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非日常とリトルミイ

唐突に机の周りが気になった真夜中の入り口。真夜中に限って、昼間したくもない片付けをやりたくなる。ごっそり書類やペン類を捨てることは、さすがにこの時間からは躊躇われるので、こっそりと漫画や文庫本、雑誌をクローゼットに仕舞う。空いた机左手側のスペースには、1体のフィギュア。これからは私の仕事をこのフィギュアが見守ってくれる。戦友みたいな「リトルミイ」。

一人暮らしを始めた頃、家に帰ると玄関にこのフィギュアが置かれていた。リトルミイの貯金箱。普段はとても真面目な親からの可愛らしいジョークに混じった貯金への本気のお誘い。結局、私の生活を見守りながら、もう何年も一緒にいてくれている色褪せないリトルミイ。時にいじわるに、時に優しく見えるその表情。

メッセージを送る。こんな簡単なことが、どうしてこんなにも時間がかかるのか。何をどう書こう..そもそも、どんな話を送ったら相手の重荷にならないのか。そんな事を考え始めたら、始まりの言葉「こんにちは」以降が打てず、打っては消し、打っては消してを繰り返し、気づけば電車に乗った駅からもう8駅過ぎていた日曜の夕方。結局、携帯画面を待ち受けに戻す。待受のリトルミイがこっちを見ている。

踏み出そうとしては、躊躇する。ずっと白線の上で足踏みしている。背中を押すでもない、けど見放すわけでもないリトルミイ。ただ、見つめてくる。

そして、いま欲しいものは「非日常」だと気付いた深夜1時。蒸し暑い夜は続いていく。暑いぃぃ。

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