。どろんとした空気に混じって様々な種類の異臭と男臭さが漂うなんだか空気すらネバネバしているようにも感じる。ほんとなら入りたくないんだが…。
「うう…うーん。おあ。 なんだ健二、来てたんか。来るなら電話くらいすれよ…。あぁ、腰がいでぇ。いでぇよぉ…、おやすみぃ。」
何を言うか、電話しても出んかっただろうこのバカオヤジ。
「おい!ふざけんな!寝るな!きたねぇぞ、部屋かたせよ!洗濯しろ、ゴミすてれ!」
ぼす!
少し強めに蹴ったのだが、その多少太ったでかい体にはびくともしない。もう少し強く蹴ったら良かったか。
スシャー!
部屋の奥まで行って、カーテンを勢いよく開ける。外の光がデパートのセールに突入するおばさんの軍団のように、勢いよく入り込んできた。部屋の埃が激しく飛んでいるのが見えて、俺は思わず息を止めた。窓も開けよう。
「ううう…まーぶしいなぁ、さみぃ、もう朝か…。何しに来たんだ…?」
くそオヤジめ、何しに来たじゃねぇだろ。ひとがゴミをまとめて捨てようかって今俺が掃除してんのが見えないのか。…見てないか。
全部片付けるのにどれくらい時間がかかるんだろうか、考えられない、考えたくもない。早くこの酷く汚い部屋から出たい気持ちが強すぎる。
「何しに来たじゃねぇ、もう昼過ぎだ!お前がちゃんと死んでるかどうか見に来たんだよ!」
なんで自分はこんなオヤジのもとに生まれ落ちたんだろうと考えたが、そんな事考えても仕方のない事だ。
このオヤジのお陰で考えさせられる事がたくさんあるが、こいつの稼いだ金で俺も生きられていると思えばちょっとは感謝できる。ほんのちょっとだけ。
そう。ちょっとだけ部屋の片付けと掃除が苦手なだけなんだ。あと、お金の管理も。それから自分の健康管理も。それから…うん、いろいろある。
“仕方がないさ、コイツも人間なんだ。” そうやってオヤジの弱さを自分に知らしめて納得しかけた時だった。
!!!!
さっき振り返った時の光景をよくよく思い出してみて、“まさか…”という悪い予感と、一瞬振り返って見た光景が頭の中で重なった。
再びオヤジの方をゆっくりと見ると、薄暗い部屋で気がつかなかったが、寝ているオヤジの隣に若い女が“裸で”寝転がってるのが見えた。
うわ。やばい。マジでくそオヤジだ。
さっき少しだけコイツに感謝したのを早くも後悔した。
少しだけ、寝転んだ女を見てみようかと思ったが思い止まる。
早く片付けてこの部屋を出よう…。
(空想、終わり。)
なんていう感じのオヤジにはなっていないから良い(?)かなとは思いますが、給料を今か今かと待つような生活にうんざりしているところです。
今日はその160円そこそこの、なけなしのお金を使ってどこぞのバーガー屋さんでコーヒーを買い、それを飲みながら考え事をしています。
本当は銀行に行けばいくらかお金があるんだけど、「それで済ませられるならそれで良いか、そんな日もある」と、考えているところなんです。だし、ちょっとだけラッキーなことがあったんですよね。
150円のブラックコーヒーを買って建物の2階に上がり、座ってひと口飲んでほっとしていると、店員さんがやって来て言いました。
「すみませんでした!カフェラテと間違えてしまいました。」
え?(そうなの? ブラックコーヒーとカフェラテの違いに気づかなかった。苦笑)
「ああ、大丈夫ですよ」と言うのですが、店員さんは急いでブラックのコーヒーも持って来てくれていたのでした。
「じゃあ…こちらは大丈夫ですか?飲まれます?」とブラックコーヒーを差し出してくれました。
飲みます飲みます!(心の中で!)
貧乏臭くて自分が嫌になるんだけど、本当に助かります。
さて、考え事も終わったし、どうしようかな。
まともな人間になる事を考えよう、これからの僕は。
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