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市場動向の確認と経済ニュースの注目点(6/16~6/22)

割引あり


 

<マーケットチェック>


金融政策の影響を受けやすい展開が続いていますが、来月初めにかけて英国(7/4)、フランス(6/30に第1回投票、7/7に決選投票)、日本の東京都知事選挙(7/7)と政治のイベントが続きます。各国とも与党の苦戦が伝えられており選挙後の枠組みにも注目です。
 

株価


今週は米国小売統計が明確に下振れたことで金利が明確に低下傾向となりました。米株を見ていると「Bad news is Bad news」になり始めていますが、これはインフレに対する懸念が低下しているステージではいつものことで、インフレが鎮静化した後は「景気がどうなるか」に市場の関心は移ると考えられます。

現在のように金融環境をタイトに保ち続けると、いつかは雇用に影響が出るつまり景気が崩れる可能性が出て来るので、Fedも利下げを考え始めます、FOMCではDotsは年内1回示唆でしたが、これはCPIを見る前の予想であり、マーケットは緩和を遅かれ早かれ織り込むでしょう。

基本的には金利低下、景気はソフトランディングがメインシナリオなので、株指数は日米ともに上との見方が増加すると思いますが、シクリカル株に対しては弱い経済統計にセンシティブに反応してくる可能性もあります。

日本株に関しても個人的には押し目買い目線の人が多いとは思いますが、テクニカル的には教科書通りのデットクロスを形成している事には注意が必要です。需給的には配当再投資や四半期末リバランスは買い方向に作用しそうな一方で、ETF分配金売り等も意識され始めるでしょうからまちまちな状態です。

こういった局面では上下に振られた局面でそれをサポートする意見が大きくなりがちですが、出来るだけ視線を長期に持って短期の値動きに一喜一憂しない様に気を付けることが大切です。

また、今は株主総会シーズンです。機関投資家は名義株主ではないため原則として株主総会には出ることが出来ません。株主総会は個人投資家が機関投資家に対して優位性を持つ情報源の1つなので是非いろいろな情報をキャッチしてもらいたいと思います。

もう1つ、今週はTOPIXの見直しに関するコンサルテーションの開始が始まりました。この変更は、それによって指数のパフォーマンスにはほとんど影響がないと考えられる一方、直近のデータを用いると35銘柄が新規にTOPIXに追加され、1032銘柄が削除されるともされており、そこに該当する銘柄に関しては大きなインパクトが出ると予想されます。移行は2026年10月から2028年10月にかけて段階的に行われるためまだ先ではあるものの、企業の対応などを良く見極めていきたいと思います。
 

金利

金利は7 月会合で決定される国債買入れの減額計画がどの様なものになるのかを予想しに行くことになるでしょう。「市場混乱を発生させない市中残高の増加ペースとする」、「先行きで供給される金利リスク量を投資家が吸収可能な範囲に留める」という2点がポイントとなります。日銀は7月会合後に月間買入れ額を5兆円まで減らして様子を見、その後四半期ごとに段階的に減額していくと考えられています。

最終的な買入額が3兆円となる場合、10年以下の市中残高が前年比+40~50兆円程度のペースで増加していくことになりますが、銀行はQQE導入後の市中残高減少ペースは年間▲40兆円程度だったことからポジションの縮小ペースと同じような拡大ペースとなれば無理はないと考えられている様です。

一方、市中国債を吸収していくのは銀行が主体ですが、昨年 6 月に行われた「国の債務管理に関する研究会」では、銀行の有価証券投資に係る規制を考えると、国債購入余力は日銀保有国債の 3割前後であるとしており、目先2年間は国債買入額を3兆円程度で維持し、2025年度末までの市中国債残高の増加額を100兆円程度に留める可能性が高いと見られている様です。つまりドラスティックなタイトニングは困難という事です。
 

為替


日銀のスタンスは金融引き締め方向に動いており、日本は金利引上げ方向、米国は短期的には利下げが先延ばしになっていますが、いずれにしても米国は金利引き下げ方向という見方は変わっていません。

しかし、日米ともに市場が当初予想したペースよりもスローという事だと思います。

これまでも述べている通り、為替には安定した価格決定理論はなく、一度関係が崩れると動きが急速に大きくなることには注意しておいてください。為替以外の市場を見ていると、日本最悪シナリオとはなっていないように見えます。
 
 

<注目したニュース記事>

6/16日経 G7に「政治空白」リスク

<要約>
15日に閉幕したG7サミットでは、ウクライナを侵略したロシアや軍備拡張を進める中国への対処が話し合われた。G7はロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援、中国の海洋進出への強い反対を表明した。

岸田文雄首相はウクライナ支援の継続と中国の過剰生産問題に言及し、インド太平洋地域の安全保障の重要性を強調した。しかし、G7の一部首脳は大型選挙を控え内政を優先せざるを得ず、自国第一主義の台頭リスクがある。

G7の政治空白を見透かし、中国とロシアはBRICS会議を通じて新興国の取り込みを図っている。ロシアのラブロフ外相はBRICS拡大を多極的世界秩序の形成と主張し、中東問題も利用している。

