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全て、貴方のせいです。 第12話

概要

 虚栗はブログに遺書を残し、自殺した。その後、妻がブログを更新。そこには、殺人の告白が記されていた。

Gift

 私は、リサ・ビルギット・ホルストと申します。このブログ・SWAN SONGの著者である虚栗の妻で、ドイツ人です。
 夫は先日、亡くなりました。このブログに遺書を遺して。

 その際の記事、『SWAN SONG.』というタイトルの意味はなんでしょうか?
 辞書を引用します。

〔芸術家などの〕最後の作品[舞台・活動]◆【語源】伝説上の白鳥の歌から。ドイツ語のSchwanengesangを英語に訳したもので、1831年に英語の文献に初めて現れた。
・This film was his swan song. : この映画は、彼の最後の作品となりました。
〔伝説の〕白鳥の歌◆白鳥は普段は鳴かないが、死を前にして美しい歓喜の歌を歌うという伝説。いずれも事実と異なる。

https://eow.alc.co.jp/search?q=%22swan+song%22#:~:text=%E3%80%94%E8%8A%B8%E8%A1%93%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%AE%E3%80%95%E6%9C%80%E5%BE%8C,%E3%81%AE%E4%BD%9C%E5%93%81%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

 この記事以前から、精神を病んで自殺をほのめかしていました。

 そして1週間後に、亡くなったのです。
 ここで初めて、遺品整理の中で夫のスマホを触り、ブログを閲覧しました。そして、読者の方に報告させてもらいました。
 それが、『旦那が自殺しました』です。

 夫の死について、詳細は書きませんでした。ちょうど病んでいたから、自殺という事にしたのです。しかし、仕事関係者などの現実に付き合いある方に対しては、『食中毒で死んだ』という事になっています。
 どういう事なのか、説明しましょう。
 このブログを以前から読んでいる方ならご存じかと思いますが、夫はかなりの大食いでした。心の病気になってからは、過食がみられるようになったのです。
 その日も夫は、私が作ったパスタを特盛で食べていました。ナスがふんだんに入ったミートソースを、いっぱい口に含んで。
 そのナスは、私がレンタルサービスの畑を使い、育てたものです。スーパーで売られているものとは、育て方が違いました。
 毒を持つナスに育てたのです。
 どうやってやったのかって?
 方法は簡単。接ぎ木の台木に、チョウセンアサガオを使うだけ。すると、チョウセンアサガオの毒性がナスにも移り、毒ナスが出来上がる。
 まさかナスを食べて死ぬなんて、誰も思いません。夫はなんの躊躇いもなく、胃へ流し込んでいきます。
 それを見ながら、私も一口。
 夫婦で食事をしておきながら、妻だけ全く何も手に付けないのは不自然です。あくまで事故を装う為、致死量に至らない程度の量は、食べる必要がありました。そうする事で、疑いの目を避けたのです。
 数十分後、夫が倒れました。私も意識が朦朧としながら救急車を呼び、スマホを持ったまま気絶してしまったみたいです。
 次に目を覚ました時には入院していました。
 そこで夫が死んだ事を聞いた時は、口角が上がりそうになるのを抑えるのに必死でした。
 その後に、食中毒の原因について調査されました。
 食卓の上に残された、ミートソーススパゲティ。その中にあるナスから毒が見つかり、これが死因である事はすぐさま特定されました。そして、その事は警察から尋ねられましたが、こう返してやりました。
 「チョウセンアサガオを接ぎ木に使ったせいだと思うが、まさか毒が移るなんて思わなかった」ってね。
 容態が落ち着いて退院し、今はこうして呑気に暮らしております。

 さて、貴方は、私が出した問題を解けたでしょうか?
 いや、謎解きが始まっていただなんて知らないでしょうね。
 ブログの書き手が変わった事を不思議に思う人はいたかもしれませんが、深くは考えないでしょう。
 そもそも、私は誰なんでしょうか?
 何が嘘で、何が真なのか。貴方に分かりますか?
 このブログ、最初の記事にこう書いてあります。

私は覆面作家になった。学生としてではなく、サラリーマンとしてでもなく、主婦としての顔も使わない。一切の素性を明かさずに、執筆活動に勤しんでみよう。

https://note.com/kingofwriter/n/n9849401ef494

 私は最初から、存在しないのです。

 人は見たいように世界を見ている。自分が理解できる範囲の世界しか見えていない。

 貴方には、何が見えますか?

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