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散文3

時々、自分の心は凍てついているのではないかと思う
度を超えた優しさは、人をダメにするなら
私は人類みんなダメにしてやりたい

世界に嫌気がさした頃
自分の存在が揺らいだ夜
駆け足で送られた現在地に向かっていた
この優しさがぬるま湯なら
そのうちに冷え切ってしまうのだろうと感じてた
君をすり抜ける私の言葉が地面に落ちる音がした

飲み干した缶チューハイを置く音が
地獄の鐘だとしたら
余程早くそちらに行きたかった
数回のキスでは足りなかった愛情について考える日々が続いていた
掬い上げた両手に慣れない温もりを感じた

もう10年ほど泣きながら毎日を過ごして
出なかった涙はアルコールと共に流れ出た
あの子をさすった右手で
今は君と手を繋いでいる

胸元の刺青を撫でる指の細さや
細かくうねる髪の毛
寝起きに必ず吸う煙草と、お風呂上がりの香り
私の頬を撫でる骨ばった手を独り占めできるなら、なんだっていいと思う
愛とは至って単純なものだったと思い出す
ぼやけた視界に君が映っていた

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