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ウェルビーイング(持続的ないい感じという幸せ)⑤ ~ 価値観を転換する(結晶性知能・年齢を「」に入れる・BEINGの価値を見出す)と生きやすくなる         

「ウェルビーイング」と言う概念・言葉を最近知りました。
 WHO(世界保健機関)憲章の前文に出てくる言葉です。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態であること」とされています。

 宝くじに当たった!行きたかった〇〇へ、旅行した!出世した!というのは瞬間的な幸せになります。言葉にすれば「ハッピー」
 
 ウェルビーイングは、どちらかというと「持続する幸せ」と言えるかもしれません。ハッピーと言う瞬間的、短時間に得られるものとはちがい、「体も心も元気で、社会との関係も良い状態、それが続いている状態」と言い換えられます。
 
 「幸せになりたい」という時、今までは漠然としたイメージしかありませんでした。
 そして、CMやSNSなど、外から入ってくる情報から、何となく流行っているものを手に入れたり、その場の刹那的な楽しさを求めていたりしました。その時は強烈な喜びも感じましたが、すぐに、「何か足りない」「もっと他にはないか」「次の幸せを・・」という感じで、「もっと、もっと」と際限がありませんでした。

 いつしか、「不足感」「心の空虚さ」だけが大きくなっていく感じでした。

 そう、「ハッピー」なことばかりで人生を埋め尽くすのは難しいです。
 そのかわり、強烈な喜びはないかもしれませんが、「なんとなくいい」「気持ちが軽い」「満たされている、感謝の気持ちがあふれてくる」状態なら自分の見方や考え方をかえたり、生活の工夫改善をしたりすれば、お金や周りの人間関係に左右されずに、感じることもできます。
 そんな、ウェルビーイング(持続的な幸せ)を高めていく考え方や工夫を紹介したいと思います。
 よかったら、お付き合いください。 


 アジアなどのスポーツ大会では「エバーオンワード~限りなき前進」「より速く、高く、強く」と言う内容の言葉が掲げられます。
 
 1秒でも、1mmでも、これまでの記録が更新されると「人間の可能性のすごさ」を目にして感動しますし、「よ~し、私も」と鼓舞される気持ちになることもよくあります。それはそれで、素晴らしいことだと思います。
 
 しかし、この言葉の考え方、価値観~

進歩、上昇志向~は、会社でも学校でも、そして家庭でも、あらゆる社会の中で、知らず、知らずのうちに「人生の前提」になっています。

 例えば、

 会社ではよく売り上げなどが「前年比」等にも表され、今年は去年より良くしないといけない、そして、来年は今年よりもさらに大きく、高くのばしていかなくてはいけない空気がつくられます。

 子供たちも、学年が上がるごとに、前の学年より賢くなっているはず、もっとできるようにならなくてはいけない・・・と「成長」を求められます。
 
 この流れに乗っていける時は、目標をももち、モチベーションも上がりますし、
 
 進歩、成長、伸びていく成績に楽しさも感じられます。
 しかし、毎年、毎日、成長できるわけではありません。
 生きていれば、いいことも、悪いこともあります。
 スポーツ選手だって、「スランプ」の時があります。
 年齢を重ねれば、「できない」ことも出てきます。
 会社だって、常に右肩上がりではありません。むしろ、長く続いている会社ほど、業績不振の時があり、そこを新しい発想、技術、方法で乗り越えることで、新しく生まれ変わって、再出発しています。

生きづらさを感じたり、会社で「不正」が行われたりするもとに、この「限りなく進歩していく」「右肩上がりの成長」という前提に縛られていることがあるのかもしれません。

 ある調査で「あなたは100歳まで生きたいですか」と言う質問に65%ぐらい人は「生きたくない」と答えました。
 逆に「100年生きた人だけを研究している」方によると、「100歳以上の人達は、100歳を超えて幸福を感じやすくなった」と答える人が多かったそうです。
 年齢を重ねて「できなくなったこと」ばかりに意識が向くと生きづらく、不幸を感じやすいですが、

100歳になると「100歳でもまだ歩ける」のように、「できること」「今あること」に注目するから幸福を感じやすいのではないかと考えられます。

 成長や進歩を目指す「もっと~」という価値観は、ある意味、「今」「現状」を否定します。
 
 今、~ができていないから、もっと~できるように。
 今、~が足りないから、もっと~を得たい。
 人と比べて、自分は~だから、~しなくてはいけない。
 
 特に人生の前半は、この価値観に対して、「頑張る」ことで生きる張り合いもあるかもしれません。
 自分をよりよく磨くことにつながるかもしれません。
 しかし、身体障害や発達障害で、周りの人と「同じようにできない」人だっています。
 
 人生の後半になれば、若い時のようにうまく体が動かないことも増えます。思い通りにいかないことだって、あります。
 
 そこで、価値観の転換ができないと苦しいし、生きづらさを感じやすくなるのではないかと思います。
 
 では、どんな価値観があると、生きやすくなるでしょうか?
 次の生き方につながるでしょうか?
 
