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ザ・ノンフィクション2 ~世界じゃそれを粉飾と呼ぶんだぜ♪~

マネージャーに着任してすぐ、
肩に力が入りながら、上の方針に基づいて
年間の部署の方針を固めていた最中、

思いもよらない実態が浮き彫りになってくる。


ここから、ノンフィクションの
ドキュメンタリー第2話となります。
(七夕なのに、物騒なネタ)


部署の年間方針の中で、
攻めの部分となる、売上関連の
具体的な目標設定は終わった。


そして、
守りの部分となる、
管理強化(不正の排除)に
取り掛かる。

取り掛かっている中で、
日々の業務と通じて不思議なことが
多く発生していた。

①翌月になったら、月初にものすごい額の返品が入る。
②消化取引(売上仕入)の売上未計上により、売上と入金の
差額が出て経理から確認が入る。

③クリアランスセール期間が終わっているにも
関わらず、セール商品の在庫が売場にある。

④未入金の問合せが経理から入る
⑤未照合の値引の問合せが経理から入る。
⑥消化取引(店頭商品も自社資産)の実棚実績が合わない。

今回は②以降の詳細について
綴っていく。

起こっていたこと。
②消化取引(売上仕入)の売上未計上により、売上と入金の
差額が出て経理から確認が入る。

これは、「消化取引」という、百貨店なんかで行われている
独特の商慣習で、
店頭のレジで販売処理がされてから、
先方の仕入が起こり、自社の売上が計上される」
取引で、

先方から見て、売上後に仕入が起こることから、
「売上仕入」などと呼ばれる。

そして、この「消化取引」は
なぜか、売場で仕入伝票が発行されない


これはおそらく、
店舗側では在庫管理の必要がないので、
省いているのだと思う。

では、何と照合するかといえば、
売場にいる、自社の販売スタッフの
手書き売上報告書などで照合し、

その内容に基づいて社内の基幹システムに
入力して売上計上していた。


その売上報告書の到着が遅れることで、
締日付近の数日がずれ、先方の入金が多く、
自社内の売上計上が足りない、ということは
しばしば起こり得る

ただ、これを
意図的に、1か月以上もずらし
計上する輩がいたのだ。

要は、月次の売上予算の達成状況に応じ、
消化売上を調整弁として使っていたのだ。

お取引先からの入金に対し、
社内の売上計上が少ない

その差額が大きいので、
「どうなってるの?」ということで
経理から確認が入る

つまり、
「売上時点での計上をしていない」
と、いうこと。

「はーい、完全に粉飾決定です!」


「新しい日々をつなぐのは~
新しい君と僕なのさぁ~♪
僕らーなぜかー 確かーめ合う~
世界じゃそれを粉飾と呼ぶんだぜ~」

(懐かしい)


