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『甲子園カレーでリズムを作る』

20230611

 私はスポーツ観戦が結構好きだ。
サッカーや野球はもちろんのこと、卓球やバレーボール、アイスホッケーなど自分が実際にやることのないスポーツでも見るのは好きだ。

野球に限った話で言えば、高校野球もよく見てきた。
春夏の甲子園は、用事がなければ、家でテレビをつけてなんとなく見ていることが多い。特別どこかの高校を応援しているわけでもないし、毎年の注目校や注目選手もなんとなくしか知らないが、なんとなく見ている。

その中でも、私が少しだけ注目しているのは、チーム紹介のVTRである。NHKの高校野球中継では、試合前にそれぞれの野球部のキャプテンがチームの特色をハキハキとカメラに向かってしゃべり、そのあと皆でカメラの前に出てきて高校球児の腹の底から出す、あの低めの声で「がんばるぞ!おう!」とか「絶対勝つぞ!うおおおーーーー!」(カメラに全員で近寄ってくる)みたいな演出付きの10秒くらいに編集された映像が流れる。
高校球児の初々しさもさることながら、姿勢よく胸を張ったキャプテンのチーム紹介はとても頼もしい。

 しかし、何年も様々な高校のチーム紹介映像を見てきた私は、とある発見をした。

ほとんどすべての主将が「守備からリズムを作る」と声高に宣言するという点だ。


「僕たちは、ピッチャー○○の粘り強い投球と全員守備でリズムを作り攻撃につなげて、、、、」

「私たち△△高校は、守備からリズムを作り全員野球で、、、、」

「私たちは、粘り強い守備からリズムを作り、攻撃ではつなぐ野球で、、、、」

とにかく守備からリズムを作る高校が大半だ。

「守備からリズムを作る」が意味するところを推測すると、おそらく、良い守備でチームに弾みをつけて、良い攻撃につなげていこうみたいなことだと考えられる。

しかし、守備からリズムを作ると言い切ってしまうことは多少のリスクを伴うように思う。

そもそも、守備からリズムを作るということは、1回表の攻撃はどのような気持ちで臨んでいるのだろうか。1回表の攻撃は守備を経ていないうちに攻撃をしなければならないことになり、守備からリズムを作りたいチームにとっては少し不運である可能性が高い。
内心では、(ちくしょう、先に攻撃かよ、守備から入りてえのに、いきなり攻撃だとテンポ狂っちまうよ。俺達は守備からリズムを作るスタイルで野球やりてえのによお。)とか思っているかもしれない。

また、「守備からリズムを作る」とお互いのチームが宣言していたのに、スコアが8対6とか12対9とかだと、あれ?どっちのチームも攻撃からリズムを作り出してるんじゃねえか?守備はどうしたんだ?とか思ってしまう。

 実は、私は一度だけ甲子園に選抜高校野球を見に行ったことがあるのだが、一緒に見に行った友達に、
「高校野球では守備からリズムを作るチームが多すぎない?」
と聞いてみたら、その友達は、
「おれは飯からリズムを作る」
とか言ってまだ午前中の試合なのに甲子園カレーなるものを買ってきて、がっついていた。

「飯で何のリズムを作るの?」とか「リズムの作り方を聞いたわけじゃないんだよ」とか、一瞬で言いたいことが僕の頭の中を駆け巡ったが、あまりの食べっぷりを見て、「なるほど」という訳の分からない返事をしてしまった。

また甲子園に行ってみたい。


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