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僕は ”シムシティ” がやりたくて起業した

突然ですが、昨年の6月に起業しました。いま僕は「屋根」に関する事業をやっています。

……なぜスタートアップで屋根?

はい、ほぼ100%そう聞かれます。

屋根業界はいわゆる伝統的な職人さんたちの世界。スタートアップの事業領域としては正直あまり注目されていないと思います。

だけど僕はこの業界にすごく可能性を感じています。

この事業を続けていけば、100年先の「街づくり」そのものが変わっていくかもしれない。それくらいのビジョンを持ってやっています。

今日は、僕がいまやっていること、そしてその先のビジョンについて書いてみたいと思います。これまで発信をサボってきたのでうまく伝えられる自信がない&長くなってしまうのですが、お付き合いいただけたらうれしいです。

何をやっているのか?

いま僕がやっているのは屋根の施工業者さん向けの顧客管理サービスです。以下、この施工業者さんのことを屋根屋(やねや)と呼ぶことにします(屋が多いですね笑)

屋根屋というのは「戸建ての屋根」を専門に工事する事業者です。

規模は数人〜大きくて30人くらい。戦前からの歴史がある会社も多く、家業として世襲でやっている人も多いです。ざっくりしたイメージとしては、地域に根ざして仕事をする職人集団と思ってもらえればと思います。

ここまで聞いてお察しの方も多いと思うのですが、屋根屋はデジタル化がほぼ進んでいません。

少し進んでいる会社だとエクセルを使っていたりもしますが、管理はほとんどが紙。「何丁目の〇〇さん、そろそろ点検のタイミングかな?」といったお客さんの情報は、職人さんたちの頭の中にあったりします。

そんな屋根屋に対して、僕たちは簡単に、かつ安く顧客情報を管理できるサービスを提供しています。いえサプリ

いままで紙と職人さんや社長の頭の中にあった顧客情報を使いやすいようにまとめる。そして工事の履歴を把握したり、DMなどのマーケティング施策を打ちやすくするためのお手伝いをしています。

なぜ後発の僕らが勝てるのか?

「顧客情報の管理が大事」なんて、あたりまえの話に聞こえるかもしれません。実際にそういったツールやサービスはあふれていて、すでにやり尽くされている感もあります。

そんな中でなぜ僕らがこの分野で勝てるのか?

ひとつ目の理由は、屋根屋にとってちょうどいいサービスがないからです。

もう少し大きい工務店やハウスメーカーになると、たいていSalesforceなどの大手の顧客管理サービスが入っています。

ただ屋根屋の場合はそれだとオーバースペックであることも多いです。登録できる項目数がやたら多かったり、高度な分析機能がついていたり。そして大きめの屋根屋でもこういったツールを使う営業さんは5名くらいなので、コストの負担も重いです。

じゃあエクセルやスプレッドシートでいいのかというと、それはそれで使いづらかったりします。

エクセルをよく使っている人ならわかると思うのですが、一人のお客さんに複数の案件が発生する場合、エクセルでは管理しづらいです。

よくあるのが縦にお客さんを並べて横にどんどん情報を追加していくパターン。複数の案件内容やDMへの反応状況などを追加していくうちに、果てしなく横長のエクセルになってしまいます。

さらにわけのわからない関数が入っていて、ミスがあっても誰も気づかない。データ抽出も分析もしづらい……。

データ活用を自力でがんばろうとしている屋根屋さんほどこうした罠に陥ってしまっているものです。

そんな中で、僕らは屋根屋の仕事をきちんと理解した上で「きちんと使い続けられる」プロダクトを作っています。

顧客管理で意外と大変なのが事前のセットアップ。既存のプロダクトを使うにせよ、エクセルやスプレッドシートを使うにせよ、管理する項目を設定して日々の業務フローに落とし込む必要があります。ここで挫折してしまう人が多いのです。

それに対して僕らのプロダクトは屋根屋に必要な機能に特化しているので、すぐに使い始めることができます。そしてデジタルになじみのない人へのサポートも欠かしません。お客さんからは「他のサービスはダメだったけど、これなら続けられるよ」とうれしい声をいただいています。

