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英語&翻訳解説【Who the Cap Fit】


まず曲を理解する

リフの部分の鶏の鳴き声が印象的なこの曲のテーマは「警告」です。

土台になっているのは新約聖書の最後の晩餐(the Last Supper)です。

イエス(中央)の左側3人目がユダです。

イエス・キリストが十字架に掛けられ処刑される直前に弟子たちと最後の食事を共にした際、ユダ(Judas)を名指しにせずに、この中のひとりが自分を裏切ることになると語ったあの有名な場面です。

曲の中でボブは巧みな比喩表現を使って自分の利益のために他人を利用する偽善者や寄生虫に対して警告を発しています。

彼らは私欲のために我々に近づき、友のふりをして我々を利用し、苦境に立たされたら即座に我々を見捨てるだろう。

ことわざとパトワを駆使してボブはそう語っています。

繰り返し聴かずにはいられない謎めいた歌詞が魅力の知る人ぞ知る名曲です。

英語表現と訳し方

Eat and drink
直訳すると「食べて飲む」です。

一般的なフレーズですが、聖書に出てくる言葉です。

日本語版聖書(新共同訳)では「酒食」、「飲み食い」、「飲んだり食べたり」などと訳されています。

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テーブルを囲んで一緒に食事することは、聖書の民(ボブもその一人です)にとって共に集い、生きる糧を与えられていることを神に感謝する大切な儀式です。

Them su-su upon you
パトワです。

Themは標準英語のtheyに相当します。

Su-suは「うわさ話をする」、「陰口をきく」という意味のパトワです。

Who the cap fit, let them wear it
直訳すると「サイズが合う人に帽子を被らせろ」ですが、「批判に思い当たる節があれば自分のことだと思いなさい」という意味です。

英語圏で広く使われていることわざ的慣用句です。

一般的にはIf the cap fits, wear itと言います。

北米ではcap をshoeに置き換えて、If the shoe fits, wear itと言う人が多いです。

Cap

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「縁なしの帽子」を指します。

野球帽はbaseball capsです。アポロキャップとは言いません。

縁がある帽子はhatsになります。

ちなみにラスタが着用するドレッドヘアをすっぽりと収めるための帽子はrasta tamsと言います。

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Throw me corn, me no call no fowl
パトワによるジャマイカのことわざです。

Mi throw mi corn, but mi no call no fowlというのが通常の形だそうです。

英米式の英語に直すと、I threw my corn, but I didn’t call any fowlになります。

直訳すると「餌(corn)は蒔いたが、鶏は呼ばなかった」です。

意味は「言葉は発したが、誰の事かは言わなかった」です。

批判の対象者を特定せずに、本人にだけ分かるようにほのめかす時にこのことわざを使うそうです。

パトワによるジャマイカのことわざはとても興味深いです。

「Who the Cap Fitに関するあれこれ」で代表的なものを紹介しておきます。興味がある方はぜひご一読を。

Fowl
にわとり、あひる、七面鳥など食用にされる鶏全般を指す集合名詞です。

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Water fowl と言えば「水鳥」、wild fowlと言えば「野鳥」です。

「鶏肉」という意味もあります。

Eliminate
「取り除く」、「排除する」、「消去する」という意味の動詞です。

口語では「人を殺す」という意味でも使われます。

Bless
「祝福する」、「恵みを授ける」という動詞です。

God bless youと言えば、「あなたに神のみ恵みがありますように」という意味です。

名詞形はblessingsです。

「神から授かる恩恵」という意味です。

Curse
Blessの反対語です。

「呪う」、「ののしる」、「悪態をつく」という動詞です。

そのままの形curseで「呪い」という名詞になります。

「呪いの言葉」はcurse wordsと言います。

激怒した時などに発する「言ってはいけない」言葉のことです。

使わない方がいいです

Hypocrites
「偽善者」のことです。

ボブの歌詞によく登場します。

Parasites
「寄生虫」です。

「寄生虫のような人間」という意味で使われることも多いです。

寄生虫に生きる場を与える「宿主」はhostsと言います。

Take a bite

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Biteとは「噛むこと」です。

「ひと口」という意味にもなります。

Take a biteは「ひと口食べる」という意味の慣用句です。

Take a bite of pizza(ピザをひと口食べる)という風に使います。

Run away
Away(離れたところ)にrun(走る)、つまり「逃げ出す」という意味です。

同じ二語をくっつけて作ったrunawayという名詞もあります。

「逃亡者」、「脱走者」のことです。

韻を踏んでいる箇所

以下の4か所で韻を踏んでいます。

Man to man is so unjust, children
You don’t know who to trust

But who Jah bless, no one curse
Thank God, we’re past the worst

Hypocrites and parasites
Will come up and take a bite

And if your night should turn to day
A lot of people would run away

翻訳する上で難しかった点

Throw me corn, me no call no fowlの意味を正確に把握し、それをどうやってすぐ後に続く鳥の鳴き真似と結びつけるのかというところがすごく難しかったです。検索能力と文章力が問われる作業でした。

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