 価値観の転換として、次のようなヒントがあります。
 

➀結晶性知能は上がっていく。

 知能について「流動性知能」と「結晶性知能」の2つが対比されることがあります。
 流動性知能は、計算や暗記力など、いわゆる学校の勉強に関わるもので、18~25歳がピークで、40歳以降からがくんと落ちると言われています。
 結晶性知能は、経験や学習から獲得していく知能で、20歳以降もゆるやかに上昇します。

 
 年を重ねると、流動性知能は落ちていきますが、結晶性知能はむしろ、経験や学習が増えるほど、伸びていくと言えます。
 ある意味、好奇心をもって、新しいことにチャレンジしていくと、鍛えられます。
 
 年齢を重ねると身体的機能や力は落ちていきますが、この「結晶性知能」を基にした総合的な判断力は上がっていきます。
 
 若い人は、経験が浅く、自分の思いだけで突っ走るところがあると言われます(若気の至り)。
 しかし、年齢を重ね、様々な経験を積むことで、全体の事を含めた俯瞰的な見方もできるようになります。長老的な人の一言、アドバイスに重みがあるのは、結晶的知能が高まっていて、経験の浅い人には思いもしない視点から言葉を発するからです。

②新しいことを始める~自分の成長を楽しむ 

 結晶性知能は、経験や学習を積み重ねないとのびていきません。
 なので、いつもと同じことを繰り返すのではなく、新しい事へチャレンジして、さまざまな経験をすることが重要と言えます。
 新しいことにチャレンジする時に大切だなと思うのは、年齢を「 」に入れるということ。

「この年で~は・・・」
「今さら、初めて何になるの」
「今の年じゃ、むりだ」

と年齢がネックとなって一歩を踏み出せなくしてしまうことが多くあります。
 でもそこは「 」に入れて、「●歳だからできない」ではなく、始めるのに年齢は関係ないという視点を持つと動きやすくなります。

 実際、晩年、文化庁長官を務めた臨床心理学者の河合隼雄先生は、定年退職された後に、フルートを再び習い始め(フルートの先生に指事し)、その後、演奏会を開くまでになっていました。
 
 私の知人も、退職された後、地域の歴史研究を進め、今では「研究会」を立ち上げ、公民館などで講演されています。
 
 また、別の知人は、二宮尊徳(金次郎)をずっと個人で研究されていて、全国の小学校などを巡って、二宮金次郎の銅像があるかなどを取材して、成果を発表されてもいます。 

自分の好き、興味を出発点にして、深めていくと新しい世界がどんどんと広がっていきます。そして、そこに優劣の差はありません。

 外の基準に合わせて、求められる形で自分の成長を考えると、きりがありませんし、苦しくなります。
 しかし、自分の楽しみを基にして、どんどんと新しい世界を広げる、自分の新しい顔を作っていくというイメージで進むと楽しさが増します。

③やれることを数える。同じことができることも立派な事。

 前記で100歳の人の幸福度が高いのは、「100歳なのに~できる」という見方が増えるからではないかという仮説を紹介しました。
 もとになっている見方、考え方は

「できることを数える」
「あるものに注目する」

ということ。
 
 ある和傘を作っている職人さんに話を聞いたことがあります。
 職人としてご自身が大切にされている事として、
 
 美術館に飾るような、世界に一つだけの高価な価値がある物をつくるのではなく、どんな時でも、一定水準の質を保った傘づくりを心がけている。
 
と言っていたことが印象的でした。
 
 傘を手作りされていますが、その日の気候や自分の体調に左右されない、逆に言うと体調が悪くても、同じような傘を作り続けられる技術を保つことの大切さが伝わってきました。
 そして、「いいものをどんどんと作る」という右肩上がりの成長ではない、微妙な違いはありつつも、一定水準の味わいのあるものを創り出すという別の価値観に触れた思いがしました。
 

④BEING(ビーング)に価値を見出す。

 もっと、よりよく、どんどんとプラスを足していく西洋的な価値観は、「DOING(ドゥーイング)」の価値観ともいえます。
どんどんと行動して、結果を出していくことにより価値が置かれています。

 ただ、行動できなくなった時の、常に何かしなくては、より良くしていかなくてはと言う焦り、落ち着きのなさとも隣り合わせです。

 そんな時「BEING」の価値観も認めていくと、バランスが取れます。
 行動しなくても、存在するだけで、そこにいるだけで、実際、周りの人に実に大きな影響を与えています。
 
 会社でもチームでも、口数は少ないのに、その人がいるだけで、グループ全体に締まりが出る、ピリッと引き締まる、逆に、明るい雰囲気が広がるという人がいます。
 また、年齢を重ねると昔と同じことはできないかもしれませんが、いい歳の重ね方をしていくことを、身をもって示すことは、これから生きていく人のモデル、憧れの存在になるという見方だってあります。

 そんな価値観で生きたら、歳を重ねる事にも別の価値を見出せるのではないかとも思います。
 
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです。

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