G7も新興国との連携を重視しているが、イスラエルとハマスの停戦に関して一致できず、中ロに隙を与えている。

<河北コメント>
今年は政治の年です。既に、南ア、メキシコ、インド、欧州議会等で選挙が行われ、結果を受けてマーケットが大きく動揺するケースが相次いでいます。これらの動きは短期的なマーケットのノイズとも言えますが、中国とロシアなどの動きは、今後の世界の枠組みにも関わるため注意が必要です。


6/18日経 三井住友銀、年功序列を廃止

<要約>
三井住友銀行は2026年1月を目途に人事制度を大幅に改定します。これまでの年功序列に基づく賃金体系を廃止し、役割と能力に基づいた給与体系に移行します。これにより、若手社員でも高い給与を得ることが可能となり、デジタル分野の専門人材には5000万円の年収を提示することも可能になります。

具体的には、社員の給与は年次に関係なく役割に基づいて決定され、実績に応じて迅速な昇進が可能になります。さらに、中高年の社員についても51歳以降の一律減給を廃止し、実績に基づいて給与が決定されるように変更されます。

また、転勤のある総合職に対しては、転居の伴う異動の可否を選択できる制度を導入し、転居を希望しない場合は転勤を免除される仕組みを整えます。

この大幅な制度改定の背景には、業界の垣根を越えた人材の獲得競争の激化があります。三井住友銀行はこれにより、優秀な人材の獲得や引き留めを目指しています。

<河北コメント>
やっと銀行でも年功序列が廃止されることになりました。若い頃年功序列制度に耐えてきた世代にとっては微妙なところもあると思いますが、同時に51歳以降の一律減給を廃止し、実績に基づいて給与が決定されるように変更されるなどの配慮もあるようです。
労働人口が減少する中、適材適所で人材を有効活用する社会に変化する事が不可欠です。人材が流動化することになると、その恩恵を受ける企業が出て来ます。


6/19日経 エヌビディア、時価総額世界一に

<要約>
米半導体メーカーのエヌビディア(NVIDIA)は、2024年6月18日に時価総額で米マイクロソフトを抜き、世界首位となりました。この急成長の背景には生成AI(人工知能)技術の普及があり、エヌビディアはAI半導体市場のリーダーとしての地位を確立しています。

エヌビディアの時価総額は約3兆3350億ドル(約526兆円)に達しました。生成AIに使用される半導体の需要増が株価上昇を支え、同社は連日上場来高値を更新しています。特に、データセンター向けAI半導体でのシェアは約8割を占めると報告されています。

エヌビディアは1993年、カリフォルニア州サンノゼで設立され、主力製品であるGPU(画像処理半導体)は、当初3Dゲームのために開発されましたが、2010年代にAI技術に応用され急成長しました。同社は次世代半導体「ブラックウェルUltra」や「Rubin」などの開発計画も進めています。

しかし、エヌビディアの急成長には規制リスクも伴います。米司法省が同社の独占禁止法違反の可能性について調査を開始したと報じられており、政府当局による規制が今後の懸念材料となっています。

<河北コメント>
前回コンピューター・インフラの大きな提供企業が時価総額最大になったのは、ITバブル最中の2000年3月にシスコが1位になった時です。シスコは今回のエヌビディア同様に、マイクロソフトを抜いて、時価総額1位となりました。
エヌビディアはAI半導体のシェアを8割超握っており、競争相手や規制当局がその独占的立場を問題視し始めています。
当時シスコも支配的な地位を持ち、今のエヌビディア同様に、当時のシスコは産業全体が儲かるようになる前の投資ブームから恩恵を得ていた。シスコの株価はまだ当時の高値を抜けていません。


6/19日経 大手行貸出金、01年以降で伸び過去最高

<要約>
大手企業の資金需要が旺盛で、大手銀行の貸出金残高が増加しています。全国銀行協会のデータによると、大手5行の2024年5月末の貸出金残高は前年同月比6.2%増となり、過去最高の伸び率を記録しました。これには新型コロナウイルス禍のゼロゼロ融資の影響もありますが、それを除いても非常に高い成長率です。

全国銀行協会によると、大手5行(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行)の5月末の貸出金残高は233兆円で、過去最高を記録しました。

この背景には特に大企業では設備投資が活発化していることがあります。りそなグループでは中小企業向けの貸し出しが前年同月比2.3%増だったのに対し、大企業向けは10.5%増と大きく伸びています。日銀の調査では、大企業製造業の設備投資額が前年度比8.5%増と見込まれています。

ファンドによる大型M&Aも貸出金増加に寄与しています。例えば、米投資ファンドのカーライル・グループが日本KFCホールディングスを買収した際、三菱UFJ銀行や横浜銀行が資金を提供しました。また、ゴールドマン・サックスによる日本ハウズイングの買収でも大手銀行が融資を行う予定です。

一方、地銀や第二地銀の貸出金残高の伸び率は鈍化傾向にあります。地銀の伸び率は3.0%、第二地銀は1.9%であり、前年の伸び率と比べると低下しています。これは主に取引先の中小企業が多く、ゼロゼロ融資の返済が始まったことが影響しています。

大手銀行は自己資本利益率(ROE)の向上を目指しており、国内貸出に注力しています。金利上昇を見越して前倒しで固定金利での借り入れを行う企業もありますが、変動金利で借り入れる企業も存在し、金利動向に対する企業の行動は多様です。

大手銀行は積極的に貸し出しを行い、経済成長を支える一方で、今後の金利動向や規制リスクにも注意を払う必要があります。

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