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白鳥の羽

 私がABT(アメリカン・バレエ・シアター)のサマーインテンシブに参加して、教えていただいた元バレエダンサーの1人が、キューバ出身の先生だった。彼はその時、「公演で日本にも来たことがある」と言っていた。「あの時に食べた焼きそばが今までの人生で1番美味しかった、あの焼きそばは忘れられないよ」と言って、合宿でたどたどしく英語を話す私に気を遣ってくれた。


 彼からはキューバのバレエを教えていただいた。すごく勉強になった。
何が勉強になったかというと、まず、1つ1つの動きに対して繊細かつ丁寧にこなしていく。丁寧なのに、体が大きいからなのか、ダイナミック。足捌きも丁寧。体幹もしっかりしていて、とにかくブレない。
 日本にいた頃、身長も高く、体が大きい私はすごく苦労した。体の小さな人と踊っていたからか、自分の体の使い方や見せ方がよくわからなかった。でも、アメリカ人もさることながら、キューバ人も手足が長く背が大きい人が多い。そんな中で骨や筋肉の使い方を丁寧に教えてもらう事ができ、キューバ出身の先生からの指導はとてもわかりやすいと感じた。

 キューバのバレエと日本のバレエで似ているところは、基本に忠実で、ダンサーが皆丁寧に踊っているところだと思う。一方で異なるところは、キューバのバレエはどこか伸びがあってしなやかで、役に応じて表現が本当に非常に豊かだと思う。

 それから数年後、福岡の岡本バレエ団で、キューバ出身の、ベルリン国立バレエのプリンシパルダンサーと出会う機会に恵まれた。その時にもやはり、ABTで教わった時と同じバレエのテクニックを感じた。やはりキューバのバレエは素晴らしいんだな、どこの国でも認められているんだなと思った。
それと同時に、踊りを見て、キューバの方は真面目な方が多いとも思った。

 日本に帰国して日本という国がすごいと思ったことは、もう何十年も前から、芸術を担う若者達を海外に送り出しているということ。それから、その技術を伝承し、私達世代に教えてくださる機会がダンサー全員に恵まれている、ということ。
私の師である尾本安代先生も、若者として海外に送り出され、そして学んだ技術を次世代のダンサーに教えてくださる1人である。
尾本安代先生は若い頃、キューバ国立バレエ団に研修で行ったようだ。
(詳しくはWikipediaで見ていただければ⬇️)

 私と尾本先生との出会いは、懇意にしていただいたバレエ教室からの紹介で、たまたま講習会を受けることになった。その時に教えていただいたレッスンが、ABTで教えて頂いたキューバ出身の先生と教え方が似てると、直感で思った。後に、尾本先生がキューバに留学をされていたことを知ることになって、本当に日本ってすごい、と感じた。
日本に住んでいるのに、あの素晴らしいキューバのバレエテクニックを教えてもらえて、しかも日本語で丁寧に指導が進んでいく。
こうやって、海外で見て学んだ指導を、日本に帰国しても日本人から学べるということを肌で感じることができて、日本人として生まれてよかったなと誇らしく思えた。



 今回私は夏に、『白鳥の湖』2幕より、オデット(白鳥)を踊る予定である。尾本先生が指導しているYouTubeの動画を観て、羽を意識して練習何度もしようと思う。
 なぜかというと、尾本先生の腕の動きから、白鳥の羽の中にもキューバのバレエの技術を感じるからである。あの丁寧な羽の動き。あの動きを私も表現できるようになりたい。体力ももちろん必要だけれど、簡単そうでそうではない非常に難しいテクニックも必要なこの演目を踊れることが嬉しくて嬉しくて。

 みんなにも是非、動画を観ながら白鳥の羽の動きを練習してみてほしい。腕も背中もスッキリするからダイエットにもつながるし、姿勢も綺麗に見えると思う。
(下記のリンクをクリックすると見れます⬇️)


 話を元に戻すと、ABTサマーインテンシブ終了日にU.F.O.(日本のインスタント焼きそば)を渡したら喜んでくれた。



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