屋根屋というニッチに特化しているからこそ、彼らにとってちょうどいいプロダクトを作ることができるのです。

「攻め」の屋根屋を応援したい

もうひとつの理由は「リフォーム」を取るために顧客情報がますます重要になっているからです。

いま日本では新築需要がどんどん減り、代わりにリフォームが増えています。屋根屋にとってもいかにリフォームを取るかが重要になっています。

顧客情報が使いやすい状態になっていれば「そろそろ点検しませんか?」といった形でお客さんと定期的に接点を持つことができます。

この「定期的な顧客接点」がリフォームではすごく重要です。

お客さんと接点を持っていればリフォームの必要が出たときに声を掛けてもらいやすくなります。さらに、壊れる前に危ない部分をチェックして工事を提案するといったこともできるようになります。

屋根業界でもこうした活動の重要性が認識されはじめており、感度の高い経営者さんほどリフォームに真剣に取り組んでいる印象です。

たとえば前職からお世話になっている広島県福山市の藤井製瓦工業さん。彼らは一度工事をしたお客さんに対して定期的に接点を持つことをすごく大切にしています。DMを送るのはもちろん、地域でお祭りのような催しをやったり、家族で参加できるイベントを開催するなんてことまでやっているんです。

屋根業界にはもともとリピーターという概念がなく、僕の感覚では平均的なリピート売上はせいぜい数%くらい。そんな中で藤井製瓦工業さんはリピーターからの売上が過半数という驚異的な実績を叩き出しています。

屋根業界でもリフォームを取るためにリピートがますます重要になるし、そのためにできることはたくさんあるはず。だからいまこのタイミングで顧客情報の管理を仕掛けています。そうして「攻め」の姿勢でがんばっている屋根屋さんから支持を得ることが僕らの成功にもつながると考えています。

屋根への興味はゼロだった

冒頭の問いに戻ります。なぜ屋根に注目したのか?

その答えは、はっきり言って「偶然」です。

こんなことを言ったらお客さんに怒られてしまうと思いますが、僕は初めから屋根業界に強い思い入れがあったわけではありません。

僕は新卒でCLUEというドローンの会社に入社しました。そこでたまたま屋根屋向けのドローンのサービスを作り屋根屋の全国行脚をしていました。

屋根屋がドローンを使うのは屋根の点検のためです。いちいち屋根に登るのは面倒ですし危険もあります。

しかしそれ以上に大きい理由が屋根業界の「詐欺」です。

どういう詐欺かというと、悪質な屋根屋がいきなりピンポンしてきてこんなことを言うのです。

「いま近くで工事をしていたらお宅の屋根が壊れているのが見えまして。ちょっと登って確認してきますよ」

そう言って屋根に登って、なんとハンマーで屋根を壊してくるんです。

そして「通常なら200万円の工事なんですけど、たまたま近くに来てたんで100万円でやりますよ。このままだと雨漏りしちゃうんで、すぐやりましょう」なんて言ってぼったくるわけです。

……ほんとひどい話ですよね。

こういう詐欺を疑われないために、事前にドローンで撮影して、状況説明を行なえば良いのではないか?というアイディアを屋根屋から教えてもらいました。(白神さんなど当時はありがとうございました!)
僕の入った会社では、こういった屋根屋に向けて、ドローンを自動操縦するアプリを提供していました。その営業のために屋根屋に通っていたというわけです。

僕はドローンに興味があって入社したので屋根への興味はゼロ。しかも社会人になったばかりでマナーも知らない。ジーパンで営業に行って怒られたこともありました。

そんな僕に対して、屋根屋のみなさんは社会人としてのいろはを教えてくれたり、屋根について熱心に語ってくれたのです。

ドローンの会社はスタートアップだったこともあり、上司から教わるというよりもとにかく自分で考えて手足を動かすカルチャーでした。そういった環境で成長できたことにはとても感謝しています。(特に夏目さん、榊原さん、延原さん、本当にお世話になりました!)

