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思索メモ #3

ビデオに録った『風立ちぬ』を見ながら、実家で母さんと話していたことを思い出した。

『風立ちぬ』は堀辰雄による、あの零戦をつくった堀越二郎の物語。

絵は自然豊かに、当時の町や人々の描写も細かく美しい。

ビデオに録った『風立ちぬ』を見ながら母さんが言った。

「この物語も、つくるのにものすごい取材をしたんだろうね」

「取材?」ぼくはハッとした。

物語は、幾度もの深い取材からできている。それが土台となって物語ができる。取材がすべてだ。

人物の心象描写、場の空気感。

深い取材がなければ完成し得ない。

それを本当にし抜いたときに、物語になる。映画になる。ドラマになる。小説になる。

母はそう言った。

*   *   *

知らなければ本当のことは何も書けない。当たり前だけど本質だと思う。

取材をとおして物語ができたとき、その人の生きた史実ができる。

訊き、書き、伝える。ぼくの仕事はそれができる。底知れない力がある。

世に顕在化していない世界が見たい。できることなら、それを世の中に見てほしい。



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