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期待に応えようとしちゃう症候群。


誰かに何かを言われたワケでもないのに、期待に応えようとしちゃう。つい褒められたくて、すごいって言って欲しくて、力んでしまう。頑張ってしまう。これを【期待に応えようとしちゃう症候群】と呼ぶ。


この病気は、年中無休の長引く病だ。

でも特効薬もある。

それは「リラックスしなよ」という言葉。


そう、この病気にかかると、どうしても力みが生じてしまう。真面目だからこそ、自分ならもっと出来ると思っているからこそ、発症してしまうのだ。だから誰かが薬を処方してあげなければいけない。


この病気は、自分一人ではなかなか気付けない、サイレントキラー的な存在でもある。


でも、個人的には、この病気は悪いことではないと思っている。むしろ好感度は高いはず。なにごとにも誠実で、直向きな姿は胸を打つはずだ。ただ、それが行き過ぎてしまうと、トゥーマッチで、嫌がられることも多い。


「人によく思われたい、とかいう気持ちは捨ててさ、お前の内側から出てくるものとか、お前の本当の気持ちを知りたいんだよ。別に媚びなくていいからさ。模範解答みたいなモノを探さないで、もっと素直な意見を聞きたいんだ」


この病気にかかっている時、ウチは上司によく叱られた。「お前の気持ちはなんだ」ということを、死ぬほど言われ続けてきた。そう。重度の【期待に応えようとしちゃう症候群】にかかると、常に本心を隠した胡散臭い人間だと思われ、「媚びてる!」などと批難されるらしい。


そんなつもりはないし、一生懸命に頑張ってるつもりなんだけど、他人はそうは思わない。これが、この病気を病気たらしめるものなのだ。ああ、恐ろしい。


頑張りが裏目に出てしまうことがある。それを空回りとも言ったりするが、そんなの、どう改善したらいいか分かるわけがない。ウチも散々悩んでいたが、それは上司との会話をキッカケに改善した。


「なんか、お前って真面目すぎて、面白くないんだよなあ」

「・・・そ、そうですか」

「休みとっていいから、もっと遊んでみたり、はっちゃけてみて、頭のネジを外す練習してみたら?」

「・・・休み、ですか」


真面目なウチは、早速一週間の休みを申請し、一人旅という「遊び」をした。旅先の土地の歴史を調べたり、存分に読書することで「はっちゃけて」みた。頭のネジを外して、ボーッと時間を過ごすことにもチャレンジしたし、お金のことを気にせず、お土産を爆買いしてみたりした。


「どうだった?」

「最高でした。仕事のことを考えずに歴史書片手にブラブラと街を歩いたりして、自然に生きることの大切さを学んだような気がしました。はい、これ、お土産です」


ウチは、自然とは一切関係ない人工物の塊である「刀」のキーホルダーをプレゼントした。ギフトショップにぶら下がっているのを見て、一目惚れした商品だった。先輩は苦い顔を浮かべていたが、なぜか「懐かしいわあ」と言っていたので、喜んでくれたのだと思う。


「お前って、おもしろいな」


上司がなにを面白がっていたのかは分からない。でも、なぜが満足そうにウチの肩をポンと叩いて去っていった。こうしてウチの【期待に応えようとしちゃう症候群】は少し改善した・・・、らしい。正直、自覚症状はなかった。


真面目な部分が無くなったワケではない。結局、言われた通りに行動してみただけだ。でも、実際、休暇をもらってリラックスできたことで、仕事の向き合い方などには変化があったと思う。力がいい感じに抜けたというか。頑張ってるつもりだし、自分に正直なつもりだけど、仕事をするのがラクになった気がする。


今にして思うが、たぶん、上司は「リラックスしてこい」と言いたかっただけなのかもしれない。にしては言葉選びがヘタクソだったと思うけど。結局は上司の言葉のおかげで、休暇をとり、自分の病と向き合うことができたというワケだ。


完治したわけではないけれど、それからのウチは【期待に応えようとしちゃう症候群】と、うまく共存できてきていると思う。


だから、ウチは、ウチと同じ病に苦しむ人に言ってあげたい。


「リラックスしてね!」


さて、今日も頑張りますか!


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