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屋根屋さんが、お客さまから本当に信頼される秘訣とは?ー石川商店代表・石川弘樹さん

こんにちは。 HouScapeの木村です。
先進的な取り組みをされている屋根屋さんにお話をお伺いする本企画、第3弾は石川商店代表の石川弘樹さんです!

石川商店さんは、品川にある設立73年の老舗屋根屋さんです。

石川さんといえば、特にYouTubeが特徴的です。
10年近く前、まだYouTubeが盛り上がる前から動画を投稿し始め、消費者の方に屋根に関する情報を発信され続けています。
それだけでなく、瓦割りの動画を上げられていることでも有名です。

YouTubeを含めた情報発信の影響で、一時期は月に100件を超える問合せがあったそうです。

一見、独創的な方法でマーケティングをされている石川さんですが、
現在のスタイルに辿り着くまでにはどのような背景や試行錯誤があったのか、お伺いしてきました。


小さな頃から、なんとなく「社長」に興味があった

-木村:石川さん、本日はよろしくお願いいたします!

石川:よろしくお願いします。

-石川さんが3代目の代表とのことですが、元々家業の屋根屋を継ぐつもりだったんですか?

石川:いえ、元々は家業を継ぐつもりはありませんでした。男3人兄弟の末っ子だったので、長男が継ぐのかなーと漠然と思ってました。

特段「屋根」に興味があったわけでもありませんが、祖父も父も社長だったので「社長」という仕事はなんとなく身近に感じていました。

ーそうなんですね!大学生の頃に就活をされていた際は、どんな会社に興味を持っていたんですか?

石川:「社長」が面白そうな会社を受けていました。なので業界は全く関係なく受けていて。笑
たまたま受かったのが女性用下着メーカーの「Triumph」で、良い意味で変わってる社長がいたんです。

ーTriumphの社長のどんなところが面白い人だと感じたんでしょうか?

石川:社長は吉越さんといって、よくメディアにも取り上げられるような方でした。

例えば、「CMを打つより取材に来てもらったほうがコスパが良い」と言って、ユニークな企画をやって取材が来てたり。
「企画書は2行で出せ」とか、「仕事のデッドラインは1日」とか、当時の常識からするとかなりユニークな経営をされていました。

ー今になって、たまにそういう会社も聞きますが、Triumphは先駆けだったんですね。

石川:そうかもしれませんね。笑
外資系企業なのに「日本法人色」が強くて、インド出身のエンジニアにも、日本語を話してもらったりしてました。笑

ーすごいですね…!そんなTriumphでは当時どんな仕事をされていましたか?

石川:各店舗の流通や在庫の管理を行ってました。
もともとTriumphは百貨店などに卸をしていたのですが、自分が入社したのが直営店を増やしていたタイミングだったんです。
なので、各店舗の販売量を見ながら売れる店舗に在庫を移動させたりしてました。

それまでなかった仕事だったので前任者もいない中、新卒入社の自分がその仕事に任命されました。

それこそ、インド出身のエンジニアと日本語で議論しながら(笑)、
管理システムを開発したり、社内調整をしたり、かなり試行錯誤してました。

ー関係者が多くて大変そうなお仕事ですね…!Triumphのあとは、すぐ石川商店に入社されたんですか?

石川:そうですね。3年くらい勤めたタイミングで、父が入院したのをきっかけに家業を継ぐ準備を始めました。

屋根屋は簡単な仕事ではなかった

ー実際に屋根屋の仕事を始めてみていかがでしたか?

石川:Triumphで当時の最先端の仕事をしていたので、正直「屋根屋の仕事は簡単でしょ」とたかを括っていました。笑
が、実際は全然違いました。

ー特に難しかったことはありますか?

石川:職人さんとうまく連携しながら、お客さんにきちんと価値を出していくことが、シンプルですが難しかったです。

当時も今も品質にはこだわるべきだと思うんです。
お客さんからお金をもらっているんだし、職人さんにはお金を払っているんだから、きちんと質の高いものを作って、提供すべきだと思うからです。

それで職人さんに高い要求をすると、「技術の安売り」と受け取られてしまうこともありました。

ーお客さんと職人さんをつなぐ立場として、水準のすり合わせに苦労されたんですね。

石川:そうですね。技術の安売りをするつもりは全くありませんし、値上げしてでも品質にこだわって、お客さんもそれを良しとすれば皆win-win-winにできるはずなんですよね。

でも職人さんからすると「普通はそこまでしない」と言われることもあって。
例えば、石川商店に入社して最初に職人を経験していれば、もっと職人の立場に立った提案もできたのかなとも思います。

ーたしかに、難しそうですね。
石川商店代表としての仕事をし始めたのはいつ頃ですか?

