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君に届ける、初夏の風5

おはようございます。週末が明けてしまいましたね…。学校が忙しくなってきて、投稿頻度が下がるかもしれませんが、どうぞお付き合いください。
それと、スキしてくださる皆さん、本当にありがとうございます!今回もお付き合いください。

君に届ける、初夏の風|仲戸カナ角|note



雨が地面と葉に打ち付けてうるさいはずなのに、山がそのほかのざわめきを生み出し始めたことに勝はすぐ気が付いた。実際には木立の影で監視している人間が、だが。何かあったのは間違いないだろう。奉納する舞から集中がそれないよう注意しつつ、勝は彼らの声に耳を傾けた。
―な……あおいさ…しら‥いのか、‥づけては…ごじつ…のう‥
 
 
…あおい?…葵なのだろうか。わずかにしか聞き取れなかった言葉の断片をつなぎ合わせていると、有事用の太鼓が鳴った。本当に何かあったんだ。
木陰からお目付け役が姿を現し、神のいる神殿に一礼してから勝のもとに膝間づいて、
「舞の奉納中の御無礼をお許しください。先ほど神事中にもかかわらず、この御山に入山した者がおります。ですので、本日の御祝宴はこれにて中止、日を改めて御祝宴を再度行うとのことでございます。」と語った。
 
 
歩を進めていると、森の四方からがさがさと音を鳴らして白い衣装、あるいは黒い衣装をまとった集団が葵のもとに集まってきた。大変焦ったような、怒ったような顔で、だ。葵はその顔に笑いがこぼれてしまった。山守の人間はみな能面のような顔をしていると思っていたが、自分が彼らをここまで感情を乗せた表情にしてやったのだ。
 
 
「血は争えんわけか。じゃじゃ馬娘の息子というのはやはり本当のようだねぇ。」
ばあさまの言葉には抑揚が感じられないのに、そこのない失望やらいかりやらが感じられた。
「悪気はありませんでした」。
「よう言うわ。この屋敷に来てたった一日で、この屋敷で最も大切な行事の邪魔をするものかね。」
「つい、うっかり外に出てしまっただけですよ。」
おばあは目をあけ、葵の顔をすがめた。面倒なことに首をつっこんだ。葵はそう思ったが、この老婆に疑われてはもう逃れられないだろう。葵は腹をくくった。
 
「実はお願いがあるんです。」


続く。


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