その一方で、僕に社会人としての基礎を叩き込んでくれたのは屋根屋のみなさんでした。

屋根の話を聞いていくとみなさん楽しそうに話してくれて、本当に屋根が好きなんだと伝わってきます。そして知れば知るほどおもしろい。これだけでnoteが3本くらい書けそうなので今日は割愛しますが、屋根の歴史だったり、瓦を使ったアートの話だったり、金属の屋根材で作った折り鶴だったり、話したいことが山ほどあります。

当時を振り返ると、ドローンの営業なのにドローンそっちのけで屋根の話ばかりしていました。

たぶんそれがよかったのだと思います。

ドローンの会社をやめるころには、100社を超える屋根屋さんと個人的にメッセンジャーでやり取りする関係になっていました。

何のアイデアもなくとりあえず起業

その後、僕はリクルートに転職します。次は大きな組織で学びたいと思ったからです。

ただこのときはルート営業だったため、営業先はドローンの会社のときほど多くありませんでした。

僕は「社会人を5年やったら起業しよう」と決めていたので、5年が経ったタイミングでリクルートをやめてとりあえず会社を作りました。何をやるかのアイデアすらありません。完全な見切り発車でした。(1年間色んな経験をさせてくれたローカスブルーの宮谷さんありがとうございました!)

そんなときに各地の屋根屋さんにとりあえず連絡してみると「いいね、応援するよ!」「協力できることがあれば言ってよ!」とみなさん温かく声をかけてくださったのです。

自分を育ててくれた屋根業界のために何か恩返しがしたいーー。

次第にこうした気持ちが固まっていき、現在のプロダクトが生まれることになります。

僕がお付き合いしている屋根屋の経営者さんは40〜60代くらい。業界の経営者としては若いほうです。家業の3代目、4代目の後継ぎとして社長になった人も多いです。

こうした若い経営者の中には「このままじゃヤバくね?」という危機感を持ってやっている人がたくさんいます。

僕のような20代の若造が「業界のために何かしたいです!」と相談すると、みなさん快くアイデア出しやインタビューに協力してくださいます。

ノウハウを独占するのではなく、業界を盛り上げるためにみんなで協力していく。こうした経営者さんがたくさんいるのが屋根業界の大きな魅力です。

株式会社いらか 成田さん、株式会社石川商店 石川さん、山本瓦工業株式会社 山本さん、株式会社ウチノ板金 内野さん、藤井製瓦工業株式会社 藤井さん、この場を借りてお礼をお伝えさせてください。みなさんのおかげでノーアイデアのところからなんとか事業を立ち上げることができました。

屋根って、家の中のすごく重要なパーツだと思うんです。

雨風から家を守るためには少しの欠陥も許されません。それに街の景観をつくる上でも重要です。

それなのにみんな自分の家の屋根のことを知らないですよね。このあいだ2億円の豪邸を建てた人が屋根にかけたお金がたった30万円だったという話を聞きました。

屋根への関心がないからメンテナンスもしない。だからすぐに壊れるし詐欺にも遭います。これってすごくもったいないですよね。

全体として見れば古い業界かもしれませんが、この業界の経営者さんたちはまだまだできることがたくさんあると思いながらがんばっています。僭越ながら、僕も少しでもそういう人たちの力になれたらと思っています。

「家」のデータをおさえていく

これはまだ構想段階なのですが、いずれは僕らのサービス上で屋根以外の工事の履歴も把握できるようにしたいと思っています。

そうすることで、たとえば屋根屋が「水道」や「外壁」といった他の部分のリフォームを提案して、専門の施工業者を紹介するといったことも考えています。

屋根をはじめとする住宅の施工業社は全国に約17万社。白地は無限にあります。そして「家」のデータが一番集まるのも、この施工業社なのです。

家のデータはまだまだ紙が多く、いろいろな施工業社に分散しているため、住んでいる人もきちんと把握していなかったりします。

ではなぜデータをきちんと把握しておいた方がいいかというと、大きな理由としては「騙されないため」です。

先ほどの屋根の詐欺にも通じるのですが、家の不具合は専門性、緊急性が高いので業者の比較検討をする人が多くありません。そうすると業者の言いなりになって、不要な工事や不当な価格を請求されやすくなります。

