【エッセイ】 大人と子どもの狭間。


ちょうど、自分が大人と子どもの狭間にいる気がする。情熱の冷静の間とも言えるかもしれない。イエローでホワイトでブルーでレッドでグレーンでブラックなのかもしれない。

自分が若かりし日、世の中が色とりどりであることに感動を隠せなかった。何者かになるための道が目の前に開けていた。この道も憧れる。あっちの道にも惹かれてしまう。青春という爽やかな雨が降り注ぎ、露がきらきらと光り、空には深い青が広がり、若葉の匂いがムンムンと立ち込めていた。

そして、いよいよ自分が社会の一員にならねばならない年齢に達した時、後ろを振り返り、歩んできた道を確認した。この道、足跡、わだちを、どの道を連結させようか・・・。頭を悩ませた挙句、たこ足コンセントみたいに、いろいろな道を繋げようとした。なにも一つに決めることはないだろう! 人生は長いのだから、全部をこなすことができる人間になってやる。そんな強い気概があった気がする。

さて、それから何年が経っただろうか。ウチの中に潜んでいた密やかな願望は自然に淘汰されていったように思う。そうして、突然変異もやってきた。まるで、生物の進化の跡を辿るみたいに、心も変化していった気がする。これが大人になるということなのかもしれない。

そうして今度は、目の前に、昔の自分のような心を持った年少者がいる。さて、ウチはなんて言葉をかけたらいいのだろうかと、また新たな問題に口をとんがらせ、耳にえんぴつをのせている。人を変えることなんてできないかもしれない。しかし、同時にウチの言葉で人生を狂わせてしまう可能性もゼロではない。だから、無責任なことも言えないな、と思ってしまうのは、自分が大人になった証なのかしら。

自分の歩みたい道は、まだたくさんあると思ってる。でも、確かに青春の雨に打たれていた頃とは、見えてる道が減っている。その意味で、ウチは今、大人と子どもの狭間にいる気がするんだ。心の奥底で、まだ、微かな夢を抱いている。

これから先、一日一日と日を重ね、一年、二年と時間に身を委ねていったとき、道はどんどん減っていくのだろうか。夢は霞んでいくのだろうか。そうして、自分の足跡が深くなり、洗練されていくのかもしれない。正直、分からない。誰にも分からない気がする。大人になることも、子どもであることも、一長一短なんだろうね。どっちが良いとか悪いの話にはなりっこない。

そんなことを考えていたら、ちょうど狭間にいる自分が、なんだか得をしている気になった!

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