見出し画像

『今日のよかった』〜日曜日のウォーキングで〜

画像1

画像2

 日曜日の朝。ゆっくり起きれば良いのに、ついいつもの習慣で早朝に目覚める。この時期のサンパウロの朝6時はまだ日の出前で真っ暗。でも、窓を開ければ雨降りでないこと位は分かる。前日土曜日は降ったり止んだりの生憎の天気だったから「やった!今日は歩きに行ける!」と心の中で密かにガッツポーズ。ライム入りの温かいマテ茶を飲みながら、刻々と変わっていく空色を観察する。至福の時間。自分だけの静かなひととき。

 暫くすると娘が起きて来た。休みの日の朝にしては珍しい。彼女は平日の午前中は大学の授業をオンラインで受けて、午後は建築事務所でのインターンの仕事をやはりオンラインでこなす。夜は遅くまで大学の課題に取り組んでいるか、大学体育会の(彼女はバスケット部に所属している)会計係を引き受けているので、オンラインでの会議に駆り出されることも少なくない。

 朝10時から会議があるからと、8時半には身支度を整えて、ランニングのために家を飛び出した。パンデミック以前は、大学でのトレーニングや練習試合、週末の試合のお陰で完全にスポーツ体型だった娘は、ここのところの運動不足で筋肉量が減って体重も落ちたと嘆く。

 彼女はアパートから1.5km離れた公園の行き帰り、公園の池の周りを何周かを走って帰って来ると言う。とても私がお付き合い出来るような運動量ではない。息子はきっと昼まで寝ているだろうし、「ウォーキングの友」の夫も昼前のオンライン会議の準備で今日は歩かない、と言う。仕方ない、今日はお一人さまウォーキングをすると決め込んだ。

 話し相手がいないのはちょっぴり寂しかったが、こんな時こそ思う存分写真が撮れるかもしれない。スポーツウエアに着替えると、デジカメを首からぶら下げて家を出る。家を出てすぐの路上で、やたらにテンションの高いごみ収集人のおじさんに声を掛けられる。「Bom dia‼︎(おはよう‼︎)」ちょっと面食らうが悪い気はしない。ブラジル人のこう言うところが私は好きだ。私も同じように挨拶を返す。たった一言挨拶を交わしただけで、なんとも清々しい気分になる。

 サンパウロのこの時期は街路樹の花も少ないのだが、ピンク色の可愛らしい花(ヘッダー写真)を見つけて早速パチリ。道を走る幾人ものランナーとすれ違いながら間もなく公園に到着。相変わらず多くの市民で賑わっている。

画像3

画像9

 晴天というわけではないけれど、気温は20℃位。歩くにはちょうど良い陽気だ。イヤホンで音楽を聴きながら歩き始める。(BGMはもちろんSenri Jazz。)歩いているうちにあることに気づく。以前にも増して高齢者の方の姿が目立つようになっているようなのだ。

 サンパウロもワクチンの接種が順次進んで来たせいなのだろうか。今朝(5/25)のニュースでは1回目のワクチン接種を終えた人は人口の20%、2回目は約10%とのことだった。90歳代から始まったワクチン接種は、60歳で一旦ストップ。今は妊婦、公共の交通機関の運転手、基礎疾患のある方を中心に進められている。

 1日の感染者数は以前とさほど変わりはないようだが、死亡者数は最悪時の4000人よりはずっと少なく、今では2000人程度におさまっている。重症化する患者が減ったと言うことか。おじいちゃん、おばあちゃんが幼いお孫さんの手を取りゆっくりと歩かれるお姿に、何だかジーンと来てしまった。長いこと会えなかったのだものね。何気ない日常が少しずつ戻って来ていることを実感する。

 池の周りを3周ほどして、林道に逸れてみる。木立の間は流石にひんやりとするが、それがなんとも心地よく清々しい。途中、目の前をサッと黒いものが横切った。反射的にピカパウ(キツツキ)かな?と思った。下の餌場の前を3回通ったけれど、この日はまだお出ましになっていなかった。デジカメを持参したのはピカパウを撮影するためでもあった。なんとかお会いしたいもの、と思いはしたがなにぶん野鳥が相手。過剰な期待をすると後でガッカリすることにもなりかねない。

