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“妥協はしないけれど、背伸びもしない” KIKIMEのブランドDNAを大解剖(前篇)

Vol.11|キキメノハナシ
プロダクトデザイナー福定 良佑×KIKIMEブランドプロデューサー立山 善規 対談
さまざまな分野で活躍するスペシャリストたちが、その人ならではの目線でKIKIMEを紐解くキキメノハナシ。今回は、2020年6月に産声をあげたKIKIMEの立ち上げ期を大きく動かし、またブランドのDNAを築いてきた二人にフューチャー。

PROFILE|福定 良佑 Ryosuke Fukusada
1979年大阪府生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、シャープ株式会社を経て2008年ミラノドムスアカデミー(インテリアデザインコース)を修了。同年より、ミラノを拠点とするデザイナーパトリシア・ウルキオラのスタジオで経験を積み、イタリア有名メーカーとの家具、照明、キッチンウェアなどのプロジェクトに携わる。2012年帰国後京都にFUKUSADA STUDIOを設立し、国内の企業をはじめ、イタリアやデンマークの企業とのプロジェクトの実績がある。家具・インテリア製品・家庭雑貨などの幅広いデザインを手掛け、それらのプロダクトは国際的なデザイン賞も多数受賞している。

PROFILE|立山 善規 Yoshinori Tateyama
1980年千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒業後、小物雑貨のOEM・販促関連の新規営業と商品や販促物の企画・デザインに従事したのち、プロダクトデザイナーとして株式会社Francfranc(旧 株式会社バルス)に入社。Francfranc商品部でテーブル&キッチンウェアを中心に雑貨全般と家電照明のMD、商品開発、生産管理、VMDまで一貫した業務を経験。また3年半、香港にてアジア店舗への商品供給・アジア工場の新規開拓、海外マーケット販売に携わる。2015年に独立し、2017年10月に株式会社アロットオブを設立。インテリア、雑貨業界の小売・メーカー・商社のブランディングを行い、MD戦略立案から、商品企画・開発・デザイン・VMDまで一貫した業務を行う。2020年に初の自社ブランドとして「KIKIME」をリリース。

今年、ブランドのローンチから3年目を迎えたKIKIME。当初から大切にしてきたのは、作り手と売り手・デザイナー・職人の技術…日常のモノづくりと真面目に向き合うプロフェッショナルが垣根なく集う、“協業”というスタイルです。今回はそんなKIKIMEの“生みの親”であるプロデューサー立山善規と、共にブランドを見つめてきたプロダクトデザイナー福定良佑さんにお話を伺いました。

― 「妥協はしたくないけど、背伸びもしない。」等身大の暮らしにそっと寄り添ってくれるような機能美が特徴的なKIKIMEですが、着想の原点はどこにあるのでしょうか?
(立山さん)「会社としては、クライアントのブランディングから商品のデザイン、売り方まで一貫してお仕事をさせていただいていますが、クライアントへの提案内容も市場の変化と共に、過去の経験だけではなく、新たな要素を模索していた時期でしたし、自分たちのブランディングを体現していく必要を感じ、ブランドを立ち上げようと考えました。
あれこれと自分の中で構想を組み立ていく中で、ロゴのデザインは信頼をおける友人に依頼したいと決めていたので、”今日ブランド名を決めるぞ!”とその友人を誘って、意気込んで呑みにいくことにしました。自分たちでもロゴデザインはできたのですが、主観が強くなり、決めきれないことと、客観的な視点でデザインして欲しいという思いが強かったです。呑みながら想いを友人に話していくうちに、海外から見た日本やこの先海外進出ということを考えたとき、日本のブランドだとわかるように、日本語を派生させたブランド名はどうか?という話になりました。」

(立山さん)「その上で、長年日用品を中心としたモノづくりに携わってきた自分たちならではの視点を活かしたブランドにしたいと思い浮かんだのが『メキキ(目利き)』でした。その場は、『メキキ』で決定し、正式にロゴデザインを依頼してお開きに。楽しみに待つこと数日後、初めてロゴ提案を見たときに、なんか違和感があって…。自分たちならでは、という視点では『目利き』が相応しかったのですが、主観が強く、押し付けがましいのでは、と。ロゴデザインを友人へお願いしたことも客観性を大切にしたいということだったのを思い出し、お客さんにとって親しみを感じてもらえるように、ということで『お客さんにとっての暮らしの“キキメ=効き目”』に。元々の『目利き』も、語呂や発音は気にいっていたので、この由来と共にしっくりきてブランド名が決まりました。」

― なるほど。消費者の暮らしにフィットする“効き目”をもたらすブランドの名前は、視点の転換によって生まれたのですね。
(立山さん)「そう。それでこれからのブランドの展開を考えたときに、やっぱり海外も視野にあって。世界中でブランド名だけを見てみると、どこの国のブランドなのかわからないものって意外に多い。だけど日本の東京発のブランドで、いろいろな産地でのモノづくりをやっていくのであれば、名前からもそれがわかる方がいいなと。例えば、テーブルウェアやキッチン商品カテゴリで海外でも認知がある日本企業の中で、キントーは海外でも『KINTO』で定着しているし、貝印も単純に英訳したら“shell mark”だけど『KAI(カイ)』で認知されている。そんなふうに海外でも日本のブランドだっていうのをわかりやすくしたかったので、『KIKIME(キキメ)』という名前に辿り着きました。」

