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いまどきの社長(第8回)

1996年6月、沖縄に向かう飛行機の中でのことです。営業のコンサルをする珍しい公認会計士であったことから、当時は全国で講演をしていました。この日は沖縄の公認会計士協会に呼ばれて、那覇でセミナーです。

乗っていたのは当時のジャンボジェット。両窓側に3席、中央に4席の横10席が並んでいます。進行方向に向かって左からA、B、C…と席番が振られています。私が座っていたのは通路側のC席です。すると、通路を隔てたD席とE席のビジネスマン二人の会話が耳に入ってきました。
「インターネットはすごいねー。アメリカでは地ビール会社がインターネットで世界中の投資家から資金を集めたんだってね…」と、話題にしていたのは、インターネットを使ったファイナンスでした。

この地ビール会社は、スプリングストリートブルーワリー。その話は私も新聞報道で知っていました。証券会社を通さずに世界で初めてインターネットでダイレクトに株式を募集して資金調達に成功した非上場の会社です。ディスクロージャーを徹底し、財務諸表には公認会計士の監査を受けた上に、米国SEC(証券取引監視委員会)からノンアクションレターといういわばお墨付きまでもらって募集したのです。

隣の会話を聞きながら、ふと思ったのは、「どうして、これは日本ではできないんだろう?」という疑問でした。いや、できないんではなくて、やろうとする人がいないだけなのでは?実際、日本の証券取引法は、自社の株式の募集を禁止しているものではありません。だったら当社、ディー・ブレインでやってしまおう。といってもディー・ブレイン自身の資金調達ではありません。ディー・ブレインのクライアントの中小企業の資金調達の支援をインターネットでできるのではと考えたのです。

「インターネット・ベンチャー投資マート」と名付けたその仕組みは、中小企業の事業計画や財務情報、経営者情報などをWEBサイト上で開示して、株式募集で、資金調達を図るものです。財務情報には仲間の公認会計士が監査をつけて客観性を高めます。
この企画に日経新聞のK記者も目を輝かせました。記事は、1996年9月10日の日経ベンチャー欄のトップに掲載。サイトは、9月18日にオープン。当社のクライアント2社の情報が開示され、大反響となりました。東洋経済、ダイヤモンド、日経ビジネスなど主要なビジネス誌からの取材依頼も殺到。仕組みはまさに今でいう「株式投資型クラウドファンディング」。その世界の草分けであったとも言えましょう。(つづく)


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