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英語&翻訳解説【Bend Down Low】

まず曲を理解する

この曲のテーマは「過去の自分の過ちや愚かさを認めて新たな一歩踏み出す」ことです。

「小さな勇気」と言い換えてもいいかもしれません。

曲の中でボブは愛する人に向けて「自分を低くする」、つまり「神様の前でへりくだること」こと、そしてドアをノックして人生をやり直すために「愛と赦し」がある世界に入るんだと訴えています。

明るく軽やかなメロディでついリフの部分を口ずさんでしまう曲ですが、じっくり歌詞を味わうと内容の深さに驚かされるナンバーです。

英語表現と訳し方

Bend down low
「かがむ」という意味のbend downに「低く」という意味のlowを付け加えてあります。

Bend downだけで十分なところにあえてlowを加えてかがみこむ姿勢の「低さ」を強調しています。

「高いか低いか」がすごく大事だからです。

これは聖書に基づいた価値観です。

最も高い場所におられる主に対して自分をなるべく低くしてへりくだる必要があるわけです。

単に身体だけではなく心の持ちようも低くするように求めているので「自分を低くするんだ」と訳しました。

Fisherman row
パトワ式文法によるフレーズです。

標準英語ならこの主語はfishermenですが、パトワは単数と複数の区別がないので単数になっています。

Rowは「船を漕ぐ」と言う意味の動詞です。

目的語が省略されています。標準英語で略さずに全部書き出すとFishermen row boatsとなります。

漁師はfishersとも言います。

聖書の読者にはなじみ深い職業です。

(イメージ画像)

イエスの有名な12人の弟子(the Twelve Apostles)のうち、最初の4人は漁師でした。

You reap what you sow
この部分は新約聖書のガラテヤの信徒への手紙6からの引用です。

ボブが毎日読んでいた英語聖書King James Versionの次の部分です。

For whatsoever a man soweth, that shall he also reap.

直訳すると「人は、自分の蒔いたものを、また刈り取ることになる 」です。

自分の行いは必ず自分に返ってくるという意味です。

Keep on knocking, but you can’t come in
伝説的ロックンローラーLittle Richardのヒット・ナンバーKeep a-Knockin’の出だしとまったく同じフレーズです。

どちらの曲もマタイによる福音書7からの引用です。

ボブが愛したKing James Versionだとこの部分に相当します。

Knock, and it shall be opened unto you.

「たたきなさい。そうすれば、開かれる」というあまりにも有名な言葉です。

意味は、求めなければ与えられないということです。

Get to understand
「Get to ~」は「~し始める」という意味で使われるフレーズです。

ここではunderstand以下の内容を「理解し始めた」と言っています。

Living in sin
Sinは通常「罪」と訳されます。

罪と言っても犯罪ではありません。道徳的な罪を指します。

法律上の犯罪はcrimesと言います。

聖書の世界では、sinとは「神の定めに背くこと」です。

Live in sinを辞書で引くと「同棲する」と書いてありますが、同棲だけには限定できない幅のある表現です。

なので、英語に忠実に「罪の中で生きる」と訳しました。

Walk right in
Walk inで「中に入りなさい」という意味です。

Rightを入れることによって「すぐに」とか「直ちに」というニュアンスを加えてあります。

Rightはright up とかright downとかright nowとかright hereという風にいろんなところにつけられる万能ワードです。

喋りグセのように使う人もいて、口語ではあまり意味がないことも多いです。

A notch for your safety pin
Safety pinは「安全ピン」です。

Notchは「V 字形の刻み目」を指します。

安全にピンを留めるために設けられた上部の切れ込みがある部分のことです。

「安全ピンを留める」はfasten a safety pin、「安全ピンを外す」はremove a safety pinと言います。

Play the clown
「道化師(=ピエロ)を演じる」という意味です。

文脈によっては「おどけてみせる」という意味にもなります。

ちなみにソウルクラシックにSmokey Robinson & the MiraclesTears of a Clown(道化師の涙)というナンバーがあります。

 「道化師の顔は笑っている、けれども心は泣いている」という詩的な曲タイトルです。

Let you in
Let ~ inで「~を招き入れる」、「~を中に入れる」という意味です。

ドアの外にいる人がLet me inと言えば、「中に入れてくれ」という意味です。

韻を踏んでいる箇所

以下の5か所で韻を踏んでいます。

Bend down low
Let me tell you what I know

Fisherman row
You reap what you sow now
Tell you all I know
You’ve got to let me go now

You keep on knocking, but you can’t come in
I get to understand you been living in sin
But if you love me, woman, walk right in
I’ve got a notch for your safety pin

But walk right in, woman, sit right down
I will keep on loving you, I play the clown

I just won’t let you in
You been living in sin

翻訳する上で苦労した点

Bend down lowを「自分の小ささ、愚かさを認め、主の前でへりくだる」という意味を含んだ日本語にするのに苦労しました。

「ひざまずく」にしようかとも考えましたが、kneel downという言葉を使わなかったボブのワードチョイスを尊重して別の形で訳しました。

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