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チキンのトマト煮の、甘酸っぱい思い出〜大江屋レシピ#191で作ってみた

 家庭の台所を預かる主婦にとって、毎日の献立を考えるって、とても悩ましいことではありませんか?(料理に苦手意識がある私だけなのかな?)特に海外組である私たちには、日本のレシピを見て「美味しそう、作ってみたい!」と思っても同じ材料が易々と手に入るとは限りません。冷蔵庫にある材料の代用でなんとか形にしても、「ちょっと違う?」と思うこともしばしば。

 先日、大江千里さんのこのメニューを見て、「これなら家にある材料で作ることが出来る!」と久しぶりにやる気スイッチがオンになりました。チキンのトマト煮といえば、定番の人気メニューですよね。でも、和食のように丼に盛り付けるところが新鮮なビジュアルです。

 料理のレシピに行く前に、ちょっとチキンのトマト煮に纏わる思い出話を一つ。

 私にとってのチキンのトマト煮といえば、お袋の味でも学食や社食のお気に入りメニューでもなくて。学生時代のアルバイトの時のランチタイムを思い出すのです。

 19歳の春休み。学生にとっては長期の休みということでアルバイト先を探していました。フロムエーという求人誌(今でもあるのでしょうか?)をあてもなくペラペラ捲っていると、当時英文科で学んでいた私に、ピーンと来る文言に出会ったのです。

「国際交流のPRです。学生アルバイト歓迎。」

 漠然と、言葉少なくこんなことが書かれていました。今考えたら物凄く怪しげなのですが、ミステリアスなところに心惹かれてしまいました。勤務先となる事務所は学生街に程近い高田馬場にあるようです。自宅からはちょっと遠かったけれど(総武線、山手線を乗り継いで1時間半くらい?)、兎にも角にも面接に漕ぎつけようと、焦る気持ちを抑えつつ事務所に電話をかけてみました。

 約束の日時に事務所で面接をして即採用。会議室を出たら、私と同じような学生アルバイトがたくさんいて、それまでの緊張が一気にほぐれたことを思い出します。面接で初めて分かったのですが、仕事内容は海外留学に強い大学を目指す受験生のための、予備校の宣伝でした。国際交流といえば間接的にはそうなのか?なんとも面白い誘い文句ですよね。

 誰も知り合いがいない職場ではありましたが、仕事仲間は同じような年頃の学生ばかり。すぐに皆と仲良くなりました。仕事は宛名書きのような内勤あり、パンフレット配布のような外勤もあり。時には、競合となる他予備校に受験生を装って忍び込んで?模擬授業を受け、その内容をレポートするというスリリングなものまでありました。80年代半ば当時で、時給が600円くらいでした。

 仲間たちとの交流で楽しみだったのは(もちろん親睦を目的とした飲み会などもそうでしたが)、先にも述べたランチタイムです。大体行く場所は決まっていて、事務所のあるビルの向かい側にある、オシャレでアメリカンな雰囲気のカフェ?(そんな呼び名は無かったとは思いますが。)そこではもっぱらポークジンジャーを頼んで食べていた記憶があります。店内のモニターで、当時流行ったUSA For Africa のWe Are The Worldが盛んに流れていたことを思い出します。そして、当時破格の500円で食べられた、お寿司屋さんのちらし寿司ランチ。もしくは学生のお財布にいつだって優しかった、ボリューム満点のラーメン。

 1番のお気に入りだったのは、駅の反対側のビルの地下にあったお店のチキンのトマト煮。ちょっと薄暗い雰囲気の洋食屋さんで、AランチとかBランチという定食だったと思うのですが、私にとってはチキンのトマト煮が1番のご馳走でした。鶏のもも肉一枚がじっくりと煮込まれていて、ジューシーな肉にナイフがスッと入ります。時々、オーダーしてからサーブまで時間がかかりすぎてハラハラしましたが、その美味しさに病みつきになってしまいました。

 バイト仲間たちとは、卒業、就職後もしばらく交流がありました。特に親しかった人たちとは、私がこちらに来た後も帰国時に会ったり。バイト生同士で恋が芽生え、その後結婚したカップルがいることなど、近況を聞かせてもらってはノスタルジーに浸ったものです。

 それぞれの結婚、出産、転勤などでライフスタイルが変わってしまうと、仲が良かった人たちとも次第に疎遠になってしまいました。手紙を出して「帰国するよ」とお知らせしていた時代はもう遠い昔。どのように連絡を取ったら良いのかも今は分かりません。それぞれが元気で、幸せに暮してくれていれば、何かのきっかけでまた会える日が来るのかもしれませんね。