石川:2014年頃から父が会長というポジションに就いて、自分が代表として経営判断をするようになりました。

ー代表としての仕事を始めて大変だったことはありますか?

石川:思い返すと、BtoBの大口顧客の仕事を突然断ってしまったことには少し後悔があります。

元々は石川商店も下請けメインで仕事をしてきました。価格競争に巻き込まれたりしながらも、品質にはこだわって一生懸命やってきたつもりです。

ただ、他の屋根屋さんの工事を見ているとほぼ手抜きにも関わらず、うちと変わらない金額で受注していることもあって……
しかもそれって、消費者さんには分からないことが多いと思うんです。

そういったことに疑問を感じていて。

その頃に震災や増税も重なって多忙を極め、結果、当時の石川商店の売上げの8割を占める大口顧客との取引を断ってしまったんです。

下請けではなく元請けとして、BtoCをやっていく経営判断をしました。

ーかなり思い切った判断ですね……!社内からの反発もありましたか……?

石川:もちろん、仕事の8割がなくなるので反発はありました。

石川商店に入社したときと一緒で、「なんとかなるだろう」とたかを括っていた部分もあったかもしれません。

実際はなんとかならず、従業員10人と外注職人10組くらい在籍してくれていましたが、ほとんどの方が離れてしまい、今は従業員3人に職人さんが2、3組ほどで成り立っています。

ー当時に戻れるなら、違った経営判断をしますか?

石川:結果的にBtoBの仕事を断る判断をするかもしれませんが、BtoCと並行して元請けさんとも良い関係を保ちながら、徐々にBtoBをフェードアウトしていく、というような形にするかもしれませんね。

YouTubeでの発信に至るまでの試行錯誤

ーBtoBの大口顧客との取引がなくなってからは、どのようにして仕事を受注していったのでしょうか?

石川:最初はチラシの配布からしましたが、今考えると「屋根の葺き替えしませんか」のチラシで仕事が取れるわけがなかったんです。笑
ただですらチラシの反響は高くないのに、そのうえ「葺き替え」する人なんてもっと少ないですから。

なんとかして仕事を取らないといけないので、その後はホームページに注力してブログを書き始めるようになりました。

最初は本当に手探りで、とりあえず書けば良いと思って「今日の夜はこんなご飯食べました」とか書いてました。

ーなるほど。素人からすると商圏ビジネスなので、ホームページよりチラシのほうが相性が良いように感じますが、そうでもないんですね。

石川:そう思いますよね。

チラシで効果がなかったのでブログを書き始めただけなんですけど、当時はブログを書いている屋根屋さんがそこまでいなかったこともあって、問い合わせが来るようになりました。

ーなるほど。現在はブログだけではなく、YouTubeにも注力されていますよね。

石川:そうですね。ブログでいろんなことを発信してきたことで、「屋根屋におふさげはいらない」という結論に至りました。
刺さる人には刺さるようにと、淡々と情報発信を続けることにして、ブログよりも情報量の多い動画で発信をすることになりました。

ー私も石川さんのYouTubeで屋根の勉強をさせていただいています。
通常の発信とは別に瓦割りの動画を上げられていますが、どういった経緯で瓦割りを始められたんですか?

石川:瓦割りは、商店街の要請で始めた企画です。笑

他の動画と比較して案件にはつながりづらくて、瓦割り動画から直接案件に繋がったのは、過去10年で1回だけだと思います。

ただ、瓦割り動画にしろ普通の動画にしろ、先にYouTubeを見てもらうことで最初の関係性が作りやすく、信頼していただきやすいという効果はあるように感じています。

問合せの後にお会いした時に、「YouTubeで見た石川さんだ!」と言ってもらえることは結構あるんです。笑

ーたしかに、「本物だ!」ってなりますよね。笑

屋根屋が信頼してもらう上で大事なこと

ーいろいろと試行錯誤をされてきて、BtoC工事を受注するために大切なことは何だと考えられますか?

石川:試行錯誤してきましたが、これ!といった成功事例はありませんよ。笑
ただ、大事だと思うのは「顔出し」をすることかなと思います。

一般の方からしたら「屋根屋さんなんてみんな詐欺」くらいに思われているかもしれない。笑
なので、顔も出して、自宅 兼 会社の住所も出して発信することで、
「こいつは悪いことはしないだろうな。」と思ってもらうようにしています。

ーたしかに、その覚悟が伝わります。

石川:屋根業界自体、グレーな業界だと言われることもあるんです。
グレーな業界のなかで、クリーンでいたいし、そのためには1ミリもグレーになりたくないと思っているんです。

ー「1ミリもグレーにならない」ために気をつけていることはありますか?

