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JW83 神八井耳の神社

【綏靖天皇編】エピソード11 神八井耳の神社


第二代大王(おおきみ)となった、綏靖天皇(すいぜいてんのう)こと神渟名川耳尊(かんぬなかわみみ・のみこと)(以下、ヌンちゃん)の大后(おおきさき)が決定された。

そして、その二年後、すなわち、紀元前578年、皇紀83年(綏靖天皇4)4月、前回の予告通り、兄の神八井耳命(かんやいみみ・のみこと)(以下、カンヤ)が死を迎えようとしていた。

カンヤ「よ・・・予告通りやな・・・。」

ヌンちゃん「嘘やろ? 嘘と言っておくんなはれ!」

カンヤ「こ・・・こいは仕方なかこつ・・・なんやじ。台本通りっちゃが。」

ヌンちゃん「にいやん、何か言い残したことはありまへんか?」

カンヤ「有るじ。じゃ・・・じゃっどん、我はもう、命が幾ばくも無いっちゃ。そいで、新たな世代たちに解説をしてもらおうち、思っちょる。」

ヌンちゃん「新たな?」

カンヤ「うむ。皆、入れ!」

するとそこに、若者たちが入って来た。

カンヤ「ま・・・まずは、大倭氏(やまと・し)代表の武速持(たけはやもち)っちゃ。椎根津彦(しいねつひこ)の孫で、志麻津見(しまつみ)の息子っちゃが。モチと呼んでくんない。」

モチ「武速持(たけはやもち)やに。よろしくやに。」

カンヤ「つ・・・次は、磯城氏(しき・し)代表の太真稚彦(ふとまわかひこ)やじ。弟磯城(おとしき)こと黒速(くろはや)の孫で、葉江(はえ)の息子っちゃ。フトマと呼んでくんない。」

フトマ「太真稚彦(ふとまわかひこ)です。よろしく御願い致します。」

カンヤ「次は、葛城氏(かずらき・し)代表の久多美(くたみ)やじ。クタと呼んでくんない。剣根(つるぎね)の孫で、夜麻都俾(やまとべ)ことヤマトの息子っちゃが。」

クタ「久多美(くたみ)にござりまする。以後、お見知りおきを・・・。」

ヌンちゃん「いっぱい出たなぁ。モチ、フトマ、クタ・・・やな?」

家来たちの家系図

カンヤ「じゃが(そうだ)。では、三人で、うまく解説するんや。」

モチ・フトマ・クタ「御意!」×3

クタ「ではまず、我から解説を始めまする。カンヤ様は亡くなられたのち、神社に祀(まつ)られることになりまする。」

フトマ「その名も、多坐弥理都比古神社(おおにいますみしりつひこ・じんじゃ)ですよ。」

ヌンちゃん「まだ、にいやんが生きてるのに、そないな話題から始めるんかい!」

モチ「じゃっどん、神社紹介は大事でしょ?」

カンヤ「じゃが(そうだ)。我が祀られた・・・もとい、祀られる神社は、元々、我の屋敷やないかち、思うちょる。」

ヌンちゃん「そこで祭祀(さいし)をおこなっていたっちゅうことですな?」

カンヤ「じゃが(そうだ)。やかい(だから)、神社になったんやろな。」

ヌンちゃん「ところで、神社の場所は、二千年後のどこになるんや?」

モチ「二千年後の奈良県田原本町(たわらもとちょう)の多(おお)に鎮座してるっちゃ。」

フトマ「なので、多神社(おお・じんじゃ)とも呼ばれておりますよ。」

多神社1
多神社2
多神社3
多神社4
多神社5
多神社6
多神社拝殿

モチ「ちなみに、『古事記(こじき)』の編集者である、太安万侶(おお・の・やすまろ)の出身地でもあるに!」

ヌンちゃん「確か、にいやんの子孫が多臣(おお・の・おみ)になるんやったな。漢字が違うけど、その多一族の出身なんやろ?」

クタ「その通りにござりまする。『多』と書いても『太』と書いても、同じ『おお』一族にござる。昔は、漢字表記に厳密な決まりがなかったようですな。」

ヌンちゃん「せやけど、地名の方は『多』になってるんやな。」

フトマ「最終的に『多』になっちゃったんでしょうね。」

モチ「御祭神は、先ほど言った通り、カンヤ様ですが、実は大王(おおきみ)も一緒に祀られてるんやに。」

ヌンちゃん「えっ? わても?」

クタ「それだけではありませぬぞ。御初代様こと神武天皇(じんむてんのう)と神武天皇の母君、玉依姫(たまよりひめ)も祀られておりまする。」

多神社鳥居
多神社案内板

ヌンちゃん「そうか・・・『おとん』と『ばあやん』も・・・。あれ? 『じいやん』は?」

モチ・フトマ・クタ「・・・・・・。」×3

ヌンちゃん「これが『おとん』の言ってた、華麗にスルーっちゅうやつか・・・。」

フトマ「さて、カンヤ様の子孫で有名なのは多臣(おお・の・おみ)ですね。それについては、先ほども述べましたし、エピソード80でも紹介しております。しかし・・・。」

ヌンちゃん「なんや? 他にもおるんかいな。」

モチ「じゃが(そうです)。それ以外にも、たくさんの氏族の始祖となっておられるんやに。」

ヌンちゃん「ホンマか? 言うてみぃ。」

フトマ「小子部連(ちいさこべ・の・むらじ)や坂合部連(さかいべ・の・むらじ)など、十九氏の始祖となっております。」

ヌンちゃん「ところで、臣(おみ)とか連(むらじ)って、どういう意味やねん?」

カンヤ「えっ? ヌンちゃん? エピソード80では、尋ねて来なかったやないか?」

ヌンちゃん「ま・・・まあ、あれは知ったかぶり・・・と言いますか、今回の為に取っておいたと言いますか・・・。まあ、ええやないですか。」

クタ「で・・・では、それについては、我が答えまする。これは、姓(かばね)にござりまする。」

ヌンちゃん「姓(かばね)?」

クタ「いわゆる、家の家格と申しますか、何を担当する家柄なのかを表したものにござりまする。」

モチ「じゃが(そうです)。我らの時代には、まだ存在してないち思いますが、後々、頻出(ひんしゅつ)されるんで、覚えておいてくんない。」

フトマ「最初に出てきた、多臣(おお・の・おみ)を参考にしますと『多』が氏で『臣』が姓(かばね)ということになりますね。」

ヌンちゃん「小子部(ちさこべ)が氏で、連(むらじ)が姓か・・・。せやけど『臣』と『連』の違いは何なんや?」

余命幾ばくも無いカンヤを放置して、解説は続くのであった。


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