入院日記の逆襲 2
(その1から続いています)
専門病院の「心血管ドック」にネットから申し込んだら、翌朝すぐに携帯に電話が入りました。
「ドックにお申し込みですね?」
「はい」
「何か症状や気になることはありますか?」
たずねられるまま、胃が悪いようで他の医院にかかっているが食後に背中が痛くなることがある、息苦しくなることもないわけではないので一度見ておこうと思ったと言うと、
「症状があるので、ドックではなく診察の方でお受けします」
と言われました。
そうですか? 背中は胃炎や逆流性食道炎の痛みだと思っていたんだけど。
でも家族歴があるし、この際、専門的に見てもらうのも良いよね。 除外診断できるしね。 それに診察と言ったのは向こうで、こっちはもともと「ドック」を希望したんだから。
……って、胃腸しか症状がない(正直、そんな感じでした)ことに一所懸命理由をつけ、病院へと向かったのでした。
受付は8時半からですが、7時半から開いているので早めに来て下さいと言われ、朝ごはんも早々に車で乗り付けます。おお、7時半だというのに病院前の駐車場はほぼ満杯ですよ。 受付をすませて待っていると、事務員さんがなにやら大きなものをかかえてきて受付カウンターの前に置きました。
わーーーー、ペッパーくんです!
ペッパーくんがいる!
実際に見るのは初めてでした。 でもペッパーくんがそれなりにお話しするのに、受付で待っている人々(ほぼ全員が私より年上?)は知らん顔。なんだかかわいそうになってきて、ペッパーくんの前に立ちました。
近くに寄ると、ペッパーくんは顔をこちらに向けて話し出します。 目はしっかりと相手の方を向き、いろいろと話しかけてくれます。 最寄りの駅までのバスの時刻表なども胸のモニターに呈示してくれるようです。
「お時間があるなら、ぼくと遊びませんか」
遊びたいよ。でもお時間があるようで無いよ。いつ自分が呼ばれるかわからないからねえ。 それに、待合の椅子がずらっと並んだ受付カウンター前のスペースで、ロボットであるペッパーくんに話しかけるのはいかにも間抜けなのです。
そう、間抜けに感じるんです、こちらが。公衆の場でひとり声を出してロボットと会話するのが。 そこがネックだな。これなんとかして、ペッパーくんをもっと活用できないかなあ。せっかくいるんだもの。
後ろ髪を引かれながらもペッパーくんと別れ、呼び出された時に移動しやすい位置に移りました。
病院に行くと、たいがいは血液検査があります。 今回も例外ではなく、最初に血を採られました。 私の場合、血管が細いのか見えにくいのか採血がチャレンジングな事態になる場合が多いのですが、このときは問題なく通過しました。
そして待ちます。
同じ検査着を来て同じように荷物を抱えた人々がたくさん待っています。待っている間にテレビのワイドショーでやっていた成城石井とカルディの特集をすっかり見てしまいました。 成城石井は近所にないし、進出してくれないかなあ。 ああいうお店は大好きです。お気に入りはDean&Delucaですが、これも残念ながら近所にはありません。
さて、造影剤を入れるための点滴を……というところで細い血管の威力が発揮されてしまいました。そんなとこで発揮しなくていいのに。 最初は右の肘関節の内側あたりを探っていた看護師さん、
「ああ取れないわ。ごめんなさいね、ちょっと痛いけどここから」
といって、手首の外側に針を刺しました。
痛いよ……
でもきちんと針が入ってしまえば慣れますので、そのまま呼ばれてCT台に横たわりました。 造影剤を使ってのCT撮影は胆石が詰まった時に何度かやったので知っています。胴体がのど元から股のあたりまで一気にグワッと熱くなる感覚とか、以前にも経験しましたからね。ああそう、これよ、この感じ。 とはいうものの、あとは寝ていればよいので楽ちんです。
その後、レントゲンを撮りエコーを取り、一連の検査を終えて診察の順番を待ちました。 何せ混んでいるので、ここでテレビでやっていたCWニコルさんの番組と、もうひとつと、朝ドラの再放送を全部見ました。この時の朝ドラはなんだったっけ。たけちゃんという人が明美さんという女性にフラれておりましたわ。お気の毒に。 たけちゃんにも明美さんにも、それぞれの未来に幸せがあらんことを。
そんなこんなでのんきに待っていたらとうとう名前が呼ばれました。 この病院の看板の先生が精力的に、本当に「精力的」という言葉がぴったり当てはまる感じで次々と患者さんをさばいています。
「森野きのこさんね、どうして来たんだっけ。あ、そうか、最初はドックを申し込んだのか」
そして画像(私の心臓と思われる)を一目見て
「あ~、詰まってるね。詰まってます。心カテやろう。日にち決めましょう」
と、ご神託がおりたのでした。
えええええええ!?
マジ?
うっそー?
というのが正直な気持ちでございました。
(続く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?