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忘れられない景色

もうすぐ雨が降りそうな厚い雲が冬の空を覆っている。自転車で走るには寒すぎるけれどまだ冬本番じゃないらしい。あいにく新月も相まって、星一つ見えない夜です。

「世界の絶景」とか「忘れられない景色」という番組を見ていて、さて私の場合はなんだろう、と考えた。考えて考えて考えて..結局浮かんできたのは、、目の前の出来立ての肉じゃがだった。美味しそう。

自然の織りなす風景はもちろん好きだし、旅行は大好きだ。鈴虫寺の入り口に茂った緑や木漏れ日とか、旭岳の一面銀世界、大学通りを圧巻する桜並木、もちろんバンコクのスコールの中を駆けていくトゥクトゥクから見た景色とか、トルコの情緒ある旧市街に時を刻む大きな時計、ハワイのホテルから見た朝焼けなど、覚えているものもいくつかある。けれど「忘れられない景色」かというと、そうでもない。

どちらかと言えば、その旅の途中で食べた道の駅で買ったホカホカの肉まんとか濃厚なソフトクリーム、スペインの美術館の入場券を無くしてひとり入れずにいたところ隣に座っていた外国の方が話しかけてくれて一緒に食べたちょうど良い塩気のポップコーン、ハワイでなぜか仕事が立て込んだ私に友達が買ってきてくれた豚汁、そういった食べ物の方が記憶に残っている。

当たり前のことかもしれないけれど、絶景やこの食べ物自体だけではなくて、そこに思い出が乗っかって初めてより深く記憶に刻まれている構造になっていく。

そんな私にも、自然の景色ではないけれどひとつだけあった。

数年前の最推しのライブツアー、その日はクリスマスイブだった。その年は本当これでもかというぐらいボロボロの1年で心身ともにもう限界だった。そんな中で奇跡的に取れたライブチケット、ドーム入り口で出力された紙チケットの席を見たらアリーナ席だった。生まれて初めてのアリーナ。チェックしてもらわないと入れない檻の中に入っていく。席はセンターステージの前から3列目だった。推しの一挙手一投足が手にとるようにわかることに、とても感動した。こんな席があるのか。こんなボロボロの私にも、こんなプレゼントが貰えるのか。こんな私にも、道を示してくれているのか、そう思うと泣けてきた。推しが最高に楽しんでいてキラッキラに輝いている。それを感じとっている会場一体の熱気とテンションが、際限なくブチ上がっている会場はまさに圧巻。こんな景色を私も作る側になりたい、と心に決めた。

やっぱり推しだなぁ、推しなくしていまの私はいないなぁと部屋をまだまだ片付けながら思う日曜の夜。

ライブでノリでも感動でも心を奪って一体となれる曲、聴く人の心に1秒でも長く残る曲、そういった曲を書いていく。

どんな雑音が聞こえようとも、自分の軸足だけは譲らないよう師走に体を預けることにします。

皆さま今週もどうか穏やかな1週間となりますように。


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