 林道のコースを2周ほどして再び池の周りを2周する。流石に疲れて来たし、これで最後にしようと思う。でも帰る前にもう一度、と餌場を覗いてみると。。

画像5

 なんと、先週には会えなかったピカパウくん♂がお食事中であった!あまりの可愛らしさに瞬時に胸を射抜かれる♡

画像6

 この誇らしげに胸を張るお姿、つぶらな瞳、そして金髪パンクヘアー、黒白のマダラ模様のボディ。そしてオス特有の頬の赤い模様。もうこの世のモノとは思えないほどの美しさ♡いつの間にか周りにもたくさん人が集まって、ガヤガヤとピカパウくんにスマホを向けている。

画像7

 因みに、先週のピカパウ♀さんはこちら。ピンボケな写り具合が申し訳ない。でもこちらはこちらでまた愛おしい♡

画像8

 写真を撮っているとあまりの人だかりに嫌気がさしたか、ピカパウくんがサッと餌場を離れた。一気に飛び去るのではなく、近くの木にしがみつき、ピカパウらしさを誇張するところがまた憎らしい演出だ。私からも、周りからも感嘆のため息が漏れる。あぁ、この眼光鋭い眼差し、見事な金髪パンクヘア!一度で良いからその頭を撫で撫でしてみたいもの。。

 ピカパウくんのお食事、ショータイムも終わり、我に返った私は家路につくことにする。結局娘とはすれ違いとなった。いつものベーカリーの前を通りかかるが、今日はあのサンドイッチは我慢。いや、ギリギリまで「カフェオレくらいなら」と迷ってはいたが、前日の買い物ついでにサンドイッチ&カフェオレのセットはいただいたので、断腸の思いで前を素通りする。さほど暑い日でもなく、水分補給が必要というほどでもない。お楽しみはまた来週に!

画像9

 行きとは違う道を選んで歩いていたら、あちこちでおしろい花を見かける。子供たちが小さかった頃、おしろい花の種を採取してはベランダの花壇に蒔いたっけ。黄色にちょこっとピンク色の差し色が入った花が見事に咲いたのだった。幼かった子供たちが競うように種取りをする姿を思い出して、とても懐かしい気持ちになった。

 そうだ、あの時みたいに花壇に種を蒔いてみよう。ピンク、黄色、オレンジ色の花からそれぞれ種を失敬。道端で写真をパチリ。ちゃんと芽が出て花が咲くかな。思いがけず芽吹いて実をつけたトマトのように、運が良ければね。少し先にお楽しみが出来てワクワクする。それまで元気でいないと。


【本日のサイドミュージック】

 ニューヨークのジャズピアニスト、大江千里さんのRoom  Hydrangea(From the album “Spooky Hotel”)。

日本は紫陽花の季節到来ですね♪

 幼少の頃からピアノを習っていた千里少年(先生は音大志望の女子高生だったそう。)がいつものようにピアノ教室に向かうと、そこにはピアノの先生と当時の恋人のお姿が。その時の心情をこの曲に表したそうです。おどろおどろしい曲調が、恋に敗れた千里少年の苦悩を物語っています。紫陽花の咲く頃の出来事だったのでしょうか。妄想が膨らみます。

 先生はパリ在住でオペラ歌手をされているそうで、近年fbで千里さんと繋がられたのだとか。千里さんの作曲の才能にいち早く気づかれた先生。その出会いがあったからこそ、私たちはSenri Jazzに巡り合うことが出来たのでしょう。感謝せずにはいられません。





***


 ルミさんの素敵な企画にのっからせていただきました!本来ならその日の「よかった」を一つ書くべきなのに、「よかった」がいっぱいになってしまいました。お陰様で脳を騙して幸せな気分に浸ることが出来ましたよ!ルミさん、ありがとう♡♡♡

この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?