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祖母との約束

私が着物に興味を持ったのは二十歳の成人式の時でした。

それまで和服といえば浴衣しか着たことがなく、身近にも普段から和服を着ている人はいませんでした。

振袖を初めて着た時、着付けをしてもらう時に紐だけでピタッと身体に馴染んでくる感じや、帯一つでさまざまな結び方ができるのを知って興味を持ち始めました。

私は普段、猫背気味なので着物を着た時の背筋が伸びる感じも好きでした。

それからも姉の結婚式や卒業式など何回か着物を着る機会はあり、いつかは自分で着られるようになりたいと思いながらも、若い人で普段から着物を着ている人も少なく、もう少し歳を取ってから習えばいいかな、と何となく考えていました。

就職してから数年経って仕事も落ち着いてきたし、プライベートの時間も余裕があったので、何か習い事を始めようと思っていろいろ調べていた頃、祖母が入院したと連絡が来ました。

祖母は昔は時々着物を着ていたし、今でも何枚か着物を持っているはずという話を母から聞いたことがあり、写真でも見たことはありました。

実際に着ているところは見たことはなかったけど、身近では一番着物を着ていた人でした。

そんな祖母が去年の3月に亡くなりました。

祖母が元気だった頃、私の結婚式には出られないかな、と呟いた祖母に「ちゃんと出られるうちに結婚するから!」と言って約束しましたが、残念ながらそれは叶いませんでした。

それから私が他に今からでもできることはないかな、と考えた時に思いついたのが着物でした。

母が嫁入り道具で作ってもらっていた着物があるのは知っていたので、それを着られたらいいかなと思っていました。

母に相談して一緒に着物を探していると3枚程あり、母は「私は1回着たくらいで、一度も着たことがないのもあるから、着てあげられたらおばあちゃんも喜ぶと思う」と言ってくれました。

なので、そのうちの一枚を自分のサイズに仕立て直してもらって、ちゃんと自分で着られるようになろうと思って着付け教室に通うことに決めました。

最初、着付けを習うことを姉に話した時は、少し苦笑い気味でしたが、私が自分で着られるようになってきたし、着物も綺麗になって戻ってきたと言うと、「子供の七五三の時に私もその着物着せてもらおうかな」と言われました。

祖母が母に作った着物が私たち姉妹も着ていると知ったら、とても喜んでくれるのではないか、と思います。

今年の11月に姉にその着物を私が着付けようと思っています。

実際に私たちが着ているところを見せることができないのが本当に残念ですが、必ずどこかから見てくれているのではないかと思うので、それを見て喜んでくれればいいな、と思います。

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