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仕事は育児に生かせるし、育児は仕事の役に立つことを、この本で学んだ #育児 #共働き #仕事

一昨日のキャッシュレス昨日の起業プロセスの他に、課題意識を持っていることは、「育児と働き方」です。

今回は、自分の考え方が大きく変えた「育児は仕事の役に立つ 「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ 」(以下、「本書」と呼ぶ)を紹介しながら、育児と働き方について書きます。

この本では、「育児・家庭と仕事という二つの異なる活動をどう両立するか」ではなく、「育児・家庭での経験を仕事に活かそう」という考え方に基づき、調査・研究を紹介しています。

noteがどんどん長くなっている気がしますが(汗)、今回は以下のような内容です。

目次
<背景と問題提起>
・労働力不足といいながら、子育て世代を活用できていない
・「M字カーブ」は解消されつつあるが…
・仕事と育児はトレードオフなのか
<本書の紹介と発見したこと>
・仕事は育児に役立つし、育児は仕事の役に立つ
・育児は、リーダーの行動とよく似ている?
・チーム育児は、リーダー行動にも役に立つ
・「ひとりでできるもん」から卒業し、ヘルプシーキング志向を
・育児がマネジメント経験の入り口になる人も
<自分でやるために>
・育児本とビジネス書の共通点が多い
・育児と仕事を、二項対立ではなく、相互作用のある機会同士だと捉える
・読むだけで終わらないために
・育児にも効くキャッシュレス?

労働力不足といいながら、子育てする人が十分働けていない

人口減少にこれから突入し、労働力不足のニュースを目にする機会も増えました。

海外からの受け入れの対策もありますが、いま最もポテンシャルの高い労働力は、子育てで離脱してしまった人だと考えています。

駒崎 労働力不足だってこれだけ騒ぎながら、すでに存在している労働力を積極的に排除しているなんて、本末転倒ですよね。経営課題であると同時に、社会課題であると思います。

中原 政府がどれだけ本気で考えているのか分からないけれど、これから外国人が数十万人入ってくるといったって、僕からすると「たったそれだけしか埋まらないのか」という感想です。だって今日本に足りない労働力って500〜600万人でしょ。焼け石に水レベルですよね。一番大きい層って誰よ? 目の前にいるじゃん(笑)と言いたい。

駒崎 日本語のコミュニケーションにも問題ない人材がこんなにいるのにと。
日本のワーママ我慢せず「助けを借りる」行動が大事 | 駒崎弘樹 社会を変えるダイアローグ | 日経DUAL

M字カーブは解消されつつあるが

男女間の就業格差は、昔と比べると、是正されつつあります。

たとえば、子育て・介護のタイミング以降に復職できなくなることによる生じる、いわゆる「M字カーブ」は浅くなってきています

((女性の年齢階級別労働力率(M字カーブ)の状況)
女性の年齢階級別労働力率を見ると,30歳代に落ち込みが見られる,いわゆる「M字カーブ」を描いているものの,そのカーブは以前に比べて浅くなっており,M字の底となる年齢階級も上昇している。
男女共同参画白書(概要版) 平成30年版 | 内閣府男女共同参画局

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しかし、いまだ役員・管理職比率は低く、復職はできても男性同様に活躍する機会はまだ限定的なままかもしれません。

(役員・管理職に占める女性の割合)
上場企業の役員に占める女性の割合は長期的に上昇傾向にあり,平成29年は3.7%と前年に比べ0.3%ポイント上昇した。

我が国の管理的職業従事者に占める女性の割合は,平成29年においては13.2%であり,諸外国と比べて低い水準となっている(I-2-13図)。
男女共同参画白書(概要版) 平成30年版 | 内閣府男女共同参画局

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私自身、子供を持ち、共働きで働きはじめて、毎日数時間、保育園の送り迎えなどの時間が必要になりました。それからは、職場で時間不足を感じることや、うまく時間を使えないことも増えました。