 今回検索してみたら、その予備校もチキンのトマト煮のお店もまだあるようです。お店は創業55年とか。多分間違いないと思います。いつかもう一度、あの時の仲間たちと訪れてみたいです。



チキンのトマト煮(大体4人前)

【材料】

鶏胸肉      300グラム
果肉入りトマトソース 300グラム
イタリアントマト 2個
玉ねぎ      1個
ズッキーニ    1本
ニンジン     1本
ナス       1本
ニンニク     4片
イタリアンパセリ 適宜
乾燥オレガノ   適宜
オリーブオイル  適宜
塩胡椒      適宜
ケチャップ    適宜
水        適宜

大江千里さんの正式なレシピはこちら
朝市に行く前日だったので、冷蔵庫の掃除を兼ねて色々入れてみることにしました。


【作り方】

1.冷凍していた鶏胸肉を自然解凍します。玉ねぎ、ニンニクはみじん切りに、トマトは一口大、ナスは銀杏切り(水にさらしてアク抜きをします)、ズッキーニと人参はおろし金でおろしました。野菜が多めなので、野菜から出る自然の旨味、汁にとろみが付くことを期待します。トマトの水煮缶やトマトピューレではなく濃厚なトマトソースを使うので、特に洋風だしの類は加えません。

オリジナルレシピより野菜が多め

2.鍋にオリーブオイルをひいてニンニクの半量、ナスを入れて炒めしんなりとさせて、一旦取り出します。(外国のナスの皮は厚く硬いため。)

アク抜きをしたナスをニンニクと一緒に炒めます。

3.次に、残りのニンニクと、解凍して一口大に切った鶏胸肉を炒め、塩胡椒します。

ニンニクの香りを鶏肉に移すようによく炒めます。
胸肉に効かせる胡椒がポイントのようなので、今回はこちら、ミックス胡椒(黒、白、ピンク胡椒)を使用。

4.野菜を次々に入れて炒め、蓋を閉めてしばし蒸し煮にします。

鍋の蓋を閉めて蒸し煮にすると、水分がこんなに出てきました。

5.ナスを戻し入れてトマトソースを加え、加減を見て少しだけ水を加えて煮ます。

トマトソースは一袋分全部使いました。

6.今回は月桂樹の葉っぱがなかったので、乾燥オレガノやイタリアンパセリで風味を出します。

日本にいた時、同僚のアルゼンチン人がミートパイ(エンパナーダ)作りによく使っていた、乾燥オレガノ。
毎週、朝市でオマケでいただくイタリアンパセリも、惜しみなく使います。(明日新しい束をいただける予定なので)

7.味を見て物足りなければ、お好みでケチャップを追加します。

さらに良い香りがしてきました。

8.ケチャップが全体に回ったら完成です。丼に普通のご飯、トマトソースを盛り付けます。いい具合に煮詰まって美味しそうです。

野菜の運動会のような鍋。

9.トップには、彩りとしてイタリアンパセリをあしらいます。

子供たちはあまり好きではないのですが、映えのために。

10.前日の残り物のいとこ煮、味噌汁、作りたてのビーツのケーキと一緒に配膳して出来上がり♡

娘用の配膳です。全くの左利きなのに、右利きの仕様。茶碗や丼など、掴みづらかったことでしょうと今更ながら。
その日にたまたま作ったビーツのケーキ。
砂糖の分量を増やして、まぁまぁふんわりと仕上がりました。

 撮影に夢中になっていると、お腹を減らして帰宅した娘から「まだ?」と声がかかりました。ペロッと完食。お腹が空いていると何でも美味しいね。

 私が若かりし日にリピートして食べていた一品とは、少し違った味わいですが、脂の少ない胸肉で作るのもあり、と思いました。こんな風に和洋折衷でいただいても違和感なし。オリジナル通りのレシピで作れば、より手早くできます。トマトのほど良い酸味と甘味、そして鶏胸肉にニンニクの風味が染みて、とても美味しかったです。皆さんもどうぞお試しくださいね。因みに少量の残り物は、翌日に作ったいつものカレーの鍋に追加され、味により深みを出してくれました。

【本日のおススメミュージック】

 USA For Africa -We Are The World

 19歳だったあの時、オシャレなカフェで流れていた映像。久しぶりに観たら、いろいろな想いが溢れて泣けてしまいました。こんな未来が待っているなんて、想像だにしていなかったあの頃。

 きっと懐かしく感じる方もいらっしゃるはず。もしよろしければ。今観ても豪華メンバーが勢揃いで、目が釘付けになります。若かりし頃のシンディ・ローパーがお茶目でしたね♡


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