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いまどきの社長(第7回)

1996年1月の日曜日。私は町田の駅前にあった大正堂という家具店にいました。日経新聞の取材があるのは翌日の月曜の朝10時です。しかし部屋は3人机を並べていっぱいで、記者の座る隙間もない。そこで急遽、不動産会社を通じて大家さんに連絡。ちょうど空いたばかりの隣の20畳ほどの大きめの部屋に移らせていただくことにしました。ただ記者が来てもソファーもないのでは…ということで、家具店に来たというわけです。30万円ほど。やや高級感ある応接セットを購入。その日のうちに届けてもらいセッティング。なんとか部屋らしくなりました。

月曜日。この応接セットに座った最初のお客様が、日経のK記者です。翌週には、「経営コンサルティングの代理店制度をスタート」のタイトルの記事が、日経産業新聞に掲載されました。ディー・ブレインとして初めての掲載記事です。
記事掲載は、嬉しいことでしたが、それ以上に、k記者が帰り際に言い残していった次の言葉が耳に残っていました。「面白い記事になりそうな情報があったら、いつでも連絡ください。FAXで送ってくれればいいですよ。」

そこで私は記事にしたら面白そうな新しいビジネスのアイデアを記者に送ることにしました。テーマはやはりインターネット。ディー・ブレインでは実験サイトを次々に開設。それを記事調の「プレスリリース」にしてせっせとK記者宛てに送りました。

例えば、通販サイトの「ウェルディー」。富裕層向けに普通のDMの通販をしていたウェルネットと業務提携。扱っている商材をネットに掲載して販売するところからスタート。さらに、売りたい商品を広く募って写真撮り。町田市の商店街の有線放送で商品募集の広報もしました。ウェルディーの事業開始は1996年6月。楽天の事業開始の10ヶ月も前のことです。ウェルディーの記事も日経産業新聞に掲載されました。

初めて日経新聞の本紙に取り上げられたのが、「営業マンのカウンセリングルーム」の記事。営業コンサルティングのノウハウを生かしたネット上のこのサービスサイト。営業マンが質問に答えていくと、自らの営業力が評価できるといった仕組みです。
質問は「あなたはどんな意識で営業先をほうもんしていますか?」の質問から始まります。答えは3択。a. 営業先に何とか役立ちたいと思っている。b.自分の商品やサービスを何とか売り込みたいと思っている。c. 上司に言われるまま、何も考えていない。…
いくつかの質問に答えると、「あなたの営業の現状は…」といった営業の現状分析と改善提案の回答が出てくる。さらに、具体的に営業成績をあげようと思ったら、このようや自己管理シートを使ってみてください、と第 回で紹介した「重点営業先抽出シート」や「営業行動設計シート」など、ディー・ブレインのオリジナルの営業管理ツールが紹介される仕組みとなっていました。

日経に記事が掲載されたこともあり、「営業マンのカウンセリングルーム」は1万人近く利用者を獲得。インターネットがまだ普及していない当時としては驚きでした。
このサイトは、基本、無料。
ただ、最後の方に「より詳しく指導を受けたい方はこちら」というボタンがあります。
クリックすると、コンサルタント(つまり私ですが)が個別の相談に応じるという仕組みで、こちらは有料でした。
ところが、有料の相談は一件も来ない。
インターネットをビジネスにするのは、まだまだ難しいものでした。(つづく)


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