そして、その逆もあった。

それは
④未入金の問合せが経理から入る

これは、逆に
「社内で売上を計上しているのに、
先方からの入金がない」
状態。

要は、
先付け伝票」という方法で、
社内のシステム上で計上、発行された伝票の
もとデータではなく、印刷される伝票の
日付を〆日以降に変えてしまうこと。

先方は物理的に「印刷された伝票」をもとに
検品や仕入を起こすので、ここで

「社内の計上データ」
「先方で処理される伝票」
差異が出てくる。


これが、経理から未入金による問合せが入る理由。

「はーい、これも粉飾確定です!」


「新しい日々を変えるのは~
いじらしいほどのチェックなのさぁ~♪
僕らーそれをー 確かーめ合う~
世界じゃそれも粉飾と呼ぶんだぜ~」

また、社内の基幹システムへのデータ入力を遅らせることで
売上調整をしていることが、まだ、ある。

それは
⑤未照合の値引の問合せが経理から入る。

「値引」とは、文字通り、卸売上からの値引処理を
卸側が負担するもの。

主に、直近で行われているような、
「夏のクリアランスセール」みたいな時期に

元々、正価で店頭販売していた商品を
そのまま、店頭でセール価格に変更処理して
セール販売するときに発生する、差額

ブランドビジネスを行う上で、価格の統制を
しなければならないので、この処理自体は問題ない。

ただ、その値引処理された伝票の
社内処理を操作していると、
「未照合値引」の問合せが経理から、入る。


要は、先方から値引処理されて
入金額がこれだけ減っている。
「どういうこと?」
というのが経理からの問合せ。


担当営業としては、値引を計上すると
売上実績が減り、かつ計算上の粗利実績も
大きく減る

それが評価に直結する
だから、計上をためらう

そして、経理からの問合せは、各個人ではなく、
責任者たる、部署の、マネージャーに入る。

これらの管理不行き届きは、
マネージャーの責任となるのだ。


あちこちで売上操作、粉飾だらけ。
日々そんなことが横行していた。

空いた口の顎が外れて、床に着きそう。。。


経営側からしたら、
こんなにちょこちょこ粉飾をされたのでは、
実態が、掴めない

「キャッシュフロー計算書」の存在感が高まっている昨今、
こんなことでは、資金調達の計画にも影響する。

要は、売上と入金が連動せず、ズレが大きくなるので
手元現金をより厚くしなければならず、
その分、投資に回せないし、場合によっては
利息を払って追加借入をする必要が出てくる。


会社にとって、悪いことしか起こっていないのだ。

そして、巡り巡って、
債務関連経費が多くなれば、
経常利益に影響し、

やはり、社員ひとり一人への
分配原資が減ってしまうのだ。


更に、会社の決算が「年に1回」ということは、
個人の査定だって、細かく区切ったとしても
最終評価は「1年間の通期実績」となる。


月次の目標に届かなかったら、
翌月で取り返す。

翌月が難しいのであれば、
3か月(四半期ごと)で考える。

それが難しければ、
半期(6ヵ月)ごとで考える。

いずれにしても、
通期(12か月)で評価されるのだから、
1か月だけ良くてもダメ。


そもそも、ファッション業界なんて
消耗品だし、季節性によって売上額に変動があるし、

短いサイクルで回るものだから、
さまざまな影響を受けやすい。

だから、「目前の視点」と「数か月先の視点」の、
両方の見方が必要になる。

計画通りいかなくても、粉飾せず、
挽回する機会を掴みにいけばいい。

それをせずして、粉飾ばかり。。


それでもって、
③クリアランスセール期間が終わっているにも
関わらず、セール商品の在庫が売場にある。

これは、かつてセール商品が
店頭の目玉品となって、集客の核となっていた時代に
セール商品が多くない回らない売場で、

次回のセール(7月セールの次は1月)まで
売場に保管してしまうこと。

それによって、返品を受けなくて良くなる


ただ、会社としてはアウトレットで早く販売したい
でも、できない。
更に、商品は劣化する。

売場だって、残ったものを保管するので
来店されたお客さんの中には
「まだあのセール品置いてある。。」
と思われているかもしれない。

これも、いいことはひとつもない


本当に
粉飾に対して、罪悪感を持っていない」ことに
危機感を抱いた。

だから、これらの説明を
こと細かく伝え、
「社内の計上日をいくら操作したところで、
お取引先からの入金額には
一切影響しない」

「だから、バカなことはするな!バカ!」
とまでは言えなかったが、

「意味のないことはやめましょう」
と、言い続けた。


守りである、管理強化の方針は
「社内処理は入金と連動させる」
ということを基本の軸とし、

行動、社内処理をしてもらうことにした。


これらは当たり前のことだけど、
簿記・会計知識がないまま業務に当たっていると
どこに問題があって、何を修正すれば良いかも
わからなかったと思う。

そして、売上操作をすることが
粉飾である、ということも
認識できなかったかもしれない。


そういった意味でも、
マネージャーに簿記・会計知識は
やっぱり、必要。



最後までお読み頂き、ありがとうございます。

マネジメントでお悩みの方、
管理職になって日が浅い方、
上司の考えに「?」と思っている方、
カッチカチに古い体制の会社に疑問を持たれている方、
などなど。

お仕事でそんなお悩みを持たれている方に向けて
発信していきたいと思います。

 きのした


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