『執念第一』#毎週ショートショートnote
東京の、よくある高架下に〈オシアンの男〉というのがいる。なんでもこの男はボロ布のような服を着て、長い口髭の隙間から毎日ひたすらオシアンの詩をつぶやいているらしい。
私がそこを通りかかったのはただの偶然で、男に近寄っていったのジャーナリストの母の血だろうか。
「なぜひたすらオシアンを唄うの。」
汚い老人にどうしても嫌悪感をぬぐえず、ぶっきらぼうに聞く。
「お前は、オシアンを知っているのか。オシアンをロッテと唄ったウェッテルを知るか。」
「ゲーテの?」
尋ねると、男がひげを