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#毎週ショートショート【理科室まがった】

「ねぇ、穂香がカンナから聞いて、カンナは俊介から聞いて、俊介は康生から聞いて、結局康生は誰からか聞いたか覚えてない話、聞きたい?」
1限終わりに春野は楽しそうに私の席に寄ってきて話す。
落合春野は学校の噂や秘密が大好きである。彼女と仲のいい私は春野にいつも連れられ、その噂の検証や厄介ごとに巻き込まれたりするわけだが、それなりに楽しい高校生活を過ごしている。

「どうぞ話してくださいよ。」
毎度の長たらしい情報源の説明にはもうツッコまない。

「うちの学校に秘密の部屋があるらしいよ~。」
大変うれしそうなにんまりした笑みをたたえて春野は言う。
春野の話では、中高一貫で、旧校舎、新校舎の立ち並ぶこのどでかい学校のどこかに秘密の部屋はあるらしい。ただそれだけの情報である。
探すとなれば途方もない作業になるが…。

春野の目を見る。キラキラと好奇心であふれかえっていた。
「今日から探そうぜ!」
こうなっては春野は止まらない。はぁ、と一つため息をついてから私は頷いた。

 例の噂話の調査を始めてから1週間が経とうとしていたが、全く手掛かりはなった。さすがに広い校舎なので、春野が旧校舎、私が新校舎の担当となって手がかりを探す。
テスト期間で人気のない放課後の校舎を歩くのはなかなか怖さがある。怖いのは春野も同じなので、通話をつないで調査をしていた。電話越しに春野の歩く音が聞こえて少しホッとする。

 窓から西日が入ってきて顔面の右半分だけあつい。そろそろ五時半になるくらいである。まっすぐと長い廊下の最後にある第一理科室に差し掛かった。
「え?」
思わず私は声を出す。

行き止まりのはずの廊下、しっかりと左手には理科室があるのだが、その先に通路らしきものがあった。怖さがあるのになぜか足が進む。

『どうしたの?』
動揺が伝わったのか、少し緊張した調子で電話越しの春野が聞く。

「今、第一理科室曲れたんだけど。」


先に何があるかはご想像にお任せします。

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