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「 病院食について語ってみた…その1 」ボニさん通信 No.14

ハーイ!ボニさんでーす!!
ボニさんの長ーい調理師人生 ( 約35年 ) の中でも一番多くを占めるのが病院での調理です。

みなさんの病院での食ってどうですか?
たぶん「味が薄い」とか、「おいしくない」とか、あまり良いイメージはないですよネ?
それでも、入院患者さんたちのために朝早くから各病院の調理員さんたちが頑張って食事を作っていることだと思います。


ボニさんの病院調理の話し

病院食のイメージです

ボニさんも数年前までは病院で調理を行っていたので、そんな時々の体験を語ってみたいと思います。


病院調理とは


まず、病院で入院患者さんに食事を提供することも給食と言い、栄養科と言う医療技術部に属している専門の部門です。

医療技術部には、レントゲン科、リハビリ科、薬局(もっといろいろあって奥が深い)などがあり、その中に栄養科はあって、食事療法を通じて患者さんたちの回復を助けて健康を取り戻してもらうことが目的です。


病院調理の実状


食事療法は医療の中でも最も古い技術のひとつでもあります。そんな栄養科の運営にも大きく分けて2つありますが、1つは病院自体がすべて運営するのと、もう1つは給食専門の業者に委託するのがあります。

どちらも病院の考えだし、良し悪しはあるとは思いますが、ボニさんの経験上では、病院自体が運営している方が良かったと思います。

病院給食は入院患者さんから1日分のお金と国からの患者さんに対して出る補助金でまかなわれています。その中から食材費や人件費をまかなわないといけないので、どこの病院もやりくりは大変だと聞きます。

だから、1食○○円と定額で請け負う給食業者に切り替える病院が出てくるのです。給食業者は営利企業なので病院の厨房(現場)で調理をしない人ー営業、事務員、エリアマネージャー、スーパーバイザー、課長、部長、所長、常務、専務、社長に会長とかーがいるわけです。そんな人たちの分の人件費も患者さんからいただくお金と国からの補助金を合わせた、1人○○円と決められた金額からまかなうわけですよ…!

そうなるとどうなるかですが、病院が独自で運営していた時よりも、食材の質を落として安いものを仕入れたり、厨房 ( 現場 ) の調理員たちを正規採用の人数を減らしてパート採用を増やす。または給料を減らすということをするわけですネ…

そうなると働く調理員たちの士気は当然下がるし、働いていても楽しくない、楽しく調理できないと出来上がる料理はおいしくならないし、食材の質は下がっているから当然おいしくない料理が出来てくる…という悪循環、負のスパイラルになるわけです。


最後にもらった手紙

手紙のイメージです

そんな中でもボニさんは毎日患者さんたちのために少しでもおいしい料理を作る努力をしてきました。

でも、頑張っても頑張っても様々なアクシデントがあって、注意されることや「患者を死なせる気か!?」と強く怒られたことがあります。

ですが、今でも忘れられない手紙があります。
その人は末期の方でなかなか食事が食べられない方でした。昨日、軟菜食だったのが今日はキザミ食、次の日はペースト食、そしてミキサー食になり、とうとうゼリーだけになってしまい、食事を管理していた栄養士も「ひと口でもいいから食べてくれたら…」と困っていました。

ゼリーだけ出すようになってしばらくしたある日のことです。栄養士がメモを見せてくれました。

そのメモには「厨房のみなさんへ こんな私のために毎日ご飯を作ってくれてありがとうございました。あまり食べることはできなかったけど、おいしかったです。」そう書いてありました。
その手紙を見せてもらった2日後にその患者さんは旅立ってしまったのです。

患者さんから食事を作るボニさんたちに手紙をもらったのは初めてでした。今まで、食事を間違えたり、時間に間に合わなくて注意されたり怒られることしかなかったのですが、初めて「ありがとう」と言われたのです。

病院というところは元気になって家に帰ってもらうためにあります。
しかし、中にはそれが叶わない方がいるのも現実で、ボニさんたちのように病院で食事を作っているとそれが良くわかります。

病院では元気になって帰るのも退院だし、旅立ってしまうのも退院です。食事内容のステージが上がって普通食に近づいた患者さんが退院と聞くと喜ばしいですが、食事内容のステージが下がっていって普通食から遠ざかっていった患者さんが退院と聞くと残念でなりません。

そして、あの手紙を見てからボニさんは「自分が作った料理が入院していた誰かの最後の食事になるのかもしれない」と考えるようになりました。
ボニさんが作った誰かの最後の食事がおいしかったと思って旅立ってくれたらいいな~と思って病院で料理を作るようになりました。


病院調理のイメージ

ボニさんは時々、後輩から「どうして病院で料理しているの?」「普通の料理屋やレストランで料理した方が稼げるんじゃない?」と聞かれたことがあります。
そんな時にボニさんは「料理屋やレストランで料理を作ってもおいしくて当たり前で、まずかったら怒られる。おいしい料理を作ったらお客さんは感動するかもしれないけど、別のおいしい料理を食べて感動したら、ボニさんの料理は上書きされて忘れられちゃうんだよ!でも、病院の料理はおいしくないのが当たり前だから、おいしい料理を出したら感謝されるんだよ!そして感謝の気持ちは忘れないから感謝される方がいいじゃん!」と答えます。
そして最後に「だから、どうせ料理を作るなら、感謝される料理を作れる料理人になろうぜ!!」と言うとだいたい後輩の目が変わります笑

普通の料理屋やレストランでもそうです。感動の先には感謝があるのだから、ただ感動する料理ではなく、感動の先に感謝される料理を作らないといけないと思っているのです。

またまた長くなってしまったので、その2に続きます。

Adios!

ボニさん通信 No.14






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