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「抗体医薬と抗ウイルス薬はオミクロン株にも有効か?」

TONOZUKAです。


抗体医薬と抗ウイルス薬はオミクロン株にも有効か?

以下引用

国立感染症研究所の高下恵美氏らは、オミクロン株を含む新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株に対する抗体医薬と抗ウイルス薬の効果を比較するin vitroの研究を行い、ソトロビマブ、レムデシビル、モルヌピラビルは、オミクロン株感染者にも有効であることが示唆されたと報告した。結果は2022年1月26日NEJM誌電子版にCORRESPONDENCEとして掲載された。

 オミクロン株は、当初に流行した野生株と比べると、スパイク蛋白質に多くの変異を持っており、受容体結合ドメイン上にも15カ所にアミノ酸置換が見られる。ゆえに、米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可(EUA)を得ているモノクローナル抗体製剤などの有効性の低下が懸念されていた。研究者たちはまず、FDAから使用が許可されているモノクローナル抗体製剤の、オミクロン株および他の変異株に対する中和活性をin vitroで評価した。

 評価の対象としたのは、米国で使用されているEli Lilly社のバムラニビマブ・エテセビマブ(LY-CoV555 + LY-CoV016)、日本でも使用されているRoche社のカシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)、およびGSK社のソトロビマブ(ゼビュディ)、そして米国で先頃EUAを得たAstraZeneca社のチキサゲビマブ・シルガビマブ(Evusheld)だ。チキサゲビマブ・シルガビマブの適応は、他の抗体医薬と異なり、SARS-CoV-2ワクチンの接種が推奨されていない、中等度から重度の免疫不全状態にある12歳以上の人々に対する曝露前予防となっている。これらのうち、2種類の抗体を併用する薬については、個々の抗体ごとの評価も試みた。

 中和活性は、感染性を有するウイルスを用いた、フォーカス減少法による中和試験(FRNT)により評価した。用いたウイルス株は、オミクロン株(ナミビアから日本に到着した旅行者から分離されたウイルス株)、野生株(2020年2月に国内で分離されたウイルス株)と、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株だ。

 オミクロン株を対象とした場合のFRNT50(50%のウイルスを中和する濃度)は、バムラニビマブ・エテセビマブとカシリビマブ・イムデビマブの場合、2種類の抗体を併用しても1万ng/mL超となり、もはや効果は期待できないと考えられた。バムラニビマブ・エテセビマブの場合には、野生株、アルファ株、デルタ株には有効だが、ガンマ株に対する中和活性は低く、ベータ株には無効と考えられた。一方、カシリビマブ・イムデビマブは、オミクロン株以外には中和活性を示した。

 チキサゲビマブ・シルガビマブのオミクロン株に対するFRNT50は255.86±45.31ng/mL、ソトロビマブの前駆体であるS309では373.47±159.9ng/mLで、引き続き有効と考えられた。しかし、これらについても、野生株を対象とした場合のFRNT50はそれぞれ、27.33±3.24ng/mLと3.42±0.92ng/mLで、デルタ株を対象にした場合も、111.43±58.22ng/mLと5.50±2.75ng/mLだったことから、オミクロン株に対する中和活性は、これまでの変異株に比べ低くなっている傾向が認められた。

 続いて、いずれもRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害する抗ウイルス薬で、米国でEUAを獲得し、日本でも使用が可能になっているレムデシビル(ベクルリー)とモルヌピラビル(ラゲブリオ)、およびコロナウイルスに幅広く存在する3CLプロテアーゼを標的とし、汎用抗コロナウイルス薬候補として開発途上にあるPF-00835231が、各ウイルス株の増殖を50%阻害する濃度を評価したところ、これらの薬剤は、どのウイルス株にも同様に有効であることが示された。
これらの結果から著者らは、臨床データでも同様の結果が得られるかはこれから検討する必要があるが、既存の抗体医薬と抗ウイルス薬の中には、オミクロン株に対しても効果が期待できるものとできないものがあることが示唆されたと結論している。

 原題は「Efficacy of Antibodies and Antiviral Drugs against Covid-19 Omicron Variant」、概要はNEJM誌のウェブサイトで閲覧できる。





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