そんなとき家のデータがきちんと記録された「カルテ」のようなものがあれば、データに基づいて必要な工事を検討することができます。

ただ、住人自身が「カルテ」を読み解いて交渉するのは難しいかもしれません。

そこで登場するのが全国約17万の施工業社。彼らが専門家として「カルテ」を管理し、住人からの信頼のもと、必要な工事を提案していくのです。

たとえるなら「おくすり手帳」のような感じで、かかりつけの薬剤師さんが情報を把握してアドバイスしてくれるイメージ。全国約17万の施工業社さんが「住まいのかかりつけ薬剤師」になっていく世界を描いています。(もっといいネーミングがありそうですが……)

これなら住人は安心ですし、施工業社は専門性を生かして新しい収益源を得られます。そして何より、必要なタイミングで必要なリフォームを行うことで長く住宅に住めるようになります。

いまやっているのは屋根屋向けのサービスですが、会社名はあえて屋根を前面に出すことはせずに「ハウスケープ」としました。それは屋根以外の住宅全般をビジネスの領域として見据えているからです。

やりたいのは”シムシティ”

これまで不動産業界で働く中で、僕は住宅にまつわるいろいろな「非効率」をみてきました。

たとえば火災保険の詐欺。

大きな災害があると、悪質な事業者が「こういうふうに請求すれば保険金がおりますよ」と言って、戸建の所有者に虚偽の請求をさせるといいます。そして保険金がおりたら一部をマージンとして持っていくのです。業界の人によると、この不正請求は毎年何千億円にも上るといいます。

保険会社が支払う保険料が増えれば、そのぶん保険料は高くなっていきます。つまり「善良な市民」が割を食うことになるのです。

なんて非効率なことをやっているんだろう。僕はこういうことに憤りを感じます。

あるいは街を見ていても、たとえば秋葉原のようにコンセプトがしっかりしている街が好きです。計画的に作られたわけではないにせよ「電気街」「オタク文化」という一貫性が感じられるのがいい。

反対に、新宿や渋谷は無計画にバラバラと街づくりをしている感じがしてあまり美しいと思いません。

僕のやりたいことを端的にいえば「住宅にまつわる非効率をなくしたい」ということなのだと思います。

住宅のデータをきちんと蓄積していけば、壊れる前に補修して、100年住めるようになるかもしれません。日本はいまだに新築文化が根強いですが、そうではなく、100年先を見据えた住宅づくりがしたいと思っています。

これって「シムシティ」みたいだと思うんです。

僕はシムシティで計画的に街づくりをしていくのがすごく好きです。いまの街は3、4年かけて作っているのですが、区画が完成すると「美しいなぁ」と自分で惚れ惚れしています(笑)。

そして「現実でもこんな街づくりができたらなぁ」と思うのです。

コンセプトに基づいて、データを蓄積しながら、美しい景観と持続性のある街を作っていきたい。そして100年後の未来、天国からみて「いい街を作ったなぁ」と思いたいんです。

結局のところ、僕はそのためにハウスケープという会社をやっているんだと思います。

最後に少しだけ宣伝させてください。ハウスケープでは絶賛採用を強化中です。特にエンジニアと営業(カスタマーサポート含む)が急募ですが、興味のある方はポジション問わず大歓迎です。

ざっくりですが、こんな人に仲間になってもらえたらうれしいです。

●何でもおもしろがれる人
いまの時点での業界への知識や経験は問いません。それよりも、知らないことをおもしろがって突き詰める力を大切にしています。

●できるかどうかより、まずやってみる人
僕自身が「起業できるかな?」なんてまったく考えずにとりあえず起業した人間です(笑)。わからないけどやってみるパワーを持った人が楽しく働ける会社だと思います。

ひとことでまとめるなら「僕と一緒にシムシティをワイワイ楽しんでくれる人」を探しています!このnoteを読んで、事業のこと、僕のことに少しでも興味を持ってくださった人がいれば気軽に連絡してもらえるとうれしいです!


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