今回紹介する研究に出会わなければ、いまだ「家族の分、キャリアを諦めなければ」という思いからは逃れられなかったでしょう。


仕事は育児に生かせるし、育児は仕事の役に立つ

「ワークライフバランス」を言葉通りとらえると、「ワークとライフのバランスをどう取るか」というトレードオフの考えにどうしても陥ります。

しかし、本書を読んだ後、「ワークもライフも、どちらも担い手は自分(とパートナー)の時間や経験、知識を使い、チームで行うもの。トレードオフではなく、相乗効果を得られるような捉え方ができる」と考えるようになりました。

本書でも、第一章では育児と仕事にまつわる環境や、その考え方について触れられています。

第二章以降は、研究結果をもとに、もっと具体的な内容に踏み入ります。


育児は、リーダーの行動とよく似ている?

育児はリーダーの行動とよく似ています。

本書では一貫して「チーム育児」を扱うのですが、第二章の冒頭では、育児の仕事をわかりやすく図表化しています。

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これは、まさに職場でやっていることじゃないか?

たとえば、以下のようにと置き換えれば、職場でマネジャーやリーダーが担う内容とそっくりです。

・育児の体制作り → 職場の体制作り
・家庭外との連携 → 社外や取引先との連携
・育児情報共有 → 社内での情報共有

このような協力体制で育児を行うことを本書では「チーム育児」と呼びます。

家庭と職場での仕事の共通点に着目し、「チーム育児は仕事の役に立つ」という立場に立ち、以降のページでは家庭の経験と関連についての実証研究を紹介しています。


チーム育児は、リーダー行動にも役に立つ

第三章では、育児での行動と、リーダーシップ行動の関係に着目します。

本書では、「育児がすべて仕事に役に立つ」のではなく、「どの育児行動が、職場での業務に影響するのか」というところまで調査をして踏み込んでいることが特徴です。

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「家族と協働して家事を計画したり実践したりすること」あるいは「家庭外と協同して育児を実践すること」は、リーダーシップ行動に変化を与えています。

「職場での発達的挑戦」よりも「(家庭内での)協働の計画と実践」の影響の方が高いのは驚きでした。

つまり、「家族と一緒に計画を立てて、家庭外の人も巻き込んで実践できる」と、職場でのリーダーシップ行動の発達に好影響を与えるのです。

言われてみると納得できる話ですが、言われてみないと自分で気づくのは難しい。この結果は、私の考え方を大きく変えました。


育児は、通常業務にも役に立つ?

次に、「チーム育児」が「リーダーの行動」に限らず、職務能力向上にも影響しているかを調べた結果が以下の図です。

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育児の計画をともに実践する経験は、広範囲の業務スキル向上に繋がるようです。また、家庭外を巻き込むプロジェクトや、育児の実行経験もプラスに働いています。

また、育児の情報共有だけでは、業務に好影響はみられないのも面白い結果です。

育児をすることで、絵がうまくなったり、英語ができたり、専門性が養われるわけではないですが、上記の6つの能力は広範な仕事で生きるはず。

「管理業務に限らずとも育児と業務間の好影響があること」は、励みになる結果です。


「ひとりでできるもん」から卒業し、ヘルプシーキング志向を

第五章では、「チーム育児」の体制を作られる人、そうでない人はどういう違いがあるかが語られています。

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育児=職場でのパフォーマンスアップではなく、職場にも生きる「チーム育児の体制づくり」ができる人は、どのような環境にいるか。

ここには、職場からの支援、配偶者同士の期待に加え、男女双方で「ヘルプシーキング思考」が重要だと書かれています。

「ヘルプシーキング思考」とは被援助志向を持つ人、つまり人に助けをもとめることはいいことなんだという考え方をしている人ほど、育児の体制づくりに良い影響を持つということ。