― ロゴもよく見てみると片仮名の『キキメ』になっていますね。ブランド名とロゴが決まって、どんなプロダクトを作っていくのかイメージはあった?
(立山さん)「当時、アパレル業界が先行して、片仮名がトレンドで。海外で漢字を目にすると、もちろん日本というかアジアのイメージが湧くんだけど、片仮名はより日本らしさをしている象徴というか。“トーキョー”もそうだし、すごく日本を感じる。それでそのまま片仮名の『キキメ』をモチーフにロゴをデザインしてもらいました。」
(立山さん)「ニッチというか、今の雑貨業界でいう狭間の商品ってなんなんだろう?というのはずっと考えていました。差別化できて、真似されにくい商品で、お客さんの暮らしにフィットできる商品は何か?初心に返り、アロットオブのメンバーで何度も話し合い、商品のカテゴリーから模索し始めました。自分たちが得意なこと、お客さんへ提供できることはなんだろう?と。今までライフスタイルに関連したカテゴリーの中でのモノづくりを一通りやってきたんですが、テーブルウェアに関しては、長年携わり深く探究してきていたため、これなら自信を持って良い商品を提供できるなと思ったんです。衣・食・住の中でも食文化はその国々で個性があるし、なくてはならないもの。やっぱりこう、食べることが生きることに繋がっているんだ、とも思いました。」
(福定さん)「確かにビジネスとしてみても、姿はどうであれ、食にまつわることは絶対に消えることはないですもんね。」
(立山さん)「うんうん。それと国内外の産地・工場を周っていて思ったことがあって、意外にも商品カテゴリーによっては、作れる場所がある程度決まっているんです。一方でテーブルウェアになると、国内でも北から南まで様々な産地があって。海外でもそれぞれの国に、食の文化や食に相応しい食器のデザインや土地由来のものがあるんです。しかも日本でいうと縄文土器の時代まで遡ってみても、歴史が相当古いし、各国にその土地で積み重ねてこられたライフスタイルの姿が息づいているなと思って。」

日本の食文化は自然を尊重する日本人の心が表現された伝統的な社会的慣習として、世代を越えて受け継がれていることが評価されて、今や無形文化遺産。海外への展開も視野にいれたモノづくりという上で、やはり日本=和食はポイントだったのでしょうか?
(立山さん)「そうですね。今改めてKIKIMEのラインナップを見てみても、ナイフとフォークを使う食器はなくて。海外での和食人気はもちろんあるし、かつて3年半ほど香港に住んでいた時も、海外に出張へ行った時も、2,3日経つと絶対日本食のお店に行くんです。やっぱり胃袋が求めてくるのかな(笑)福定さんはイタリアに住んでいたときどうだった?」
(福定さん)「基本的には家で自炊して、日本食を食べてましたよ(笑)」
(立山さん)「やっぱりそうだよね(笑)日本じゃなくて海外にいても、和食に触れる機会って増えていると思う。日本人じゃなくてもね。日本食のお店自体が増えているし、クオリティもどんどん上がっているイメージがあって。天ぷら・寿司・とんかつ…みたいに、海外でみる和食のメニューといえば!というのもある。“pork cutlet”じゃなくて“トンカツ”なんだよね。それって英訳されたメニューじゃなく、日本語のまま少しずつ浸透していっているってこと。だから海外における日本食カルチャーにフォーカスしてみたら面白いんじゃないかと思ったところから、amimeが生まれたんです。」

amimeシリーズ

― amimeはもはやKIKIMEの代名詞といえるシリーズ。プレートと網が美しく調和する姿がとても特徴的ですよね。

(立山さん)「そう、とてもニッチなところをついたシリーズ(笑)よくとんかつ屋さんで使用されているお皿にのせる網。あれってとんかつをのせるための網なんだけど、うつわではなく、あくまで調理器具としての網。最近だとお皿として使える網付きのバットとかはあるけれど、やっぱりそれも道具のひとつ。

国内では素材が違うものを組み合わせて1つの商品として作って売るということをするメーカーは意外と少ないです。自社工場を持つメーカーでは、コスト面や生産・品質管理面で開発が難しくなることもあります。小売業も、完成された商品の仕入れが基本なので、部品ごとの仕入れが難しい。そんな状況があったので、ファブレスメーカーだからこそできる、素材を組み合わせたり、産地と産地を掛け合わせるという協業スタイルのモノづくりを中心にやっていこうと考えました。」

初めからずっと根底にあった“ニッチなモノづくり”を貫きながら、明確になってきたブランドの目指す在り方。後編では、具体的なデザインと機能をプロダクトに落とし込んでいく段階のお話を伺います。

Vol.11|キキメノハナシ
“妥協はしないけれど、背伸びもしない” KIKIMEのブランドDNAを大解剖

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