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人生で成功する「使命型人間」

 人生で大成功する人間には、「使命型人間」と「展開型人間」の二つのタイプがある。

★使命型人間は「天職」を見つければ輝く

 使命型の人間とは、「自分はある仕事をするために生まれてきたのだ」と信じることのできる、幸福なごく少数の人々のことである。
 彼らは若くして、自分の使命は何であるかを十分自覚している。仕事以外には興味を示さず、仕事という大河に生涯を捧げるのである。全身を河に浸しているのだ。
 この典型的人間としては、モーツァルトやレオナルド・ダ・ヴィンチなどがあげられる。今日では、「使命型人間」は何十万人もいて、各分野に散らばっている。
 彼らはあらゆる芸術分野の巨匠たちであり、また文学、科学、社会科学などの分野においても必ず見出すことができる。

★仕事が生活のすべてになり、それに幸福を感じる

 フロリダ大学の脳神経外科の大家アルバート・ロートン博士も、私が「使命型人間」である。

 大学の付属病院の研究所長であるロートン博士は、素晴らしい外科手術の腕前で、多くの人々の命を救ってきた。
 ロートン博士は、早朝から夜が更けるまでこの病院にこもっている。

 ある晴れた日の午後、いっしょに散歩に出かけた際、私は博士に「なぜニューヨークやビバリーヒルズの金持ち相手に診療しないのか」と、冗談まじりに言ってみた。数分間、一言も口をきかずに歩き続けた後、博士はこう答えた。

「ここ以外の場所が考えられるだろうか、アール。よい医療、適切な手術を患者に与えるには、ここを離れるわけにはいかないんだ」

 彼にとって仕事が生活のすべてなのだ。生活とは仕事をすることなのである。家族がロートン博士の姿を見る機会は、ほとんどないのではないか、と思う。
 このようにして、すべての「使命型人間」も、同じような生活を送っているのである。

★ロールス・ロイス誕生の裏側

 フレデリック・ヘンリー・ロイスも「使命型人間」の一人だった。彼の夢は、騒音のない世界最高級の自動車を創ることであった。この考えに端を発して、20世紀の初め、設計と製造において世界の最高級と目される自動車への、取り組みの第一歩が踏み出されたのである。

 当時の自動車エンジンというのは、射撃で穴だらけにした空き缶で作られた、あの衣類乾燥機のような音を立てていたものである。

 ロイスは、内燃機関の部品をできるかぎり精密に製造し、潤滑剤を適所に効果的に差しさえすれば、近くに立っている人にも騒音はほとんど聞こえないはずだ、という確信を持っていた。

 彼はいつも定規で計ったような足取りで工場内を闊歩し、自分のアイディアの進行具合を見回らずにはいられなかったのである。
 食事をとる時間ももどかしかったので、アルバイトの少年を後ろにつけ、腹がすくとサンドイッチや牛乳を渡すよう指示することにしていた。
 そして、眠くなれば工場内の簡易ベッドでうたた寝をし、目がさめるとまた工場の見回りを始める、という徹底さを貫きとおしたのである。

★ヘンリー・ロイスの熱い言葉

 ある日、ロイスはエンジニアの一人が従業員に、「まあ大丈夫だろう」と話しているのを耳にはさみ、カッとしてしまった。

おい君、『まあ大丈夫だろう』とは何事だ! 君はそんな言葉をどこで覚えてきたんだ! 完全なものを創るのが、私たちの努力目標ではなかったのか! むろん私とてまったく完璧なものなど創れないのはわかっている。が、だからこそ、なおさらベストを尽くさなくてはならないのじゃないかね? もっと優れたものを創るという心構えは、君が今はいた言葉からは決して生まれはしないんだぞ!」

 かつて、私はロンドンのロールス・ロイス工場を見学したことがあるが、その際、目に見えないところにまで、不備なところはないかと注意を向けている会社の姿勢には驚かされたものである。このような細心の注意と献身的努力が、ナチスの侵攻を迎え撃った「バトル・オブ・ブリテン」(英国における戦闘)に際しても大いに役立ったのだ。

 ロールス・ロイスのエンジンは、英国のスピットファイア戦闘機のエンジンとして採用されたのである。

★世界的な発明の影にいる使命型人間

 ロイスのように、たゆまず仕事に情熱を傾けることが「使命型人間」の特徴である。〝たゆまず流れる川〟のようなタイプなのだ。世界一流の商品やサービスといったものは、このような「使命型人間」の努力のたまものが多い。

 オートメーションの発明者はだれだろう。実はヘンリー・フォードではない。そもそもはエイーライ・ホイットニーが、ライフル銃の大量生産のために考え出したものなのだ。

 しかし、フォードが自動車の製造にこのシステムを応用した最初の人物であるという事実に違いはない。そしてこのシステムにより、コストを削減し、なおかつ高性能の商品を製造した彼の才能は、伝説にさえなっている。しかも、当時では信じ難い一日5ドルという高賃金制をも実施したのである。これは産業革命下における歴史でも、前代未聞の高賃金だった。

 フォードにも問題がなかったわけではない。いったん決めたことは、決して取り消そうとはしない頑固なところがあった。時代が推移し、経済情勢が変化しても、自分の考えを変えようとはしなかったのである。が、いずれにせよ、ヘンリー・フォードが「使命型人間」の一人であることは間違いない。

★あなたの天職を見つけよう

 確かに現代は、かつてほど単純明快な社会ではない。自分の生きがいを見つけ出そうにも、選択肢があまりにも多くなりすぎ、何を選んだらよいか迷ってしまうような状況だからである。

 しかし、あなたの今の仕事が自分の天職ではないのだとしたら、あなたは何かしらその仕事に対する違和感を感じているはずだ。どうだろうか。
 その場合、自分の心に忠実なら、「この仕事は自分には向いていない」と考え、余暇に他業種の研究を始めることになるだろう。私たちは、給与の額や仕事の内容で職業を決めている。

 そして、どのような職業であれ、100%打ち込むことができるものであれば、あなたはその実力を最大限に発揮し、その職業で最大の成果をあげることができる。



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