ギドのミドル【はじめてレッズをみた日】#6
1997年シーズン序盤、浦和レッズは苦戦していた。
ここまでリーグ戦の成績は3勝6敗。ホーム駒場スタジアムではまだ1勝もしていなかった。3連敗中で迎えた駒場スタジアムでの柏レイソル戦は浦和サポーターのストレスがピークに達していた。
前半は浦和が果敢に攻めるも得点を奪えず、スコアレスでハーフタイムを迎えた。
そして後半開始早々、柏にゴールを奪われてしまった。また負けるのか…
どんよりとした雰囲気が漂ったが、まだまだ逆転の可能性は十分にある。
後半は浦和レッズの選手が浦和側のゴールに向かって攻めてくる。
みんなで手招きをして歌った。
ウ~ラ~ワ~ カモン カモン カモン!
ウ・ラ・ワ カモン カモン カモン!
ウ・ラ・ワ カモン カモン カモン!
ウ・ラ・ワ カモンッ カモンッ カモンッ!
浦和サポーターの気合がプレッシャーになったのか、柏は退場者を出してしまった。そして、我らが大将、ミスターレッズの福田正博が同点ゴールを決めた。ゴール裏のコールリーダーが叫ぶ。
ゲットゴーオル フクダッ!
それに呼応するように、みんなで両手を挙げて頭の上で交差させる。
オー オーオオ フクダッ!
ゲットゴーオル フクダッ!
オー オーオオ フクダッ!
ゲットゴーオル フクダッ!
そして試合終了間際に信じられないことが起きてしまった。なんと10人の柏が勝ち越しゴールを決めてしまったのだ。『出島』が盛り上がる一方でスタジアムは呆然として静まり返った。
しかし浦和サポーターは最後まで諦めない。もう一度応援を始めだした。
そして、ピッチにも最後まで諦めない男がいた。
背番号『6』、ギド ブッフバルトだ。
試合が再開されるとディフェンスラインの後方から鬼の形相で猛然と駆け上がってきた。柏ディフェンダーの隙間からギドをこの目ではっきりと捉えたとき、パスが回ってきた。
「打てーーーーっ!!」
叫んだときにはボールがゴールネットに突き刺さっていた。
駒場スタジアムは一瞬で沸騰した。みんな言葉にならない声をあげていた。
この感動を、この狂気を、この情熱を、表現できる言葉は存在しない。
スタジアムにいたものだけが体感できる特別な感情なのだ。
そのあとはVゴール方式の延長戦に入り、福田正博のVゴールで今シーズン初のホームでの勝利を掴み取ったのだった。
しかし、延長戦の記憶はほとんど残っていない。
それほどまでに、ギドのミドルシュートによる同点ゴールは鮮烈だった。
もし今、浦和レッズのベストゴールは?と問われれば、間違いなくこの「ギドのミドル」と答える。そして「ギドのミドル」を超えるゴールに出会うために、これからもスタジアムに足を運ぶのだ。
(おわり)
これまでのお話
#1 興味はなかった
#2 掲示板にすがる
#3 公衆電話で交渉
#4 待ち合わせは浦和駅
#5 これがホームというものか
記憶が曖昧なところは浦和レッズ公式HPより引用させて頂きました。
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