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英語&翻訳解説【War】


まず曲を理解する

ボブのファンなら誰もが知っているこのナンバーは、エチオピア皇帝ハイレ・セラシエ1世が1963年に国連総会でおこなった名演説をルーツレゲエサウンドに乗せて新たに世に送り出したものです。

国連総会で演説するセラシエ

歌詞を聴けばすぐに理解できる通り、不平等、人種差別、人権侵害といった問題(=悪)が無くならない限り、地球上に平和(=善)はやってこないと指摘しています。

セラシエの演説をほぼそのまま借用しているので他のボブの曲とはまったく別の味わいがある切れ味鋭く格調高い歌詞です。

主張がはっきりしていて理解しやすいナンバーです。

もしもボブが今生きていたら、「1963年から何も変わっていないじゃないか!」と吠えると思います。平和への道は相変わらずはるか遠いです。ガザ、ヨルダン川西岸、ウクライナ、ミャンマー、スーダン、コンゴ、ハイチなど世界各地で起きている「争い」について考えながら聴くべき曲です。

Gaza in November 2023

英語表現と訳し方

Philosophy
価値や思考の体系を指します。

通常は「哲学」、「人生観」、「原理」、「基本理念」などと訳します。

個別の考えや意見はideasと言います。

Ideasとほぼ同じ意味で使われている言葉にconceptsがあります。

こちらは「概念」です。

抽象化された考えのことです。「例」によって説明可能なものを指します。

Race(s)

(イメージ画像)

ここでは「競争」や「レース」ではなく、「人種」を指します。

人種とは皮膚や髪の色などの身体的特徴による人類の区分のことです。

よく似た言葉にethnic group(s)というのがあります。

こちらは「民族」を指します。文化による区分のことです。

Raceなんて存在しない、われわれはひとつの民だ、あるのはhuman raceだけだという考え方もあります。

Human raceとは人類のことです。Humankindmankindも同じ意味です。

Discredit
Discreditは、否定を表わすdis+credit(信用)で「正しさをくつがえす」、「信用されない」という意味です。

Abandon
Abandonは「放棄する」、「捨てる」、「中止する」という動詞です。

ほとんど場合、give upというやわらかいフレーズに置き換えることができます。

Discreditもabandonも会話ではほぼ使わないフォーマルな響きがする言葉です。

First-class and second-class citizens

(イメージ画像)

First-classは一番上の階級、second-classは上から二番目の階級を指します。

Citizensとは、出生または帰化によって市民権を持つ人たち、つまり「市民」とか「国民」のことです。

Is of no more significance than ~
会話ではまったく使わない、演説用の非常に固い英語です。

意味はis not more significant than ~(~より重要ではない)というフレーズと同じです。

Significanceは「意味があること」、「意義」、「重要性」を指します。

ほとんどの場合、importanceと言い換えることができます。

否定のnoが前に入ると「大したことはない」という意味になります。

Guarantee
Guaranteeは「保証する」という意味です。

保証人はguarantorと言います。

よく似た動詞にwarrantというのがあります。

こちらも「保証する」という意味です。

製品や商品の品質に関して述べる際によく使われる言葉です。

(イメージ画像)

Without regard to ~
慣用句with regard to ~(~に関して)のwithをwithoutに置き換えた正反対のフレーズです。

「~にかかわらず」、「~とは関係なく」という意味です。

「年齢に関係なく」だとwithout regard to age、「性別に関係なく」だとwithout regard to sexとなります。

それぞれregardless of age、regardless of sexと言うこともできます。完全に同じ意味です。

Citizenship
「市民としての身分」、つまり「市民権」のことです。

Fleeting
Fleet「消え去る」という動詞から派生した形容詞です。

「つかの間の」、「はかない」という意味で使われます。

文学的な響きがする言葉です。

Ignoble
「下品な」、「下劣な」、「不名誉な」という意味の形容詞です。

ノーベル賞(Nobel Prizes)のパロディとして1991年に作られたイグノーベル賞(Ig Nobel Prizes)の語源になった言葉です。

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よく似た言葉にshameful(恥ずべき)があります。

「恥知らず」はshamelessと言います。

Regime
「支配体制」、「政権」を意味する政治用語です。

「非民主的な」というニュアンスで使われる言葉です。

民主的な政権はgovernmentとかadministrationと呼びます。

Subhuman bondage

(イメージ画像)

Subhumanはsub(標準以下)とhuman(人間的な)からなる形容詞です。

「人間的な標準以下」、つまり「人間にふさわしくない」、「非人間的な」という意味です。

Bondageは「とらわれの身」、「奴隷の身分」です。

この箇所は構文的に少しややこしいのですが、文としてつなげて書き直すと次のようになります。

The ignoble and unhappy regime that hold(s) our brothers in Angola, Mozambique and South Africa in subhuman bondage

ストレートに訳すと、「アンゴラ、モザンビーク、南アフリカにいるわれわれの兄弟を非人間的なとらわれの身に置く下劣で悲惨な政権」となります。

Topple
Toppleは政権などを「打倒する」、「転覆する」という動詞です。

Overthrowも同じ意味の動詞です。北米ではこちらの方がよく使われます。

Rumors have a war
Rumorsは「噂」です。

Rumors have it ~という形の方が一般的です。

「~だという噂だ」という意味です。

Rumors have it there will be another warと解釈して訳しました。

Good over evil

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Goodは「善」、evilは「悪」です。

Good and evilで「善悪」、good or evilで「善かれ悪しかれ」です。

Overは特定のあるものが別の何かを越える場合に使う言葉です。

したがって、good over evilは「善が悪を越える」、つまり「善が悪に打ち勝つ」という意味になります。

この世界は善と悪のbattlefield (戦いの場)だというキリスト教的倫理観に根差した表現です。

韻を踏んでいる箇所

この曲には韻を踏んでいる箇所はありません。

翻訳する上で難しかった点

各段落ラストで繰り返される決めフレーズEverywhere is war, Me say warの訳し方が難しかったです。先行部分の歌詞から無理なく自然に言葉がつながっていくようにボブの意図を汲んで訳しました。

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