石川:2つくらいあります。

1つはやはり、顔出しして嘘をつかないこと。
一般の方と話していると、こちらが嘘を言っているのか本当のことを言っているのかも分かってない中で「わかりました」って言われている感覚があって、それが本当に嫌なんです。

なので僕は、良いことも悪いことも真実を全て伝えるように心がけています。
性格上、嘘ついてもバレちゃいますし。笑

2つ目は『本当の意味で』消費者視点になること。
みんな「お客様視点」って言いますけど、本当にそうかな?って思うことがあります。
これは屋根業界に限らずですが、お客さんにいろいろ提案してるけど
『いや、それ本当に自分だったらやりますか?』ってことって、あると思うんです。

なので私は、「自分でもそうする」という提案を自信を持ってするようにしています。

ーなるほど。「自分でもそうすること」を提案することが本当のお客様視点ですね。

石川:そうですね。
お客様視点ということでいえば、例えば話すときに「横文字を使わないこと」

他の業界でもよく言われますが横文字を使わないことは本当に大事だと思っていて、「ルーフィング」ではお客さんには伝わらないので、「防水シート」と言ってます。

「防水シート」が口に馴染んでしまって、職人さんに「ルーフィングのことですか?」って言われたこともありますが。笑

ー石川さんの場合は、職人さんよりお客さんと話している時間の方が長いかもしれないですね。笑

石川:そうかもしれません。
多い時はありがたいことに月に100件ほど問合せがきて、それに対応しているおかげで、一般の方に伝わる言葉遣いになってきたのかもしれません。

同じようなことを聞かれることも多いので、「今回はうまく伝わったな」「今回はあまり伝わらなかったな」と学習していった気がします。

売上は追わず、「地域密着」の屋根屋さんでいたい

ー石川商店さんの今後の展望をお伺いしてもよろしいでしょうか?

石川:売り上げを拡大していくよりも、地域密着型の屋根屋でいたいと思っています。

ー素敵ですね。どうしてそう思われるんですか?

石川:必要以上に手広くやって品質やアフターフォローなどを疎かにするよりも、しっかり地域密着型で地域との信頼を築いていくことが屋根屋の生存方法だと思うからです。
それに、今くらいの規模が心地よいです。

極端な話、そんなことあってはいけませんが、万が一災害があったとしても「自分の担当する地域は被害が小さく済んだ」という屋根屋になりたいですし、理想はすべての屋根屋がそうであることだと思います。

ーなるほど。地域の屋根屋が地域の家を守っている状態ですね。
より地域密着型になっていくために、今後どのようなことをされていくのでしょうか?

石川:今年の3月に戸越銀座商店街に屋根と外壁塗装のショールームをオープンする予定です。

普段から屋根に興味がある方は少ないと思いますが、屋根の他、外壁塗装のカラーサンプルなどを見て触れるお店にして、身近に感じてもらいたいとおもっています。

ー面白いですね!

石川:土日は瓦割りができるようにしようと思っています。笑
こういうことをやらないとなかなか屋根に興味を持ってもらえませんし、みんな興味がないとグレーな業界になっていってしまうと思うんです。

地域の消費者のためになることを地域の屋根屋さんが発信していくことで、だんだんとグレーなイメージが払拭されていって、「屋根屋さんは街を守る素晴らしい職業だ」と認知されるようになっていく。
それが屋根屋のあるべき姿だと思っています。

ーおっしゃる通りですね。ちなみに石川さん個人としての展望はありますか?

石川:個人の欲望としては、私の子どもが石川商店に入りたいと自分から言うようになることですかね。笑

屋根屋業界がクリーンになれば、子供がなりたい職業にもなるだろうし、そのときに石川商店を選んでもらえたら嬉しいです。

終わりに

とことん消費者目線だったことがとても印象的でした。

屋根は家を守る重要な部材であるにもかかわらず、
一般の消費者と屋根屋さんとの間に、知識や情報の格差が大きいと感じます。

そういった差を埋めていくためには、Webや対面で地道に情報発信を続けていくことが重要だと思いました。

石川さんの場合は屋根の点検を有料で実施されている(その後工事をすれば点検費用は無料)ことも、「自分でもそうすると納得できる提案をする」ことや「詐欺や押し売りを防ぐ仕掛けになる」とのことで、
一貫して「グレーな業界の中でクリーンに」を体現されているように思いました。

「地域の家を地域の屋根屋さんが守る」世界の実現に、私たちHouScapeも貢献していきたいと思います。


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"住宅の価値を、高めていく"をミッションに、2022年6月創業。
「いえサプリ」の開発、マーケティング支援事業、経営支援事業を展開しています。
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