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便利な日々とたまの不条理

気まぐれに開いたNetflixに新しい履歴が増えていた
もう誰にアカウントを貸したかも覚えてない
でも確かに、誰かが私の恩恵を受けて生きているという事実がそこにあった
押し付けがましい優しさが欲しいわけじゃない
ただ私は、私が生きていた日々を
誰かがふとした時に思い出してくれることを
愛と呼び続けたい

わかりもしないことについて議論を続ける哲学のように君が好きだった
過去形にできる幸せを噛み締めながら泡風呂の泡が潰れていく様を眺めている
難しい言葉は好きじゃない
まだ遠い七夕を目掛けて下げられた願い事の純粋さに嫉妬した
わからないと思った感情は至ってシンプルで
ジェラシーの先にある虚空は
私がいつか入る墓地の色をしていた

花束みたいな恋をしたは、やっぱり観れなかった
坂本裕二は本当に意地悪だ
人並みの人生経験を積んできた自分には
そこら辺のホラー映画よりも恐ろしかった
社会現象になって住みたかった駅の家賃相場が上がってしまうんじゃないかとも思いつつ
正気を保つためにお酒を流し込んだ

食べられなかったものが食べられるようになったり
よく連絡をとっていた人と疎遠になったり
よく聴いていた音楽を聴かなくなったり
それでも私はまだ逆上がりができない運動音痴のあの子のままで
小さな心に秘めたなけなしの感情たちを寄せ集めて何とか形を保ってる
君が好きだと叫べたら明日は変わるのか
少し長くなった1日に思いを馳せて
朝5時の夕陽を見つめていた

面倒臭いで片付けてしまった昨日を
片腕に抱えた今日と一緒に
目一杯の謝罪を込めて抱きしめる
腕が足りないから明日は君が持っておいてよね
自己犠牲はもう流行ってないらしい

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