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「ソトロビマブ投与後の耐性変異が明らかに」

TONOZUKAです。



ソトロビマブ投与後の耐性変異が明らかに

以下引用

豪州Sydney大学のRebecca Rockett氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に緊急使用許可を得ているモノクローナル抗体ソトロビマブ(商品名ゼビュディ)を投与された患者の一部に、ソトロビマブ耐性変異を獲得したウイルスが生じ、投与から最長24日後まで気道標本から増殖可能な耐性ウイルスが分離されたと報告した。結果はCORRESPONDENCEとして2022年3月9日のNEJM誌電子版に掲載された。

 ソトロビマブは、ウイルスの受容体結合ドメイン上にある進化的保存性の高い配列に結合することにより、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含む既知のサルベコウイルス亜属全てに対して中和作用を示すと考えられている。しかし、単一のエピトープを標的とするモノクローナル抗体は、ウイルスがこれに対する耐性を速やかに獲得する危険性があるため、使用には注意が必要だ。

 著者らは先に、受容体結合ドメインの中のS:E340K/A/VとS:P337L/Tといった変異が、ソトロビマブの中和活性を大きく低下させることを報告した。340番目のグルタミン酸→リジン、アラニン、バリンに換わる変異と、337番目のプロリン→ロイシン、スレオニンに換わる変異により、ソトロビマブの中和活性は100分の1~297分の1に下がっていた。

 今回、デルタ株が主流になっていた2021年8月~11月にニューサウスウェールズ州の医療施設で、ソトロビマブを投与された連続する100人の患者を対象に研究を行った。このうち68人は、治療後にPCR検査が行われていなかった。ソトロビマブ投与から10日超にわたって、RT-PCR検査で陽性が続いていた患者は23人いた。うち8人の患者(患者標識番号R001からR008)から、ソトロビマブ投与前と投与後の気道標本が得られた。8人は全員が入院して治療を受けており、R002はICUに入院してECMOの装着を受けていた。

 PCR検査で陽性と判定された気道標本をvero E6細胞を用いて培養し、細胞変性効果を指標にSARS-CoV-2の分離を確認した。また、tiling PCR法を用いて、気道標本から抽出したRNAからSARS-CoV-2ゲノム全体を増幅させ、配列を決定した。

 ゲノム解析の結果、8人中4人(R001からR004)から採取されたウイルスには、ソトロビマブの投与6日から13日の間に、受容体結合ドメインに既知の耐性変異が生じていた。4人全員からS:E340変異が見つかった。R001からは、S:E340KとS:E340Aが、R002からはS:E340Aとマイナーな変異であるS:P337Lが、R003からはS:E340Kが、R004からはS:E340KとS:E340AとS:E340Vが検出された。

 読み取った受容体結合ドメインの配列に変異が含まれている頻度は、R001では、ソトロビマブ投与から6日後から23日後まで、S:E340Kが51~69%、S:E340Vは30~49%の範囲だった。R002では、投与から13日後にS:E340Aが、R003では7日後にS:E340Kが、R004では37日後にS:E340K が占める割合が75%を超えていた。

 これらの患者から採取した気道標本を用いたウイルス培養では、この変異を有するウイルスは、ソトロビマブ投与からそれぞれ23日後、24日後、12日後、15日後まで分離され、感染力が持続している可能性を示した。

 これらの結果から著者らは、ソトロビマブはオミクロン株にも有効な数少ないモノクローナル抗体であり、治療失敗と抵抗性を獲得したウイルスが感染拡大するリスクを最小にとどめるために、ソトロビマブを投与された患者は、分離されるSARS-CoV-2のゲノムを監視する必要があると述べている。

原題は「Resistance Mutations in SARS-CoV-2 Delta Variant after Sotrovimab Use」、概要はNEJM誌のウェブサイトで閲覧できる。



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