確かに、自分だけで育児の仕事を抱えていると、それは「チームで育児」をしていることにはなりません

育児が得意な人でも、もう片方のパートナーを信頼し、頼っていかないと、チームとしての体制づくりはうまくいかないのです。

職場環境の影響も見逃せません。

片方が長時間労働が課せられている職場では、そもそも家族との時間をとる体制は作れません。


育児がマネジメント経験の入り口になる人も

育児自体が、はじめてのマネジメント経験にもなりえます。

30代後半から40代にならないと管理職になれない組織も少なくありません。そんな組織では、育児がマネジメント経験の入り口になる人もいるでしょう。

会社側が組織内のポジションはすぐに与えられなくても、家庭でのチーム育児経験を支援することで、未来の有望なマネジャーを見出すことができるかもしれません。

こう考えると、育児がキャリアのブランクになるどころか、むしろ「新しいキャリアへの助走」だと捉えられます。

また、家庭外の協働経験はマネジメントへの興味を促すという結果もあります。

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協働の育児経験により、マネジメント的役割を魅力に感じる人も増えるようです。

「若者は管理職になりたがらない」と言われることがありますが、チーム育児を通してマネジメントへの魅力まで感じてもらえるのであれば、マネジメント人材不足の企業にとっては、非常にポジティブなキャリアステップだと捉えられないでしょうか。

理想的すぎるかもしれませんが、一連の研究をつなぐと、こんなサイクルも生まれる未来を期待させます。

子育てと仕事の好循環の例
子育てをはじめる
→育児に仕事を活かしつつ家でマネジメント経験をする
→職場の仕事も効率化し、マネジメントの現場にソフトランディングできる
→さらにキャリアアップする


育児本とビジネス書の共通点が多い

本書にも、筆者同士のエピソードはたくさん紹介されており、育児本とビジネス書での話はよく似ていることに気づきます。

以下の二冊はおすすめの子育て事例が詰まっているのですが、ビジネスでの学びを家庭でも生かし、家庭でのマネジメント経験をビジネスで応用している例を多く学べました。

特に、経営者の家庭マネジメント方法の中には、クリエイティブな方法がよく出てきます。

もしかすると、ビジネス書よりも子育て事例の方が、無駄な誇張や利害関係に配慮した脚色が少なく、実践に生かしやすいです。


育児と仕事を、二項対立ではなく、相互作用のある機会同士だと捉える

子育てには非常に時間を取られる。これは逃れようのない事実です。

一方で、家庭での経験を職場でも生かすことはできます。

そして、家庭での経験を他の場所でも応用できるよう、もっと育児を工夫していくことも可能だと本書は信じさせてくれます。

育児と職場をつなぐ指南になるような情報が、本書、そして育児を工夫している経験者の話に詰まっているはずです。


読むだけで終わらないために

理想論で終わりたい気持ちもあるのですが、理解するのと実践するのはわけが違います

単に子育てをしているだけで仕事に生きるわけではない、ということは、本書で様々な切り口を使って示しているともいえます。

そもそも、子供がいるだけで仕事ができるなら、年功序列はもっと機能...(以下略)。

本書でも、「実際に私達は「チーム育児」どのように実践していけば良いか」を、最後の第六章で触れています。

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その形はシンプルで、ふりかえる→見なおす→やってみる、の3ステップ。

ここまで読んでくれた子育てしている方は、是非「自分が育児をやっているかどうか」だけでなく、本書でポイントとなっている以下の3問だけでも「ふりかえり」をやってみてください。

・協働の計画と実践:どのように家庭内での育児・家事の計画を作ったり見直しをしていますか?
・ヘルプシーキング志向:パートナーや家庭外(ベビーシッター・家事代行なド含む)に、どれくらい頼ろうとしていますか?
・配偶者からの育児連携期待:パートナーから、どのような育児の期待をされていますか?

せっかくなので、「子育てって、仕事に効くらしいよ」ではなく、「子育てって、仕事に生きてるの実感するわー」という人が一人でも増えることを望んでいます。

ということで、今日も長くなったので、あらためて本書を紹介して終わりにします。



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