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#毎週ショートショート『グリム童話ATM』

引き出す物は、物語。
代償は、あなたの行く末。

「どうにもこうにも先行きが不安で、真っ暗に感じて鬱っぽくなってしまったり、犯罪や自殺を犯す人の割合が多くなってきています。」

イタリア製の3ピーススーツを着た30か40そこらの男が壇上で語る。

「わが社はそんな社会問題を解決すべく、童話による運命選択装置を開発いたしました。」

その掛け声とともに男の背後にはメタリックで近未来的な装置が映し出された。人一人はすっぽり入るであろう大きさだ。

「運命の選択と言っても、非科学的な、まじない的な手段を用いるわけではありません。我々は科学的にこの選択を行います。
つまり、無作為抽出された童話に含まれる起承転結と道徳を、この装置を用いて被検体の脳に刷り込むことで、以後被検体の人生選択は抽出された童話の構成に則って判断され、人生の中核に添えられる道徳も、この童話内で特に重要視されているものとなるのです。」

男の話を聞いていた、これまた同じようなスーツに身にまとった男たちがざわめきだした。

これまで迷いに迷っていた人生設計を人に決めてもらえるのか。何とも素晴らしい。
そんな声がざわめきから聞こえてくるようであった。


「ちなみに、僕はプロトタイプを使用してみました。」
壇上の男は面白そうに笑って言う。人工的な白い歯がちらつく。


「シナリオはイソップ童話、『嘘をつく子供』。
物語は起こったばかりです。」

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