見出し画像

逃げるおじさん

日々、仕事をしている中で、
何も考えずに取り組んでいると
重大なことを見落としていることがある。

「営業職」の仕事のひとつに
売掛金の回収までを行う
「債権管理」という項目がある。


要は、商品を納品し、売上が上がった、
その金額を約束の期日までに支払って頂くまでの
管理を行う、ということ。


これは、とても重要な営業活動のひとつで、
いくら売上が上がったところで
最終的にお金を払ってもらえない限り、
会社は存続できない。


損益計算書上は黒字であっても、
手元に現金がなければ
会社は潰れる。


そして、世の中には
商品の供給を受けていたとしても
悪意を持ってその代金を支払わない業者も
存在する。


当たり前のようにされるべき支払いは、
実は当たり前ではなく、
また会社存続のために、
この「債権管理」はとても重要な部分となってくる。

部署の管理を任されて
数か月したある日、中間決算前だったので
部署内で担当する、
各社の債権管理の状況を確認していた。


古い昭和のシステムを使用し、
ドットプリンターなる、複数枚のカーボン紙の伝票に
印字できる、雑音が大きいプリンターから
出力された資料に目を通す。


通常、営業部門の事務職の方から
個別資料は各担当営業に直接配布され、
締日ごとまとまったものは
ファイリングされて資料棚に保管されていた。


すると、約2百万円くらいの債権が
未回収のまま、1年以上経過
しているものを見つけた。


支払に関する疑義は
相手に失礼があってはいけないので、
慎重に過去資料を調べ、

経理にも問い合わせをした上で
事実確認をしていく。


すると、やっぱり
約1年前の債権が支払われないまま
放置されていた。

資料をまとめ、
担当者を呼び、この内容を把握しているか
質問する。


「え、本当ですか?そんなはずは。。」

そんなはずがあったから、
手間暇かけて調べ、確認しているのだ。


そして、担当者本人も確認ができたところで
詳細報告を促す。

すると、
「次回の支払日には、きちんと入金して頂くことになっています」

との返答。
いやいや、そうじゃない。

そんなことは当然で、
なぜそのようなことが起きたのか、
を改めて問う。


すると、
自分のせいじゃない、とか
周囲のひとのせいにし始めた。

何をどう考えて、
担当取引先の債権管理を
ひとのせいにするのか。。


閉口したまま、
こりゃダメだ、
と諦めた。


その担当者は
会社の中では50代後半で
営業職の経験は数十年の
大ベテラン。


だからこその「逃げ口上」
だったのかもしれないが、
原因の考察と失敗に対するお詫びがなく、

逃げ回って
他人のせいにしていたことが
とても残念だった。


「返品条件付の買取」という特殊な取引条件で、
在庫が多めになっている店舗では
しばしば、返品と値引が集中する月に
売掛金がマイナスになることがある。


売掛金がマイナスになると、
お互いの経理処理上、面倒なことが起こる。

それを回避するために
マイナスになる前に
一時的に債権の一部支払いを
止めてもらう申入れをすることがある。


今回の件は、それをこちらから申入れ
その後も、支払が止まったままに
なっていた、ということ。


通常、翌月以降に清算されるので
支払が止まったままになることはない。

資本金によっては下請法にも関わってくるので
ここは、お互いに慎重に確認を取り合うのが通常。


先方が、悪意を持って止めていたのか、
この事例については不明だが、
それにしても、お互いの会社と担当者が

本決算を跨いで古い「未払い金」と「未回収金」を
見落としていたことは間違いない。


社内では何が起きていたかというと、
事務職は債権管理表を「ただ配布する」だけ、
営業担当者は「ただ受け取る」だけ。

経理は、粉飾まがいのことをしている営業に対し、
「どうせまた何かいかがわしいことでもしてるんだろう」と
見過ごしていたか、

支払サイクルが長い取引先で、少額債権だったので
見落としていたか、

のどちらか、で
それらが全て重なり、どこにもチェック機能が働いていなかった。


いずれにしても、
事務職、営業担当者、当時の営業責任者、経理担当者の
4つのフィルターを通して
異常が検知されなかったことは

「意識」「仕組み」の両方に問題があると思った。


こういった状態は危機的状態。

皆が作業ベースで業務に当たっているので、
本来の意味を理解しないまま、
事務的に物ごとをこなすだけ。

だから、チェック機能が働かず、
異常検知されない。


このままではうまくいかないので、
名前を伏せて今回の事例を部署内で共有して注意喚起し、
こちらから経理に状況報告を入れることで

暗に経理にも「ちゃんとチェックせい!」という
プレッシャーをかけた。


そして、仕組みの部分で事務的な流れを変えるべく、
債権管理表を担当者へ直接配布するのではなく、
自分がチェックしてから担当者へ配布する、
と事務担当者に伝えた。

今後は締日ごとの債権管理表を
全てわたし宛てに持ってきてもらうよう、依頼した。


すると、ここで予想外のことが起こる。

「今までこの流れでやっているので、できません」
との返答。

「え、どゆこと?」
と思い、一連の経緯を説明しもう一度伝える。

「だから、できません」


わたしの頭の中では理解できないことばかりだったが、
これ以上は不毛だと思って、諦めた。
難しいこと言ってるかな・。。?

「では、大丈夫です」
妥協一杯の閉めの言葉。言いたいことは山ほどあるが、飲み込んだ。

仕方なく、月に一度、自分からその書類を探して
確認することに決めた。

そして、各担当者が支払いを保留したい場合、
全て報告し許可をもって実行してもらうこととして
担当者判断で実行させない流れにした。


作業が作業として、事務が事務的に行われ過ぎると、
ひとつ一つの業務を考えて処理せず、
業務に疑問を持たなくなる。

だから、チェック機能が働かない。


カッチコチの思考とルーティンにまみれた業務、
この組織に足りないものは、
当事者意識だ、と思った。

だから、すぐに逃げる。
他人のせいにする。

そして、
会社指示より、自分のこだわり。


ここからの立て直しは、相当キツいなぁ。。
心が折れかける。




最後までお読み頂き、ありがとうございます。

マネジメントでお悩みの方、
管理職になって日が浅い方、
上司の考えに「?」と思っている方、
カッチカチに古い体制の会社に疑問を持たれている方、
などなど。

お仕事でそんなお悩みを持たれている方に向けて
発信していきたいと思います。

 きのした

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?